第17話 刺客!?

 菊池悠斗はそのまま感電魔法陣のあったであろう場所に歩き出した。

 その上に感電、あるいは即死している2人がいるはずだ。


 そしてすでに彼は二人死んでいる場合の処理を考えていた。


 その後、砂が落ち着き、視界がひらけてくる。

 すると、魔法陣の2m上には、飛んでいる魁斗がいた。


「は?」


 菊池悠斗がそう言う間もないまま、魁斗は正面から斬りかかる。

 大技を出した後は隙が出るものだ。

 菊池悠斗はまさにその例に当てはまる。


 感電魔法陣は、魔法陣中に電気を流す魔法陣である。

 だが、その電気は『地面』にしか流れない。

 よって、地面の上に立っている人に流れても、空を飛んでいる人には流れないのだ。

 それ故に、僕と魁斗は飛ぶことで回避ができた。


 菊池悠斗はすぐにかわしたが、後ろから僕が斬りかかる。

 彼は目くらましの魔法陣を使う。そして、僕達から逃げようと考える。

 しかし、シアルが周囲に鑑定魔法を飛ばし、周りの状況を把握する。


「さすがニチイの刺客っていったところか!」


 菊池悠斗が言い、地面を蹴って魔法陣を発生させバリアを作った。

 そのバリアに阻まれ、僕の剣は届かなかった。


 そこで、僕は思った。

 ニチイ?

 そんなもの、知らない。

 もしかすると、菊池悠斗は僕を何か別のものと勘違いしてるのかもしれない。


 元魔王和也との戦いもそうだ。

 元魔王和也は、僕が元魔王和也を殺すために地球へやってきたのだと思っていた。

 そう思っていたから、元魔王和也は僕に勝つために、先制攻撃をした。


 それと同じ原理で考えよう。

 菊池悠斗は僕を何かの刺客だと思っている。

 そう思っていたから、菊池悠斗は僕に勝つために、最初僕達を封印術式が複雑に絡み合っていた牢獄に入れた。


 うん、ありえる。


 ま、どちらにしろ僕が刺客じゃないってことは勝ってから説明しないとな。

 負けている状態で僕が刺客じゃないと言っても、逃げるための嘘だとしか思われないだろう。


 閑話休題。


 菊池悠斗は幻影魔法陣と爆裂式をばら撒き、戦場からの離脱を図る。

 だが、僕は残る魔力750万のうちほとんどで、菊池悠斗に対しバインドの魔法をかける。バインドの魔法は魔力をかければかけるほど魔法を解きにくくなるのだ。ちなみに、シアルが詠唱をした。


 そのバインドの魔法は1秒で解除される。

 しかし、それは時間稼ぎだ。


 魁斗の残る魔力500万を全部、無限牢獄に使う。

 ただ、魁斗の無限牢獄は元魔王和也や悪魔神である姉よりも展開速度が遅く、消費魔力も高い。


 だいたい展開まで10秒もかかる。

 10秒とは戦場においてとても長い。


 その間に逃げられる可能性が高いと判断したため、今までは使わなかった。

 それに魔力も500万消費するのだ。バンバン使える魔法ではない。


 なので、これで無限牢獄から脱出されたら終わりだ。


 よって、僕は絶対に無限から脱出されないように、剣で相手の動きを封じる。

 菊池悠斗は爆裂魔法陣や幻影魔法をばら撒くが、もう慣れた。


 数万メガキロ級の爆裂魔法陣はもう殆どないようだ。

 なので、魔力障壁だけで防ぐことができる。


 これは大きな賭けだったが、勝つためにはしょうがなかった。


 だが、菊池悠斗は脱出した。

 無限牢獄の展開される場所から。

 それは無限牢獄完全展開の4秒前。


 その瞬間、ほぼ僕と魁斗の負けが確定した。

 僕の残る魔力は数十万、魁斗の残る魔力は皆無に等しい。


 この状況で勝てるとは思えない。


 なので、僕は勝つ方法を考える。


 このままだと爆裂式を投げ込まれて終わる。

 それなら、僕がニチイとやらの刺客でないことを説明するか?

 いや、それはダメだとわかっている。

 きっと僕が延命のために命乞いしていると鹿思われないだろう。


 ならば、なんとしても、今すぐに勝たなければいけない。

 だが、無限牢獄作戦が失敗した今となっては、勝つのは無理だ。

 魔力を回復するまで待ってくれればいいのだが、菊池悠斗は容赦なく爆裂式を投げ込んでくるだろう。


 なので、何としても無限牢獄に菊池悠斗を連れ込まないといけない。

 そこで、僕は思いついた。


 僕は菊池悠斗の横に降り立ち、魔法を発動させた。

「短距離転移!」

 それは、3mの短距離転移。

 短距離転移と一概に言っても、1mから5mまでさまざまである。


 そして、3mの短距離転移は5mの短距離転移の比べ格段に消費魔力が少ない。


 よって、ギリギリ発動ができた。


 そして、僕は菊池悠斗を巻き込みながら無限牢獄の中に転移した。


 それにより、僕と菊池悠斗は無限牢獄により完全封印された。


 地球帰還後二度目の戦いは、僕と敵が同じ牢獄に入り、牢獄の外に味方がいるというなんともカオスな状態で終わった。

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