第2話 幼少期 それ1
正直あまり記憶に無いが断片的に覚えている。厳格な父親は仕事がら外泊が多く、月の半分近くは母親と弟の3人で夜を過ごした。社交的な母親は父親の帰ってこない日になると、決まって見慣れない服を着てこう言った。
「私は出掛けてくるね、朝には帰るからお父さんには内緒だよ。」
きっと、厳格な父親が帰って来ない日は息抜きでもしているのであろうと思っていた。
私達兄弟は母親の実家(祖母1人の家)に預けられることも多く特に寂しいとは感じなかった。
ところが、翌日には父親に知られ必ずといっていいほど『それ』が始まる。私達が告げ口してしまったり、父親の方が早く帰宅したりが原因だったと思う。
一度、『それ』が始まると酷い有り様で、半狂乱になっている母親の「バカヤロウ!」「殺してやる!」「ヴォー、ギャー」といった怒鳴り声や、家が壊れるほどのドタバタ音、夜中まで続く耳障りな『それ』を私達兄弟は少しでも小さくしようと布団を被っていた。
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