劇団PPP

けものフレンズ大好き

劇団PPP

 歌って踊れるスーパーアイドルグループPPPぺぱぷ

 そして365日24時間PPPの事を考えている敏腕マネージャーのマーゲイちゃん。

 彼女のおかげでPPPのメンバーも助かっているのですが、時にはやりすぎることも……。

 果たして今日はいったい何を言われるのでしょうか……。


「劇をしましょう!」

 何度目かのらいぶの打ち上げの席で、マーゲイちゃんは唐突に宣言します。

「え、どういうこと?」

「演劇をするんですよプリンセスさん! PPPのらいぶは毎回大入り大成功ですが、ここでそろそろ冒険してもいいと思うんです。それが劇なんです。PPPにさらに演技力が加わればもう無敵、あらゆる意味で最強最高のフレンズ! ああ、想像しただけで鼻血が……」

「あわわわわ……」

 メンバー全員で慌てて介抱します。

 突然鼻血を出して気絶する癖は、いつまで経っても慣れません。

 

「と、とにかく、どうでしょう皆さん? 反対があれば無理にとは言いませんが……」

「いいんじゃないかしら」

 プリンセスちゃんがまず賛成します。

「楽しそーじゃん!」

 イワビーちゃんも反対はしないようです。

「私に出来るか分からないけど……やってみたい」

「がんばります!」

 コウテイちゃんもジェーンちゃんもやる気充分です。

「フルルは?」

「……え?」

「あなたねえ……」

 いつものように話を聞いていないフルルちゃんに、プリンセスちゃんは呆れます。

「だから劇をやるかどうか」

「ペンギンやるー」

「それもう劇じゃないでしょ……」

 みんなが笑います。


 こうしてマーゲイちゃん主催の劇は決定しました。


「実は既に脚本も用意しています。内容はみなさんで黒セルリアンを倒したときの話です」

「私達はあのときそこまで活躍できなかったから、ちょっと照れくさいわね」

「そんなことありません! みなさんがいたからがんばれたんです! 少なくとも私は超がんばれました!」

「そ、そう、ありがと……」

「では今から誰が誰の役をやるか説明しますね」

 その場にいる全員が読み書きができないので、セリフも配役も全て口頭での説明です。

「まず主役のかばん役はコウテイさん!」

「うっ、大役だな……何もしない内から緊張する」

「ヒロインのサーバル役はプリンセスさん!」

「私も責任重大ね」

「ハンターのヒグマ役はイワビーさん!」

「アイツ強かったよな、ロックにやるぜ!」

「全体を指揮していた博士役にはジェーンさん!」

「え、あ、博士ほど頭良くないけどがんばります!」

「最後に……フルルさん役のフルルさん!」


『なんで!?』


 残りの4人が思わず突っ込みます。

「いえ、フルルさんのキャラクターは他の役に押し込めるのが難しいというか……」


『・・・・・・・』


 4人は遠回しに「現段階で劇は無理」と言っているマーゲイちゃんの心の声が聞こえた気がしました。

「がんばるー」

「……あれ、ちょっとまって。じゃあセルリアンの役はどうなるの?」

「身体は一部分しか出さないからセットで、声は私がやります」

「マーゲイは実際にそれで活躍してたもんな」

「コウテイさんにそんなこと言われると照れます……。それではさっそく今日から練習始めましょう!」

『おー!』

「おー」


 そして――。


「さよなら……サーバルちゃん」

「かばんちゃんを返して! 返してよ!」

「いいですよお二人とも! 感動的です!」

「かばんさん達、私達が来る前にあんなことがあったんですね……」

「はい。本人から根掘り葉掘り聞いたんで間違いないです。かばんさんはかなり話しづらそうでしたけどサーバルさんは自信げに答えてました」

「ロックだぜ……」


「てやぁぁぁぁぁあ!」

「かっこいいですイワビーさん! 本物より数倍も!」

「わ、私はやることはやりますよ、この島の長なので」

「素敵ですジェーンさん! 本物より全然賢そうです!」 

「それ本人達の前で絶対言わないでよ」

「特に博士と助手は根に持つから何をされるか……」


「フルルー!」

「その調子ですフルルさん!」

「フルルが私達全員の変わりだったとしても、ちょっと活躍しすぎじゃない?」

「ああ、PPP以外の他のフレンズの活躍は、フルルさんの役に大分回しましたから」

「みんなからクレームがきそう……考えるだけで胃が……」

「ホントお前ってロックだよな」


 そしてついに劇当日になりました。


「ついに本番になりましたね皆さん」

「うう緊張する……」

 コウテイちゃんはいつものように、脚が震えています。

「ちなみに言うまでもなく本人達も観客としていますよ」

「それが一番の緊張理由よね。でも、これは私達のかばんに対する恩返しでもあるんだから」

「もうすぐ行っちゃうんですよね……」

 プリンセスちゃんの言葉に、ジェーンちゃんはしんみりします。

 そうです、この後みんなでつくった水上バスをプレゼントし、かばんちゃんを見送る予定でした。

「さあ、最高にロックなプレゼントにしてやろうぜ!」

「え、かばん行っちゃうの?」

「本当にあなたは……」

 フルルちゃんの言葉でPPPの緊張も解けていきます。

 

「それじゃあみんな行くわよ。えいえいおー!」

『おー』

「おー」


「……何かちょっと緊張するねサーバルちゃん」

「私はとっても楽しみだよ!」

「サーバルハイツモノンキダネ」

「あーひどーい!」

「ほら始まるよ」


「それではただ今よりPPPによる劇『ありがとう』を始めます――」


                                  おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

劇団PPP けものフレンズ大好き @zvonimir1968

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