第14話 魔法陣使い
「ねえ紫苑、陸上部に入らない?」
終礼が終わるといきなり声をかけられた。
「いいや、女子バスケットボール部のほうが絶対いいよ!」
そんな声もあった。
そして、僕の周りは僕をクラブに勧誘する生徒でいっぱいになった。
---そういえば、クラブを決めてなかったな。
残念ながら、この中学校は必ずクラブに入らなければいけない。
よって遅かれ早かれどっかのクラブに所属することになる。
ちなみに僕は囲碁将棋部に所属していた。
だが、今年になって潰されたので、また別のクラブに所属しなければいけない。
そして、今の状況。
僕を勧誘する運動部の連中でごった返しになっている。
まあ、二時間目の体育の授業で僕の身体能力の高さが明らかになったのだ。
あの運動神経を見て、運動部の連中はクラブの勧誘をしようと決めたのだろう。
ちなみにこの学校では運動部を二つ以上掛け持ちするのは禁止してある。
よって僕が所属できる運動部は二つまでだ。
なので我先にと僕を勧誘しているのだろう。
・・・そろそろ僕の取り合いで喧嘩が始まりそうだ。
「それじゃあ、全部のクラブ見て回って、どれが一番いいか決めるね。」
僕がそう言ったら、今度は僕がどこから見に行くのかということで言い争いが始まった。
で、またジャンケンで僕のクラブを見に行く順番が決まった。
ジャンケンは紛争を解決する一つの手段である。
で、全部見て回り終わった時には下校時刻数十分前になっていた。
教室の中にはもはや誰もいない。
ほとんどの人が部活か帰ったかのどちらかなのだ。
『シアルはどこか良さそうなところ、あった?』
『うーん、そうですね・・・。
鉄道研究会とかどうですか?』
シアルは急にマニアックなところを言ってきた。
というか自動車といい鉄道研究会といい、シアルはそっち系のマニアなのか?
『もしそのクラブに入ったとしても、運動部と文化部の掛け持ちは禁止してないからね。
運動部からの勧誘は止まないと思う。』
部活について思案に暮れる僕であった。
まあ、今日は平和な1日を過ごせた。
それがいかに貴重なことかは魔王討伐の時にわかっている。
荷物をまとめ終わって、帰ろうか、と思った時。
一つの席の椅子に置いてあるものが目に止まった。
というより、あの世界で研ぎ澄まされた第六感が何かを伝えていた。
その椅子を見てみると青色のノートが置かれていた。
このノートの持ち主は多分、この席に座っていた菊池悠斗のものであろう。
菊池悠斗は佐竹龍樹のお目付役みたいなポジションにいる人だと思っていた人だ。
人のものを勝手に見るのはいけないと思いながらも、教室に近づく人が誰もいないことを確認してそっとノートを開く。
すると、一枚の紙が落ちてきた。
その紙を見た僕とシアルは瞠目した。
実に精巧な魔法陣が描かれていたからだ。
何千、何万もの魔法文字。
そして、実に巧緻な魔導計算式。
それがこの一枚の紙に収まっていたのだ。
『第15次魔導方程式・・・。』
シアルが呟いた。
・・・第15次魔導方程式!?
『それって巨大国家プロジェクトレベルの魔法陣じゃない?』
僕は思った。
第15次魔導方程式を作るには大量の人材と計算が必要になる。
それは、日本円にして何兆円とか何十兆円とかになるほどの。
実際、僕をあの世界に召喚した魔法陣は第15次魔導方程式によるものである。
その第15次魔導方程式の魔法陣を創り上げるのにかかった時間とお金を聞いた瞬間、びっくりして思考が止まったほどだ。
その第15次魔導方程式の魔法陣を・・・こんなノートに挟んである・・・だと?
『それに、第15次魔導方程式っていったらこんな大きさに収まりきれないと思うけど?
私をあの世界に召喚させた魔法陣は1km四方ぐらいなかった?』
『この魔法陣は、その1km四方ぐらいになるのが普通の第15次魔導方程式をこんなにもコンパクトにしています。
多分、あの世界の技術力じゃ無理でしょう。』
『それって、あの世界の技術力で無理なほどの魔法陣を作れる人がいるってこと?』
刹那。
この教室に誰かが来る気配を察知した。
「やあ、驚いたか?」
そこには、この魔法陣の所持者と思われる菊池悠斗がいた。
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