第2回活動報告:異世界調査部って何?
活動報告者:海川越郁 覚得之高校一年生 自然散策部 部員
今日は待ちに待った、異世界調査員になるための筆記試験だったはずなのに……。
「はぁ、なるほど。まあ、学生らしいといえば学生らしいですが、私まで報告が来たということは、見ていた人たちが不安になっていたということです。もう数年もすれば社会に出る人もいます。そういうこともよくよく考えて行動しなくてはいけませんよ」
「「「はい、ごめんなさい」」」
なぜか、朝のことで里中先生にお叱りを受けているのであった。
いやー、私も公衆の面前でゆーやの取り合いはまずかったと思う。
私も傍観者なら、ゆーや、もげろ、死ねばいいのに、とか思ってたはずだ。
あんな、マンガやラノベの主人公みたいなのに災いあれと。
だが、自分で体験してみると、その主人公を取り合いしているヒロインたちの気持ちがよくわかった。
ゆーやは私のモノである。
その一言に尽きる。
それに手を出すのがいれば怒る。当然のことだ。
宇野空先輩は悪い人ではないとわかっているが、だからといって、私のゆーやをくれてやることはできない。
まあ、異世界のお約束でハーレムOKという法律でもあればいいのだが、狭い日本どころか、基本的に地球の主要国は一夫多妻は禁止である。
昔に比べて、男が少ないってことはないからね。
と、そこはいいんだよ。
「里中先生。今日は試験どうするんですか?」
「そうですね。今日の筆記試験は明日に引き伸ばしましょう。ちょっと、言い忘れていたこともありましたし」
「言い忘れていたことですか?」
「そうです。それも含めて今一度おさらいをしましょう。そして明日、筆記試験をしましょう」
そういって、里中先生は部室の端にあるホワイトボードに歩いていく。
小さい部室だし、黒板なんてのはない。というか、黒板はチョークの粉で煙たいし掃除だ大変なので、この学校はすべてホワイトボードに切り替えるべきだと思う。
くだらないことを考えているうちに、里中先生がホワイトボードに『異世界調査員とは?』と書き込んで、こちらを振り返る。
「さて、基本的なところから行きましょう。そもそも、この異世界調査員とは何か? では、山谷君」
「はい。異世界調査員とは、世界各地で出現している、異世界への門、ゲートの先にある世界を調査するためにあります」
「そのとおりです。今や、異世界のへの扉、門、ゲートというのは、各国で山ほどとは言いすぎですが、それでもかなりの数が存在します。日本でも283も見つかっており、そのうち封鎖しているのは132、そして残りが51となっています。つまり、最低51もの異世界の扉が存在し、その中に地球と同じような世界が広がっているわけです」
いまさならが、異世界ネタって身近なんだなーって思う。
まあ、自分が経験したなら、他の人が経験しててもおかしくない。
ただそれだけの話しなんだけどね。
「では、具体的に調査をなぜする必要があるのか? そこは詳しく説明してもらいましょう。宇野空さん」
「定義が広い気もしますけど、主に、つながった異世界とのトラブルを避けるため。及び、友好が結べそうなのか、特殊な技術はないかなど、地球の利益につながるかを調べるためです」
「そうですね。確かにちょっと定義が広すぎました。でも、宇野空さんの回答で問題ないでしょう。宇野空さんのいう通り、異世界とは、我々地球の人々からみれば未知の世界。未知の技術、資源や、果ては第二の地球としての移住などもできることからも考えて、その世界に対して調査をするというのは、ごく当たり前のことです。しかし、同じ地球の常識ですら各国で違うのに、異世界という未知の世界の常識など測ることはできません。そもそも、生態系すら違うこともままあります。例えば、魔物という特殊な生態系が存在していたりします。それに加え、地球と同じように国を形成していることもよくあります。まあ、その生命が存在しない死の異世界もないことはないのですが、いま話しているのは、地球にとって有益であることが前提なので、今は除外します。その異なる常識や文明やへ友好のための調査ということです」
この話も聞けば納得できる話だ。
地球だって、限りある土地をめぐって戦争をしていたんだし、異世界という、無限のフロンティアに手を出さないわけがない。
「また、その異世界の扉から、侵略を目的とした地球への侵入も過去にはありましたので、そういう意味でも調査は急務となるわけです。では、その調査員がなぜあなたたちのような巻き込まれた人たちに任せられているのか? 海川さん」
「えーっと、先ほども里中先生が言ったように、数が途方もなく多く、国では対処しきれず、人員が足りていないからです。また、異世界に迷い込んだり召喚された人たちは再び異世界に行く可能性が高いので、当人たちの安全確保のためでもあります」
