第5話 まとめサイトと戸籍

「なあに、そのことなら心配しなくていいさ。」


 和也さんがのんびりとした口調で言う。


「いやいや、こんなファンタジーなこと信じてもらえるかどうかわかんないでしょ。

 ----いや、もしかして姉貴、和也さんが元魔王だってこと知ってるの?」


「ああ、知ってる。崇人が勇者として異世界に召喚される前からな。」


 和也さんがいきなり衝撃発言をした。


 もはや、なんと返答すればいいかわからない。


「ええと、崇人くんに聖女さん、重要な話があるんだけどいいかな?」


『私にはアルテイシアルという名前があります。聖女ではなく、アルテイシアルと呼んでください。

 長いのならシアル、と呼んでください。』


「あ、ごめん。怒らせちゃったかな?

 まあ、それは置いといて、崇人くんにシアル、魔界って知ってるか?」


 魔界。

 それは神話の時代より昔からあるものである。


 伝承によれば、古くは魔族は魔界に住んでいたとされる。

 だが、魔神や悪魔の侵攻によって魔族は魔界から追い出されたのだ。


 そして、行き場を失った魔族は(魔族から見た)救世主であり初代魔王のイグニティケに率いられて、人間の住む世界にやってきたとされる。


 ちなみに、現在では人間や魔族が魔界に行くためには悪魔王、あるいは悪魔神の許しが必要である。

 また、魔神悪魔が人間界に行くには、人間や魔族の召喚魔法によって呼び出される必要がある。


『それは知ってますが、何か?』


「崇人くんの姉、麗奈は悪魔神の転生後の姿なんだ。」


「!!」


 今日何度目かの衝撃発言だ。


 ・・・今日は何回も驚愕してばっかりで感情の休む間もないな。


「魔界でね、魔神達と悪魔達でいざこざがしょっちゅう起こったらしくてね。

 それでついに全面戦争になったらしくてね。

 結局大魔神の軍勢によって悪魔神であった麗奈は殺されたんだ。

 で、気がついたら人間の女の子の赤ちゃんに転生したらしいんだ。」


「・・・・本当だよな?今日は4月1日とかじゃないよな?」


「ああ、エイプリルフールでもなんでもなく、紛れも無い本当の事実だ。

 それと今日は4月28日だ。」


 うん。

 姉が悪魔神だったのか。


 それは和也さんが魔王だったということよりも衝撃的である。


 なんせ姉とは僕が異世界召喚されるまでほぼずっと一緒に過ごしてきたわけで。(苗字を見ればわかると思うが、和也さんは婿養子として東條家にやってきた。)


 こんな身近にファンタジーな人がいたとは思いもしない。


 今日は本当にびっくりすることだらけだな。


 魔王を殺すまでは人生最後の日になるかもしれないという覚悟があったのに、10時間も経っていない今ではこうしてその魔王と打ち解けあっている。


 ----尤も、元魔王である和也さんにとっては魔王だったのは30年以上前のことである。そんな前の話であるが故、自分を殺した憎き敵である僕であってもこうやって接することができるのだろう。

