第8回活動報告:厳しい弱肉強食の世界




活動報告者:海川越郁 覚得之高校一年生 自然散策部 部員




「ブゴブゴ!! ブゴッー!!」

「「「ブゴーー!!」」」


そういってこちらに向かってくるのは、二足歩行の豚さん。

通称オーク。いや、私たちがしてってる種族名なだけで、現地では違う呼び名があるかもしれないけど。


「だぁぁぁ!? さっきからいろんなのが襲い掛かってくる!?」

「さっきはゴブリンだったよね!? なんか魔術を撃ってくるのもいたし!?」

「それは、ゴブリンマジシャンとかそういうタイプでしょうねー!!」

「そういうのもいるんだねー!! まあ、いても不思議じゃないか!! でも、ゴブリンたちとか今追いかけているオークたちもそうだけど、なんで隠れてるのに見つかるのかな!!」


そんなことを話しながら逃げるのは私、ゆーや、宇野空先輩の3人。

いざ、調査員になるためにドラゴン退治へ出たのだが、10キロほど進んでから、魔物との遭遇が増えていき、なぜか毎回戦う羽目になっている。

今もまたオークと遭遇して、迂回したのになぜか見つかってこうなっている。

なんでだろうと、考えていると横で走っていたゆーやが叫ぶ。


「ああ!! わかった、匂いだ!!」

「ゆーや、匂いってなに!?」

「相手は動物に近いから匂いに敏感なんだよ、きっと!! 猟で動物を狩るときは風上に立つなって言われてただろう!!」

「あー!! 聞いたことがある!! そして、僕たちは魔物にとっては狩る獲物みたいに見えてるから追い回されているのか!?」


なるほど。

道理で隠れてもすぐ見つかるわけだ。

風上でなくても、風が吹けば空気は循環しているし、私や宇野空先輩は魔物で女性を襲う最低ランキング1、2を争う魔物のゴブリンとオークたちからすれば絶好の獲物なわけだ。

襲われて孕まされる!?


「ということは、逃げても意味がないか!! ゆーや、先輩、私が合図だすからすぐに振り返って、広域殲滅型魔術で一気に排除。もう逃げるより、私たちに手を出すことを恐れてもらうほうが早い!!」