「はい。その通りです。日本でも51もの異世界の扉がすでに存在しており、すでに一国家では手の余る状況となっています。ですが、放っておくにはもったいなく、危険でもあります。ならば、再び呼び出される危険性のある当事者たちを訓練し、そのまま調査員にしてしまおうというわけです。これで何かあればフォローもできますからね。そして、あまり言いたくないのですが、その調査員の監視も兼ねています。異世界に召喚、及び迷い込んだ場合、特殊な能力を得ることがあり、それを使い、地球で無茶苦茶をすることが起きています。例えば、異世界で貴金属を手に入れて、地球で売りさばくと、その量に応じて、貴金属の価値が下がります。それだけならばいいのですが、辻褄合わせに中途半端に催眠術などをしてしまえば、ある日突然出所不明の貴金属が大量にでてきて、当局が非常に混乱します。そもそも、地球で真面目に働いている人たちの雇用や会社運営の妨げになりかねません。最悪はその催眠術みたいなのを使って好き放題やるバカもいたりしましたので、厳しくそこらへんは取り締まっています。地球のルールは守りましょうということです」
うん。
よくわかる。
俺TUEEEってした主人公が戻ってきて、異世界で手に入れた貴金属を売りさばくために、催眠術とかを使って辻褄合わせしても、それはそこだけの話だし、今時金とかはちゃんと記録されて管理されているので、世界すべてを催眠術でもかけないとどこかでばれる。
「下手をすると、異世界の財源を地球に奪ってしまう事になりますので、異世界の経済を停滞させることにもなりかねません。それは戦争の引き金になりますので、くれぐれも扱いには気を付けてください。まあ、そのために、我が異世界管理機構でその貴金属の回収に応じて支払いをするというシステムが存在します。ですが基本的にこの調査員は非公式ではありますが公務員となりますので、十分な給与が支払われることになりますので、地球での生活に、あなたたちは日本での生活に困ることはありません。散財すればその限りではありませんが、その場合や先に言った常識を外れる行為は調査員の資格なしととられ、記憶消去の上に能力封印措置ということになりますので注意してください。まあ、めったにありませんが」
そう、なんとこの異世界調査員は公務員という扱いになる!!
昨今の就職難の時代に至れり尽くせりだね。
「さて、ここまでが基本です。では、次は異世界でよくある事象についてです。基本的に異世界の扉の先にある、文明のレベルはどの程度のことが多いでしょうか? 山谷君」
「はい。地球と比べると、かなり文明は低く、中世ヨーロッパ相当の文明レベルなどが多いそうです」
「その通りです。たまーに、ごくまれに地球よりも文明が進んだところへの異世界の扉が開いたりしますが、それは除外いたします。では、なぜそんな文明レベルの所からの召喚が多くあるのかというと、これが考え方が逆なのです。文明が進んだ世界が、このような召喚という名を借りた誘拐をするわけがないからです。国際問題は確実で、下手をすれば戦争に発展しかねません。つまり、そういうが認識の低く、社会が未成熟だからこそできる蛮行です」
これも聞いてすごく納得した。
そりゃそうだよね。
地球よりも文明が進んでいるところが、地球人を呼んでもなんも利点ないし。
社会も理性的だろうし、誘拐などするわけがない。
だから、必然的に、異世界の扉の先は文明レベルが低いところが多くなるわけだね。
「そして、社会が未成熟ということは、人命がすごく軽く扱われたり、奴隷制度などが普通に横行していますので、そのことにいちいち腹を立てても仕方がありません。それでその社会が成り立っていますので、よくある、地球の制度を持ち込むと、混乱を生むのは必至で、最悪、戦争になりかねません。そういうことを防ぐためにも、調査が必要というわけです。異世界の国にはその国のルールが存在します。それをよくよく覚えておいてください。では、これからは、異世界の文明レベルに合わせて持ち込める知識や技術、道具などについて説明していきます。一応、想定は中世ヨーロッパ程度と仮定していますので、それに合わせて……」
そこからは、世界史の中世ヨーロッパの文明などの説明に入る。
いや、世界史よりよっぽど詳しいけどね。
大学の専攻レベルじゃねってぐらい。
どうやって、その中に溶け込むとか、衛生面の改善方法とか、いろいろ具体的に。
そんなことを1時間半ほど続けて、気が付けば夕日が沈みかけていた。
「大体こんなところですね。では、明日の試験、頑張ってください。普通に今日の講義を覚えていれば問題ありません」
そういって、里中先生はホワイトボードに書き込んだ講義記録を消していく。
ふう、まあ何とかなるかな?