 それに和也さん、魔王の頃の記憶をいくつか忘れてるほどだし。


 閑話休題。


「まあ、麗奈には俺が話をしとく。

 それと、崇人、あの世界から送還魔法で送還された時、どこに送還されたんだ?」


「ええと、東京湾周辺かな?」


「そこから歩いてきたのか?」


「そうだけど。」


「これは・・・まずいかもな。」


 と和也さんは少し眉間にしわを寄せる。

 そしてノートアイパッドを持ってきて、電源を入れる。

 インターネットを開き、『金髪翠眼 謎 美少女 東京』で調べた。


 すると・・・シアルの画像が何十枚も、いや何百枚もでてきた。


「東京湾からこの家までは結構長いからな。その間に撮られたんだろう。

 それにしても一杯撮られたなぁ。これじゃあ、画像を全部消すのも無理だろう。

 それに、消したとしてもこの画像を保存している人も多いだろうし。

 まあ、外に出たら絡まれるの必須かもな。」


 すごい。

 こんな短時間にこれほどサイトができてるとは。

 ・・・まとめサイトまでできてる。

『そんな美少女がいるならナンパしてくる!』

 っていう書き込みもあった。

 さすがに108回もナンパされるのはおかしいと思っていたが、こんなところに原因があったとは。


「まあ、過ぎたことはしょうがない。

 それと、もう一つの問題は戸籍だな。洗脳魔法を片っ端からかけていけば一旦はなんとかなるが、それだといつかボロがでるかもしれないしな。

 それで、ちょっとこれ見てくれないか。」


 和也さんはインターネットを開き、『無戸籍者 扱い』で検索した。


「それでな、シアルには難しい話かもしれないが、ウィキ◯ディアによると家庭裁判所が二重戸籍になる可能性を容認しながらも新しい戸籍を作ることを認めてるそうなんだ。

 まあ、それは元の戸籍が完全にわからない時のみだけど。

 だから、崇人くんには記憶喪失者になってもらう。」


「・・・つまり、記憶喪失者として新しい戸籍を作れ、ということか?」「なあに、そのことなら心配しなくていいさ。」


 和也さんがまったりとした口調で言う。


「いやいや、こんなファンタジーなこと信じてもらえるかどうかわかんないでしょ。

 ----いや、もしかして姉貴、和也さんが元魔王だってこと知ってるの?」


「ああ、知ってる。崇人が勇者として異世界に召喚される前からな。」


 和也さんがいきなり衝撃発言をした。


 もはや、なんと返答すればいいかわからない。


「ええと、崇人くんに聖女さん、重要な話があるんだけどいいかな?」


『私にはアルテイシアルという名前があります。聖女ではなく、アルテイシアルと呼んでください。

 長いのならシアル、と呼んでください。』


「あ、ごめん。怒らせちゃったかな?

 まあ、それは置いといて、崇人くんにシアル、魔界って知ってるか?」


 魔界。

 それは神話の時代より昔からあるものである。


 伝承によれば、古くは魔族は魔界に住んでいたとされる。

 だが、魔神や悪魔の侵攻によって魔族は魔界から追い出されたのだ。


 そして、行き場を失った魔族は(魔族から見た)救世主であり初代魔王のイグニティケに率いられて、人間の住む世界にやってきたとされる。


 ちなみに、現在では人間や魔族が魔界に行くためには悪魔王、あるいは悪魔神の許しが必要である。

 また、魔神悪魔が人間界に行くには、人間や魔族の召喚魔法によって呼び出される必要がある。


『それは知ってますが、何か?』


「崇人くんの姉、麗奈は悪魔神の転生後の姿なんだ。」


「!!」


 今日何度目かの衝撃発言だ。


 ・・・今日は何回も驚愕してばっかりで感情の休む間もないな。


「魔界でね、魔神達と悪魔達でいざこざがしょっちゅう起こったらしくてね。

 それでついに全面戦争になったらしくてね。

 結局大魔神の軍勢によって悪魔神であった麗奈は殺されたんだ。

 で、気がついたら人間の女の子の赤ちゃんに転生したらしいんだ。」


「・・・・本当だよな?今日は4月1日とかじゃないよな?」


「ああ、エイプリルフールでもなんでもなく、紛れも無い本当の事実だ。

 それと今日は4月28日だ。」


 うん。

 姉が悪魔神だったのか。


 それは和也さんが魔王だったとこよりも衝撃的である。


 なんせ姉とは僕が異世界召喚されるまでほぼずっと一緒に過ごしてきたわけで。(苗字を見ればわかると思うが、和也さんは婿養子として東條家にやってきた。)


 こんな身近にファンタジーな人がいたとは思いもしない。


 今日は本当にびっくりすることだらけだな。


 魔王を殺すまでは人生最後の日になるかもしれないという覚悟があったのに、10時間も経っていない今ではこうしてその魔王と打ち解けあっている。


 ----尤も、元魔王である和也さんにとっては魔王だったのは30年以上前のことである。そんな前の話であるが故、自分を殺した憎き敵である僕であってもこうやって接することができるのだろう。

 それに和也さん、魔王の頃の記憶をいくつか忘れてるほどだし。


 閑話休題。


「まあ、麗奈には俺が話をしとく。

 それと、もう一つの問題は戸籍だな。洗脳魔法を片っ端からかけていけば一旦はなんとかなるが、それだといつかボロがでるかもしれないしな。

 それで、ちょっとこれ見てくれないか。」


 と和也さんが言ってノートアイパッドの電源を入れる。

 そしてインターネットを開き、『無戸籍者 扱い』で検索した。


「それでな、シアルには難しい話かもしれないが、ウィキ◯ディアによると家庭裁判所が二重戸籍になる可能性を容認しながらも新しい戸籍を作ることを認めてるそうなんだ。

 まあ、それは元の戸籍が完全にわからない時のみだけど。

 だから、崇人くんには記憶喪失者になってもらう。」


「・・・つまり、記憶喪失者として新しい戸籍を作れ、ということか?」


「話の理解が早くて助かるよ。

 もちろん、この世界にシアルの姿をしている崇人の戸籍はないから、警察に届け出を出せば新しい戸籍を作ってもらえる・・・はずだ。

 無論、最初に保護した人が俺だから親権は俺にある・・・はずだ。」


「おい。」

『はずって何ですか・・・。』


「大丈夫だ、裁判官あたりに少しだけ洗脳魔法をかけて何とかするから。

 あと、なんとか中学校一年生から始められるようにしてやるよ。」


「ああ、わかった。確かに僕が異世界に召喚されたのも中学一年生の時だしな。」


「よし。

 それじゃあ、警察に届け出云々の話よりもまず先に、日用品や服を買っとかないとな。」


 ん?

 日用品や服って昔使っていたもので大丈夫じゃないか?


 と一瞬思ったが・・・・今、僕はシアルの体なんだ。


 昔の僕が使っていた物など使えるか。


 そう思い出した時のこと。


 下腹部がこう悲鳴をあげた。


 ----トイレ行きたい。

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