「わかった!!」

「いつでもいいよ!!」

「じゃ、いくよ!! 1、2の3!! ファイアウェイブ!!」


私は振り返って、炎の波を発生させて、追いかけてくる一気にオークを飲み込む。


「「「ブギィィ!?」」」


ええい。品のない声だね。

私の魔術で怯んだ隙に、ゆーやと先輩が合わせて魔術を撃つ。


「ウォーターミスト!!」

「からの、サンダーボム!!」


一度、濃い霧でオークたちを濡らしてからの必中電撃の爆弾コンボ。

少しでもかすれば濡れてて感電確定。

威力からして普通なら死んでる。


ドサドサドサ……。


うまく行ったのか、追いかけてきたオークたちは全員倒れる。


「死んでる?」

「様子を見よう」


そういってゆーやが槍で一匹ずつ頭を刺して確認していく。

これで生きていようがいまいが、確実に止めを刺せる。

人型の魔物を殺すことへの抵抗などは、里中先生との訓練ですでに亡くなっている。

そう、亡くなったのだ。

生きるということは殺すこと、食べるために野兎とか鳥とか殺すし、向かってくるなら容赦はしない。

自然の摂理というやつだ。


「しかし、僕も本当に丈夫なったと実感できるよ」

「そうですね。先輩はこんなに走れなかったですし」

「体を鍛えるという意味を、文字通り体感したよ」

「最初は吐きそうになってましたもんね」

「ああ。あの時に比べると雲泥の差だよ。こうやって一緒に並走できるぐらいだからね。まだまだ走れるし、休憩も必要ないよ」


ゆーやがオークに止めを刺して回収している間に、私と先輩は訓練を始めたころの話をしてのんびりしている。

このドラゴン退治にでた最初は先輩の体力とか色々心配だったけど、ここまで余裕をもってこれたし、これなら大丈夫かなと思って一安心する。

そんなことを話している間に、ゆーやが戻ってくる。

問題なく、オークたちは死んでいたようで、死体も全部回収したようだ。


「おつかれ、ゆーや」

「お疲れ様。勇也君」

「いや、別にそれほどのことでもないけど、アイテムボックスの使用許可が下りるとは思わなかったな。最悪、ドラゴンはどう運ぼうかと悩んでいたから」

「ああ、たしかにアイテムボックスの使用許可は助かったよね」

「アイテムボックスが使えないと、今まで倒した魔物たちは全部燃やすか埋めるしかできなかったからね。処分しないと獣や魔物がよってきて、帰りはさらに悲惨だろうし」


そうそう。

先輩のいう通り、アイテムボックスがないと、いちいち処分しなければいけないという重労働だったのだ。

だからこそ、索敵魔術を使って、見つからないように動いていたのだけれど、風による匂いでばれてたとは思わなかったよ。


「とりあえず、今後は向かってくる奴は倒した方がいい。匂いを完全に消すことはできないし、迂回してもさっき見たいに追いかけられると、他の魔物とかが集まって危険だ」

「そうだね。勇也君のいう通り、動物、魔物を見つけて、対処が出来そうならあえて近づいて、さっさと仕留める方がいいかもね。どうする、越郁君。リーダーである君の判断に従うよ」


あ、そういえば一応このパーティーのリーダーは私だった。

正直、こういうスケジュール管理はゆーやの仕事なんだけど、私の勇者っていう身分つーか、職業つーか、パシリの代名詞というか、そんなんなので、いつばれても言いように私がリーダーになれておけと、里中先生から言われてリーダーを引き受けた。

この先、下手に勇者ってのがばれて、どっかの国に行ったら……「おおっ、勇者よ!!」とか言われるんだろうな。

ああ、メンドイ。

まあ、そうならないように立ち回るための練習でもあるから、頑張ろう。

と、そこはまだ先の話として、今はこれから発見した敵に対してどうするかだよね。


「ゆーやの意見採用。サーチ&デストロイ!! 5度の戦闘でゴブリン、オーク、森のクマさん、森のトラさん、森の大ヘビさんは遠距離から魔術で一撃ってのがわかったから、該当する5種類は発見したしだい処分。他の未確認の生物は観察して情報収集が優先、退治するかはその情報次第ってことでどうかな?」

「それなら問題ないと思う」

「僕も問題ないと思うよ」

「じゃ、そういうことで、奥に進もう」


今更、匂い消す訓練とかやってられないから、逃げられないなら、見つけたらこっちから仕掛けて消せばいいだけ。

なんて、世紀末な発想。

しかし、やめるわけにもいかない。

何せ、これをクリアしないと、異世界での冒険ができない。

私の夢と希望と野望の為に、立ちはだかる者はやっちまうしかないのだ。

という感じで、そのまま森をひたすら、北北西に進んでいく。

今度は敵を発見しだい消して、回収という作業に移ったので、特に問題なく進めている。


「うーん。しかし、レーダーの魔術もあまり役に立たなかったね」

「いや、先手を打てるから普通に役に立ってますよ。今まで回避しようとしてたのがいけないですから」


先輩はへこんでいるが、ゆーやのいう通り、私たちが、こうやって相手の先手をとれるのは、先輩が編み出した、レーダーという魔術だ。

生き物は少なからず魔力をもっているので、それを周囲1キロぐらい感じ取れるようにしているのだ。

もちろんホログラムのように目の前にだして、目視もできる。

先輩は賢者のスキルで頭の中で鮮明にどこにいるのかわかるようなのだけど、私やゆーやはそこまでできないので、目視できるホログラムを空中にだして索敵しながら進んでいる。