ん? 何か忘れてない?
ああ!!
「って、里中先生。言い忘れていたことってなんですか?」
「あ、忘れていたわ。これは試験と関係ないのだけれど、調査員のやる気を引き出すためのことね」
「やる気ですか?」
「そうよ。調査員にはヒーローになれるのを諦めてもらって、公務員になってもらうのだから、頑張りに応じて、相応の特殊な支援が受けられるの」
「特殊な支援ですか?」
「そう。例えば、一夫多妻制の認可とかね」
「「なにだって!?」」
その事実に私と宇野空先輩が大いに食いつく。
「異世界に行く男女って言うのは、それ相応の絆が出来上がることが多々あるし、異世界の多数の人たちと恋仲になることも多いわ。奴隷制度とかあるしね。それを今まで頑張ってきたんだし、なんとかしてあげようってね。具体的には、親や周りの説得という催眠術に近いことを国家ぐるみでやってもらえるわ。個人でやるよりサポートは厚いし、別に結婚ということにこだわらなければ、日本国籍の発行とかも比較的簡単ににできるわ。その制度でこの日本にきたのが私ね」
そういって、里中先生の容姿が一瞬で、日本人の女性から金髪のペタンコの超美人エルフに変わる。
「容姿は変えないと流石にまずいけど、こんなふうに日本でマンションを借りて普通に生活できるわ。もちろん、この日本に連れてきてくれた夫のおかげなんだけどね」
「つまり、里中先生の旦那さんも……」
「ええ。ハーレムよ。私を含めて7人」
すっげー!?
リアルハーレム!!
こんな美女を侍らせて他に6人とか、もげろよ。
「こうやって異世界調査員の増員、サポートとか管理とかもやっているから、異世界管理局としてはありがたいのよね。まあ、半数は元の世界での領地管理で忙しんだけどね」
「領地!?」
「ええ。調査員はそうやって、異世界での権限拡大の為にいろいろ動くの。もちそん、そのためにその世界のお金が必要になるし、有力者の協力も必要。だから、領地経営は大抵の人たちはやっているわね。個人で動くと、異世界の国々が引き抜きとかでうるさいから。もちろん、そのサポートや監視も行うから、間違っても領民から年頃の女性を献上させたり、奴隷をいたぶったりしないようにね。山谷君」
「いや、そんなことしませんよ。ハーレムとか、領主になるとか、手に余りますよ」
反射的にゆーやは言葉を返すが、私と宇野空先輩がそれに待ったをかける。
「ゆーや!! 男だろう!! ハーレムを目指そう!!」
「そうだよ!! ハーレムとは本来、優秀な男性が女性を守るために行っていたことだし、何も問題はないんだよ!!」
「ええー。って、朝は2人とも喧嘩してたんじゃ……」
「それは、解決に至った!! ハーレム認可されるなら、宇野空先輩はOK!! 超気が合うから問題なし!!」
「うんうん。君たちのことは僕はとても気に入ってる。それが法律的にOKとなるなら、ためらう必要はないね。で、里中先生、具体的にその一夫多妻認可にはどれぐらいの実績が必要なんですか?」
「そうねー。領地経営ぐらいやれば、日本での一夫多妻のサポートは受けられるわ」
「「よし、目指すは領主さまだ!!」」
「ええーーー」
「うんうん。やる気になってくれてうれしいわ。正直、男女の仲の問題で調査員も過去にいろいろあったから、そのための制度なんだけどね」
なるほど。
確かに、ありそうなことだ。
向こうで仲が良かったのに、日本では一人だけとか、嫌だよね。
しかし、これでゆーやを仲良く分けられるようになったわけだ。
実際、リアル猫耳娘とか触ってみたいし、私取っては万々歳だよね。
宇野空先輩もゆーやとイチャイチャできて万々歳。
みんなこれで幸せだね!!
明日の試験頑張るぞー!!
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