第3話 元勇者VS元魔王

 戦闘の火蓋を切ったのは、またしても魔王だった。


 元魔王和也は1/20秒という普通の人間の目では処理できない速度で剣を振るってきた。


 それを予知していた僕は身体強化魔法を最大までかけながらバックステップ。


 その間にシアルが熱力最上級魔法と電磁気最上級魔法の合わせ技、『神気火炎雷』の術式を構成する。


 あの世界ではシアルも僕も魔力量が足りなくて使えなかった神話級の魔法だが、魔王を倒しレベルアップしたことで魔力量が格段に増えたことにより、使えるようになった。


 だが、元魔王和也はその神気火炎雷を剣で粉砕。


「三次元カラーテレビにそんな高火力魔法当たったらどうするつもりなんだ!あれ高かったんだぞ!」


 などと言いながら元魔王和也はタカトの周囲に封印術式を張り巡らした牢獄を作成する。


 シアルはその魔法を解こうとするが一瞬で封印術式が解けないと判断、時空中級魔法である短距離転移魔法の術式を短時間で構成し、間一髪で牢獄から逃れた。


 短距離転移は術式の構成に時間はかからないが、莫大な魔力を消費する魔法であり、今ほど多くの魔力を持っていなかった魔王討伐時には使わなかった。


 それとあとで判明するのだが、元魔王和也が使ったこの技は悪魔王や悪魔神の技である無限牢獄であり、物理的な脱出や魔法を使った脱出が不可能な牢獄を敵周辺に作成するという必殺技である。


 それはともかく、僕は短距離転移で元魔王和也の後ろに回り込んで背後から剣を振るって、襲った。


 元魔王和也は瞬時に僕が短距離転移したことを把握し、寸分の隙も見せずに対応された。


 そして、僕は剣に莫大な魔力を注入していく。

 負けじと元魔王和也も膨大な魔力を剣に注入する。


 だが、これが元魔王和也の誤算だった。


 魔法を同時に2個並行して術式構成ができないのと同じように、物に魔力を注入している最中に魔法を使うことはできない。


 よって元魔王和也と僕との戦いが保有魔力量の戦いになったかのように見える。


 だが、僕にはもう一人の味方がいた。


 シアルだ。


 僕が元魔王和也と剣で戦っている間に、もう一度神気火炎雷の術式を構成してもらっている。


 そして、元魔王和也は僕との剣の打ち合いに夢中になっていたが故、魔法に対する防御が疎かになっていた。


 僕は剣に常に魔力を送っていた。

 そして、元魔王和也はそれを見破っていた。

 見破っていたがために敵は魔法を使えいないだろう、と元魔王和也は考えていた。


 だが、僕にはシアルという反則な存在がいる。


 彼女が神気火炎雷の術式を構成し、魔法を発動した。


 元魔王和也は敵が魔法を使うなど予想してなかった。

 そして、神気火炎雷の対応に遅れた和也は魔法をもろに受け、感電により失神した。


 よって、地球帰還後初の戦闘は勇者タカトin聖女アルテイシアルの勝利となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る