これが役に立っていないわけがない。


「ただ単に、今回は相性が悪かっただけですよ。動物とかは匂いに敏感だってわすれてましたし」

「うーん。今度はそういう、風とか、匂いとかから敵を感じる方法を考えるべきかなー」

「まあ、今後の課題ですね。と、おっと」


木の根に非かっかって転びかけたが、今まで訓練をしてきた私がこの程度で転ぶわけなく、普通に体制を立て直す。


「大丈夫か?」

「大丈夫だよ。しっかし、ここまで草木が生い茂っているってところを見ると、ここら辺近辺に人はいなさそうだよねー。なんで僕たちをこんなところに呼び出したのか」

「さあねー。実際だれが呼び出したとかは、わかっていないけど、女神とやらの加護がついているし、それを調べればいつかわかるだろうね。まあ、わかりきっているのは、あんな危険な目に合わせたんだから、お礼参りはちゃんとしないといけない」

「それは当然」

「まあ、越郁も宇野空先輩もまずはドラゴンを退治してからだから」

「わかってるって、さーて、そろそろじゃないかな?」

「うーん。確かに先生が言っていた場所まではもうすぐだけど、そう簡単に遭遇できるかな?」

「そこは先輩が開発したレーダーの魔術があるから簡単に見つかるって」

「近くにいればだけどな。6日も予定しているんだし、僕は先輩が言うように簡単に見つかるとは思えないけどな」

「まあ、どのみち、見つからなければキャンプだし、まずはどっか開けたを見つけるか、切り開いて、テントを張る準備しないとねー」


私も、ゆーやと先輩のいうように簡単に見つかるとは思っていない。

でも、出てきてほしいなーという希望で言ってるわけだ。

流石に、森の中で数日もキャンプとか嫌だからね。

日本のキャンプとかと違って、水源とかもないし、体を洗うこともできない。

せいぜい、濡れたタオルで体をふくだけだ。

魔術をつかって、お風呂とか建設はできないことはないけど、戦力が減るし、元々、こういう厳しい場所での経験を学んで来いってわけだし、そういうことはするつもりはない。


「予定通り2時まで探して、見つからないなら、キャンプ場所を作ろう」

「「了解」」


そういうことで、2時までのあと3時間余りはドラゴンを探すことになる。

朝早く5時ぐらいから出発して、11時には到着だから、6時間ほどか、人が平地を移動するときの歩く速度が時速4キロだから、結構なハイペースでここまで来たんだなー。

ああ、そういえば道中追いかけっことかしてたからなー。

そこらへんが原因かな?

いやー、しかし、あれだけ追いかけっこをしてまだ余裕なんだから、ものすごい体力の上がり方だよね。

宇野空先輩は普通に丈夫になったぐらいにしか思っていないけど、私たちに付加された特殊能力の恩恵がすごいことがよくわかった。

普通、一か月弱訓練したところでこんなにはなれない。

これが、里中先生のおかげなのか、正体不明の女神のおかげなのかは分からないけど。

私としては、里中先生のおかげの方がいいかな。

バックは地球だし、この異世界よりも信用できるし、なにより先生だし。

そんなことを考えながら、とりあえず色々歩き回ってみるが、特に反応はない。


「うーん。やっぱりそう簡単に見つからないか」

「そりゃそうだろ」

「まあ、時間はあるんだし、焦らずにやろう」


もうすぐ、1時といったところ、すでに2時間近く、あてもなくレーダーを見ながらぶらぶらしていることになる。


「そろそろ、お昼にしようか」


私のその一言で、お昼休憩をすることになった。

といっても、キャンプの醍醐味であるバーベキューとかカレーを作ったりはしない。

香りが豊なものを作れば、魔物とかよってくるだろうしね。


「でもさー、ドラゴンのいるところに来てからめっきり魔物とか動物の遭遇が減ったね」

「そりゃ、ドラゴンの縄張りだからだろ」

「やっぱり、ドラゴンとかもそういう習性があるんだろうね。でも、あの時も不思議だったんだけど、なんであのドラゴンは翼があって空を飛ばなかったんだろうね」

「そういえば、あの時はなぜか木々をなぎ倒して、こっちに進んでくるだけでしたね」

「簡単だよ。あれは僕たちを餌として見てたからだろう? 空中から森は確認しにくいし、あのドラゴンは嗅覚は悪いみたいだったし、ほら、木の上にいても気が付かなかっただろう? そこで空から炎でも吐いて燃やしたら消し炭でわからなくなるんじゃないかな」

