第18話 全国魔法陣研究協会
「さて、これで負けを認めるか?」
魁斗が菊池悠斗に訊いた。
「ああ、降参する。」
菊池悠斗が手を上げながら言った。
「ここからは脱出不可能なのはわかってる。」
と。
「さて、どうして俺達をいきなりあんな牢獄の中に入れたりしたんだ?」
魁斗が訊いた。
「ああ、それはお前らが刺客だろうかと予想してな、先制攻撃をしたんだ。
でも、簡単に破られちゃったけどな。
ええと、それで訊きたいのは魔法陣協会の会長の正体か?
何を訊きたいんだ?」
「おい、待て待て。」
話が全然噛み合ってない。
「第一、君は俺達の正体をなんだと思ってるんだ?」
「ん?ニチイ・・・日本異能力協会の刺客だと思ってた。」
日本異能力協会?
「そんなの知らないんだけど。」
「えええ!?」
菊池悠斗が驚いてる。
「それなら、どこの刺客?
いや、どちらにしろニチイ協のことを知らないはずがないんだが・・・。」
などと呟いてる。
「いや、俺達は刺客じゃないし、俺たちが刺客だと決めつけたのは君だろ。」
「へ?そうなの?
それだったら、なんで俺とあんな本気で戦ったりしたんだ?」
またまた驚いてる。
「あのな、いきなり牢獄に入れられたりしたから正当防衛をとるのは当たり前だろ。」
「・・・それなら、君達はどこの組織に属しているんだ?」
と菊池悠斗は少し考え込んでから言った。
「いや、組織ってなんだ?」
「え?組織って言ったら日本異能力協会とか全国魔法陣研究会とか、そんなのだけど?」
「そんなのには属してない。」
第一知らん。
「えええ!?」
菊池悠斗は頭を抱えた。
「それじゃあ、要約すると君達は刺客ではない上に、どこの組織にも属してない。
それなのに、これだけの能力を持っている。
ってことか?」
「そうなるな。」
すると菊池悠斗は頭を抱えながら何やら理解のできない言葉を叫んだ。
「ところでさ、こっちからも質問があるんだが、いいか?」
すると、菊池悠斗は理解のできない言葉を叫ぶのをやめ、いいぜ、と言った。
「ここはどこなんだ?」
そう、僕もずっとそれを思ってきた。
どう見てもここは屋外だ。
太陽もある。
なのに、外には人がいない。
「ああ、ここは俺の別荘の庭だ。」
訊けば、恐ろしい答えが帰ってきた。
いや、別荘の庭?
いくら何でも大きすぎる。
ざっと見渡せるだけで1キロ四方はありそうなんだが。
「俺の父が財閥のトップだし、俺自身も全国魔法陣協会の副会長だからな。」
そう胸を張って言った。
「それでな、あの学校の階段にあった亜空間は、ちょうどここの真下にある俺の異能力研究所に繋がってるんだ。」
そしてこの別荘について説明された。
まず、ここは奥多摩地方の山奥である。
ここと学校の階段にあった亜空間は、長距離転移の魔法陣で繋がっていた。ちなみに長距離転移の魔法陣は作成に数ヶ月かかるらしい。
それと、ここの周りは何年もかけて作られたバリアで守られている。
耐久性能は2百万キロトンで、紫外線から放射線まで防ぐらしい。なので米帝様と中華なる国が核戦争を初めて、最新式の水爆を間違ってこの辺に落としても絶対安全らしい。
さらに、このバリアの中で何が起こってもバリアの外からは見えないという仕掛けらしい。
「次に質問なんだが、日本異能力協会とか全国魔法陣研究協会とかって何なんだ?」
それも答えてくれた。
日本異能力協会は、日本中の異能力者を見つけ出して、異能力者としての教育を裏で行い、管理する協会なのだとか。
日本の秘密結社の中では会員数が最も多いらしい。
なお、菊池悠斗は略してニチイとかニチイ協とか呼んでいる。
次に、全国魔法陣研究協会はその名の通り、魔法陣を研究する協会である。
そして菊池悠斗は副会長なのだとか。
また、日本異能力協会とは対立している。
「ところで、君達はまだどこの組織にも属してないんだよな?」
「そうだけど。」
「それだったら、魔研に入会しないかい?」
今日はたくさんの運動部から勧誘を受けたが、その日のうちに秘密結社から勧誘が来るとは思わなかったな。
「拒否する。」
「なんで?」
「魔法陣の研究なんてできない。」
「いや、魔法陣なんてどーでもいいの。
魔研は新しい異能力者を募集してるんだ!
それに、君達のような異能力者をニチイ協が放っておくわけないぜ!
いつかきっとニチイ協に君達の異能力がバレて、毎日のように勧誘のメールが来ることになるさ!
そうなる前に、魔研に入会したほうがいい!」
菊池悠斗に牢獄の中から魔研に入るよう熱弁された魁斗と僕(ただし僕も牢獄の中だが)。
なんとカオスな絵柄であるとこか。
「考えておく。」
「気が変わったらすぐに連絡してね!」
菊池悠斗が嬉しそうに言った。
「それで、何で俺達を刺客だと思ったんだ?」
「ん?
だって中学一年の6月に転入生なんて不自然すぎるだろ。
しかも、その子は記憶喪失。
不自然すぎるのにもほどがある。
さらに、魔法の存在を知っている。
これは、刺客だと疑わないほうがおかしいだろ。」
僕はその菊池悠斗の言葉に対し、納得をする。
「確かにそうだね。」
「ところでさ、記憶喪失ってのは嘘だろ?
なんでそんな嘘をついたんだ?」
菊池悠斗が訊いた。
「それについてはシアル、説明お願いできない?」
「え?俺達以外にここの誰かいるのか?」
『はい、わかりました。』
「うわ!びっくりした!」
と菊池悠斗は大きく仰け反った。
『ええと、私がアルテイシアルです。
どうも、よろしくお願い申し上げます。』
「は、はあ。」
菊池悠斗が少し表情を固くして言った。
『ええと、話の始まりは、私がタカト様、現在のシオン様を召喚したところから始まります・・・』
そうしてシアルによる説明が始まった。
説明が終わる頃には、菊池悠斗は大体のことを理解できたようだ。
「なるほど、つまり一年前、当時中学一年の東條崇人が勇者として召喚されて、魔王を倒して、帰還した。
だけど、帰ったら聖女の体になっていたから、新しい戸籍を得るために嘘をついた、ってわけか。」
『そうなるます。』
「へぇ、勇者に魔王か・・・。
そんなアニメの中の存在が実在するとはなぁ。」
「私は召喚される前までは勇者や魔王どころか、魔法もアニメの中の存在だと思ってたよ。」
僕も笑いながら言った。
「ま、和解ってことでいいか?」
「ああ。それじゃあ、無限牢獄を解除する。」
そう言って魁斗は無限牢獄を解除した。
そこで、僕は一息つくと、あることを思い出した。
「あ、そういえば今、何時?」
「「あっ」」
2人も気がついたようだ。
「もう下校時刻過ぎてるじゃん!」
ということを。
「先生に見つからないように気配を消して帰らないとな・・・。」
というわけで、僕は新中学校生活第1日目に、下校遅刻をしてしまいました。
まあ、先生に見つからなかったから、叱られなかったけどね。
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