4.兵隊人形
「メーデー!メーデー!メーデー!こちら第三基地、敵の応援部隊が南のペリエ川から基地へ接近!すでに味方の半数がやられた、絶望的な状況だ!」
「こちら本部!今部隊がそちらへ向かっている!なんとか持ちこたえてくれ!」
豪雨の雨音にかき消されながらも無線電話に叫び続ける。
土はぬかるみ、外は暗く、敵味方問わずその機動力を奪った。
そして数分後、第三基地のゲート前では爆発音がなる。
味方の戦車が敵を圧倒し、追い返していく。
「やったぞ!今回もおれらの勝利だ、ナイスコンビネーションだぜ!」
・・・これが俺らにとって、記念すべき20回目の勝利を収めた戦いであった。
ブロックで巧みに作られた基地はいつも対立軍からの襲撃を受ける。
しかし本部のファインプレーによりこれまで一度も負けたことなんてない。
それが僕らの日々の訓練の一環であり、お気に入りのシナリオだった。
あのブロックは今どこにしまったろうか。戦車も、兵隊たちも。
大学が違ったから、彼とはそれっきりほとんど連絡を取らなくなった。
高校は一緒だったが、むしろ僕らの関係が薄れていったのは高校の長い日々によるものだろう。
戦友は少しおとなしいグループにいて、元軍人のくせには運動が苦手だった。
模様替えの最中、部屋の奥からおもちゃ箱が見つかった。
ブロックはかさばるからか捨てられたみたい、でも兵隊たちはそこに残っていた。
数えると一人だけ足りなかった。
次の年の11月に手紙が届いていた。
6日間続いた長い雨があがった、久しぶりの快晴の日にだった。
誰もそれに対して準備をすることはできなくて。
大人だから、それをただ静かに受け止めることしかできないのだ。
忘れられない思い出を数え切れないほど共にした。何をしていても俺らなら最高の時間にできると思えた。
あんなに大切だと思っていたことも、ある日スッといなくなった。
それは突然止んだ雨のように、いくら探しても
見つからない大切にしてたおもちゃのように。
振り向くことはなく、ただスッと消えたのだ。
僕は名誉の死を遂げた戦士たちに、晴れた公園のベンチで一人黙祷を捧げた。胸に手を当てた。風で揺れたブランコがきいきいとなった。
お疲れ様、ずっと忘れないよ。
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