第6話大討伐作戦-膝枕-

リリアさんの話通り何人もの冒険者達がキャンプに集まっていた。

「すごい、たくさんいるのね...これ全員で一頭のボスモンスターを討伐するの?」

「おうよ!俺らも久しぶりのでけえ獲物だからよ、楽しみだぜ!ガッハッハッハッハ!!!」

冒険者には俺達みたいにクエストだけで食べていく人ばかりではない。トールみたいに本業は別にあっても、副業というか趣味のようにクエストをうける冒険者も少なくない。確かに命をかけた仕事ではあるが、十分な生命力、つまり年齢的に衰弱死したり、呪いの効果で生命力を奪取されて死んだのでなければ、リザレクションで生き返れるらしい。

「どうしたあ?元気無さそうじゃねえか」

「そうじゃないんだけどさ、どうしてクエスト受けてくれたのかと思って」

「なんでえ、そんなことかあ!いやあな?前にも話したと思うが俺らがリリアに初めてあったのは、あいつがマンドラドラゴンに首から上を食われてたところでなあ?助けたあとも、よほど怖かったのかろくに口もきけなっかたんだよな。そんときのあいつの不憫さが頭にずっとあってなあ...まああいつのトラウマ克服に付き合いたかっただけだぜ!ガッハッハッハッハ!!」

「お前いいやつだな、心からそう思うよ」

俺はこの異世界に飛ばされてから改めて、人の優しさに触れた気がする。もちろんパーティの皆も街の人も優しいしいい人ばかりだ。そんな街にだんだんと愛着がわいてきた。

「...夢様BLに目覚められたのですか?ハァハァ...」

トールがあんなにいいこと言ってたのにそれを当の本人が台無しにしやがった。

「そんなわけあるか、トールがリリアさんのこと考えてくれてるって話してたんだよ」

「私がいないところで私がお二人の妄想のオカズにされてるなんて...考えただけで...」

今まさに妄想のオカズにされているのは俺だと言いたい。

もういっそのことマンドラドラゴンに食べられて、消化されていたら良かったのに。

「ごめんな、トール...。リリアさんがこんなで」

そんな罪悪感を何故か俺が感じてるところにメルカが走ってきた。

何やら急いでる様子だ。

「夢さん、向こうで姫さんが夢さんのこと探してましたよ?」

「姉さんが?」

なんか嫌な予感しかしない、どうしよう行かなきゃダメだろうか...行きたくないなあ...

「見つけしだい教えて、来なそうなら呪うからって言ってた気がします」

「ちょっと行ってくるよ!二人もゆっくりしてて」

「ゆ、夢様と姫様が二人きり...」

「リリアさん。俺で妄想しないでね」

「そんなあ...あんまりです...」

思いの外しょんぼりしているリリアさんは放っておき、姉さんのもとへ急ぐ。

「っはぁ...はぁ...、姉さん何の用?」

「も、もしかして夢、お姉ちゃんに会いたいがために急いで来てくれたの?お姉ちゃん嬉しいっ!」

違うと言いたい。

「疲れてるだろうしここ座って」

横に倒れた丸太の上に姉さんと並んで座る。かなり密着している状態だ。が、胸の感触はない。とはいえ姉も可愛くないわけじゃない。むしろめちゃくちゃ美人だ。

「あのさ...」

「なに?」

「さすがにくっつきすぎじゃないかな...姉弟だし変じゃない?..」

「姉弟で変な距離がある方が変だよ!最近夢はちっともお姉ちゃんと話してくれないし、それだけじゃなくて目すらあわせてくらないから...お姉ちゃん...寂しくて...うぅ...ぐすっ...」

俺の腕に絡んでる姉さんの腕の力が半端じゃない。

「姉さん、俺も男だし、ましてや弟なんだよ?姉さんに直球で好きって言われると困るっていうか...」

「パーティメンバーは巨乳ばっかりだし、グランシアちゃんには私の貧乳はステータスですから姫のとは違います。って言われるし...」

ものすごい無視された。しかもほとんど姉さんの妬みだし。

「姉さん!俺達姉弟なんだよ?」

「も、もちろん、家族としての好きに決まってるでしょ!恋心なんて抱いてないから!」

目が泳ぎまくってるよ姉さん。

「そう!それでね、そんな日頃のお姉ちゃんの欲求を解消しようとおもって夢のこと呼んだの」

「え!?...それって...」

つまり恋心があるということでは、むしろそれ以上の感情が。

それはともかく、お姉ちゃんの欲求...?なにそれエロい。

「んー?今変なこと考えたぁ?まぁ、お姉ちゃんがしてもらいたかったのは膝枕よ。ひ・ざ・ま・く・ら」

十分変だよ!なんで膝枕なんだ?しかも普通男女逆じゃない?

色々言いたいことはあったけど断ると後が怖そうなので膝枕をすることになった。

「...んっ...、ふわぁあ...むにゃむにゃ...」

姉さんはすぐ寝た。秒で寝た。

何だろう膝枕する方も言いかもしれない。なんともいえないこの複雑な気持ち...。

だんだん俺も眠くなってきた...。

「...」

ん?今目空いたよな。姉さん起きてるな。よし、ここはひとつ。

「ふーっ...」

「ん、ふえ?...」

「ふーっ...」

「はひゅっ......何するの!?さっきから耳ふーってしてきて...恥ずかしいんだけど...も、もうやんないで、変なお願いして、夢の寝顔見ようと睡魔の呪いかけたのは謝るからぁ!!」

そんなことまでしてたのか、なにがともあれこれで姉さんから解放された...。

まだボスモンスターと戦ってすらいないのにとてつもない疲労感が体を襲う。

「あ!夢さん達やっと帰ってきた!もうすぐそこまでボスマンドラドラゴンが来てますってよ!」

「夢様?姫様の顔が赤いようですがなにをなされていたのですか?もしかして...」

「リリアさん、何か妄想して息を荒くしないで」

戦いの前なのに、緊張感をもって頑張ってるのはメルカだけじゃないか。

グランシアは寝てるし...。

「すぴー...」

「姉さんグランシアに睡魔の呪いかけた?」

「かけてない」

「...」

「ほ、ほんとにかけてないからあああ!!この前私のことバカにしてきて仕返ししたいな、とかかんがえたこともないからああああああ」

このパーティがこの中で一番の足手まといなんじゃないかとすら思えてくる。

いや、多分実際そうだろう。

とりあえず迷惑をかけないように頑張って戦わなければ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る