3.色鉛筆
箱は日に焼けている。
蓋をあけると折れた芯が零れ出し、真っ白いシーツがほのかに色付いた。
左手で毎日絵を描いていた。右手には針が繋がっていた。徐々に慣れてはいったが細かい部分がやはり描きづらい。
少しくらいおぼつかない線のほうが味があっていいよ、と姉が言った。
姉の髪は深いオレンジ色で少し長い。
弟が言うのもなんだけど、美人な姉だと思う。
僕の息は昨日よりも弱くて、隣の病室の誰かさんのお見舞いに来る子供達は病院へ来るたびに心配をしてくれる。僕より10個以上も下だろう。僕も外で暮らしていれば1人で生きていくことを強いられていたのだろう、でも大人にはなりたくない。
情けないなあ。11月の屋上でふう、とついた白いため息がそのまま羽をつけて飛んでいく鳥になる想像をした。そしてビュンと。
街は灰色で、ビルが角ばっていて、その間をスイスイと抜けていくんだ。
囚われた女性を助けに行く、でもその人の顔はまだ知らない。
そこに現れるのは黄色い体に苔を生やしたドラゴンだ、口から吐かれる火はこの世で一番の赤。
ドラゴンの火をうまくかいくぐって僕は急上昇、雲を突き抜けると青い空が
あれ、青の色鉛筆がないや。
僕は黒の色鉛筆をじっと見つめた。
大人になれよな。
少し時間が経って僕はまた屋上へ向かった。
ふと手を寒空に伸ばすと、そこには異次元への扉が現れるんだ。
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