「あー、なるほど。確かに、そういう可能性もあるね。しかし、飛べるならわざわざこの森で探さなくていいんじゃないかな? どこかの広い草原にでも行って探せばいいんじゃないかな?」

「いやー、そこまで言われると私もわかりませんよ」

「あ、いや、ごめん。ただなぜ飛ばなかったのかが疑問だったんだ。里中先生が助けにきた時だって、最後まで飛ぼうとはしなかっただろう?」

「うーん。ただ飛ぶ暇がなかっただけだと思いますけどね。里中先生はあっという間にやってましたから」

「そうだねー。あの里中先生からみればドラゴンもただのトカゲみたいだし、レーダーだって見ても意味ないからね」

「動きが早すぎて、レーダー見てる暇ないからね。不意打ちなら分からないけど、それも回避されそうだし」

「確か、風を感じるとか言ってたなー」


なにその、ヒロイン的な能力みたいなの。

それとも気とかいうやつですか?

あれですか、こう両手からはーって?

ま、それぐらい里中先生はチートだということ。

それだけ苦労したんだろうなー。

私たちだって訓練でひーひー言ってるし、あそこまでたどり着くのはまだまだ遠そう。

そんな感じで雑談をしながら、アイテムボックスで持ってきたサンドイッチを食べていると、突然爆発音が響く。


ドドドーン……。


思ったよりも近い?


「ゆーや、先輩、飛ぶよ!! 周りに注意して!!」

「わかった」

「了解したよ」


そういって私たちはお互い背中合わせに飛行魔術を使って飛び上がる。

森の木々を越え、空へと飛び出す。

私の目の前には、一面穏やかな森が続いている。

というか、どれだけ広いんだよこの森。


「K異常なし」

「Y異常なし」

「H異常確認!! 煙が上がってる!!」


KYHはみんなのイニシャルから、暗号とか簡潔に喋るときに使う言葉。

そのH、宇野空響先輩の方を慌てて振り向くと、たしかに遠くではあるけど煙が上がっている。


「距離は大体直線で3キロってところだな。越郁このまま飛んで行くか」

「うーん。ドラゴンが飛んでる私たちを見てパクってくるのが怖んだよなー」

「なら、森の上ギリギリを飛ぶか、かなりの高度をとるかの二択でどうだい」

「そうだなー。高度を取ったらドラゴンがいたら発見されるだろうし、すぐに森の中に逃げ込めるギリギリで飛んでいこう」


空を飛んでいかなかった理由はいま言ったように、私たちが強襲を受ける可能性があったから。

ドラゴン以外にも、飛行タイプの魔物がいたら追い回されるからね。

だけど、今は目の前にドラゴンの可能性があるし、いいだろう。

低空、木々の頂点あたりギリギリを飛んで煙が上がっているところに急行していると……。


「グルガッーーーー!!」


そんな雄たけびを上げつつ、ドラゴンが煙の上がっているところから飛び出してきた。


「やばっ、森の中へ隠れて!!」


とっさに森の中に隠れる。

見つかってないよね。

そう思ってレーダーを見ると、1キロ圏内にドラゴンをとらえたのか、大きい魔力反応があり、それは小さな魔力反応に囲まれていた。


「やっぱり飛んでましたね」

「飛べなかったわけじゃないのか、でも、わざわざ飛んでるってことは何かと戦っているのかな? 捕食なら降りないと消し炭になるんだし」

「みたいですよ。レーダーに反応があります。ドラゴンの魔力反応の周りに小さな魔力反応があります」


私がそういうと、ゆーやもレーダーを確認してうなずく。


「何かとやりあってるな……」


でも、先輩はなぜか反応がなく、固まっている。


「え、嘘。いや、まさか……」

「先輩?」

「……越郁君、勇也君、君たちのレーダーには小さい魔力反応としか出ていないが、それは個体の表面積大きさによって発生している魔力で小さいと判断しているんだ。決して、レーダー上では小さいからといって弱いわけじゃない」


いきなり何か説明をし始めた。

ついていけない。


「えーと、どういうことですか?」

「あ、ごめん。ちょっと気が動転している。今、あのドラゴンが戦っているのは僕の間違いでなければ、オークだよ」

「はぁ? オークが戦ってるんですか? それはまあ、襲われたんですかね。オークも災難ですね」

「違う、違うんだよ!! オークが襲われているんじゃない、ドラゴンがオークに襲われているんだ!!」

「「はい?」」


何をご冗談を。

ドラゴンはRPGというか地球のどの文献でも伝説、最強の怪物だよ?

それがオークに追い回されるとか……。


「そうか、君たちには、まだレーダーで反応のある個体の魔力総量を感じ取れなかったね。オークたちの一匹一匹の魔力量は今対峙しているドラゴンとそうかわらない」

「つまり、なんですか、今まで戦ってきたオークの方が数がそろえば、ドラゴンより強かったと?」

「そうだよ」

「……ははは、ご冗談を」

「冗談じゃない。見てごらん、飛んだはずのドラゴンはまだ離脱していないどころか、その場で未だ戦っている。爆発音は聞こえるだろう?」


ドン、ドン、ドーーン!!


うん。

はっきりと聞こえる。


「強いはずのドラゴンがいまだ戦うほどの相手だということだよ。というか、今ようやくわかった。ドラゴンが飛ばなかった理由が」

「どういうことですか?」

「僕たちと同じだよ。敵に見つかるから、狩られるから、地面をはいずるしかなかったんだ。飛ぶのは本当に最後の手段ってことだ。早くいかないと、ドラゴンを奪われる。先生が6日もかかるって言ってたのはこのせいだったんだよ!!」

「ちょ、ちょっとまってください。今整理しますから……」


えーと、宇野空先輩曰く、実はオークの数がそろえば、ドラゴンさんより強いらしく、異世界に初めてきたドラゴンさんが地面を歩いていたのは、オークさんたちに見つからないため。

……まあ、レーダー上のオークは一匹も減ってないし、ドラゴンさんの攻撃は今も続いているから、嘘ではないとはおもう。

で、続きはなんだっけ。

オークさんに見つからないようにしているのは、食われるから、狩られるから。

つまり、今のままだと、オークにドラゴンを横取りされて、他の息をひそめているドラゴンを探さないといけないということになる。

……つまり、今目の前にいるドラゴンを持って帰らないと6日以内に終わるかも怪しい?


やっば!?


「空中へ飛んで、現場に急行!! 念のために、いつでも離脱できるように!!」

「わかった」

「間に合うといいんだけど」


慌てて空を飛ぶと、ドラゴンが同じように空を飛んでいたのだが、直後、森から飛びあがった、オークが槍を首に突き刺して、ドラゴンがひるんだと思ったら、次から次へとオークがドラゴンに飛びついて、剣や槍を突き立てていく。


「ギャオーー!?」


そんな悲鳴と共に、墜落していくドラゴン。


「マジで、オークがやってますよ!?」

「どうするんだ。このまま行っても、僕たちが獲物を横取りする感じだぞ」

「だよねぇー」

「ここは弱肉強食!! よって、ネトゲーによくある横殴りや、お店の順番並びの割り込みとは概念が全く違うので、問題なし!! 私たちはいまから、あのオークたちから、ドラゴンを奪う!!」

「「……」」


私の発言に白い眼の2人。

でも、文句を言わないところを見ると、私の言っていることはわかるんだろう。


「……オークたちはなるべく殺さない方向で、今まで狩った獲物をあげて納得してもらうと思う」

「まあ、それがいいかな」

「うーん。それしかないね」



そんな微妙な気持ちを抱えたまま、私たちはドラゴンを倒して喜んでいるであろうオークたちを横殴りして……獲物を奪った。


……あれ? 私、勇者だよね?

何か、涙が……。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る