第1回活動報告:変わらない日常と変わった日常



活動報告者:山谷勇也 覚得之高校一年生 自然散策部 部員



都市ではないが、少し電車やバスなど移動すれば都会と呼べる場所があり、人込みなどで困ることもないから、僕としては非常にありがたいと思っている。

近くに小中高が存在しており、これから子供を育てる場所としては申し分がないと思う。


そんな覚得之おぼえの町に住んでいるのがこの僕、山谷勇也やまや ゆうや

今年の春から晴れて、高校生へとなった。

さっきも思ったが、高校生になってこの町のありがたみがよくわかる。

小中高と特に通学時間が変わることなくいけることの大事さがよくわかったのだ。

いや、高校は僕が近場の所を選んだだけなのだが、小中と変わらぬ時間で高校に通えるというのは、本当にありがたい。

なにせ、同じクラスの友人なんて僕よりも朝1時間早めに起きて通っているのなんて普通にいるし、それよりも交通の便が悪いところから通っている人によっては2時間はかかるらしい。

特に覚得之高校は何かの強豪高校というわけでもないに、そこまでしてくるのはよくわからないと思っていたが、通学一時間かかる友人曰く、近場の高校は偏差値が極端に高いか低いしかなく、適当な場所がこちらだったというわけだ。

なるほど、僕の親は僕の頭の出来まで計算してこの町に住むことを決めたのかと、感心したぐらいだ。

そして、僕が本当に近場の高校で、通学時間が変わらない、短いということを実感していることは別にある。


「……まぁ、わかってたけど、起きる気配はないか」


時計はすでに7時を回った。

我が高校は特殊な制度を採ってはいないので、他の高校と同じように8:30授業開始であり、その前に先生が来て出席をとるので、基本的に8時には教室にいないとまずい。

単位としては授業に出ていればいいのだから、8:30ギリギリでもいいのかもしれないが、世の中内申点というモノが日本には存在していて、学校の出席状況というのは、その内申点に非常に響くだろう。

僕はそういうつり橋を渡るような根性はないし、今のところ病気以外で学校を休んだことはない。

余裕を持って教室に到着し、授業の準備を始めるいたって普通の学生である。


「今日は起きるって言ってたのを期待した僕が馬鹿だった。はぁ、母さん。行ってきます」

「はーい。気を付けてね」


僕は母に声をかけて家を出る。

余裕を持ってというが、流石に余裕を持ってゆっくり歩いても20分、普通に歩けば15分、走れば8分切れるかもしれない。

そんな目と鼻の先にある高校にわざわざ1時間も早くでる必要性はない。

朝練の必要な部活も特に入ってもいないのに、なぜこんな朝早く出るのかというと、僕は学校に向かわず隣の家へと歩いていく。


ピンポーン


『はーい。ゆうくんですか?』

「はい。おばさん、おはようございます。起こしに来ました」


そうインターホンにこたえると、すぐに玄関のドアが開く。

そこには、見知ったお隣さんで、海川凪咲うみかわ なぎささんが立っていた。


「ゆうくんなら普通に入ってきていいのに」

「いえ、そういうわけにはいきませんよ」


海川家とは小さい頃から付き合いがあるが、こういうことはちゃんとしないといけない。

親しき中にも礼儀ありというやつだ。


「真面目なんだからー。と、いけない。あの子のことよろしくね」

「はい。もちろん。大事な幼馴染ですから」

「ふふ。よろしくね」


凪咲おばさんはそういって、すぐに台所へと戻っていく。

僕はこのお隣さんに尋ねた原因、幼馴染を起こしに勝手知ったる海川家の階段を上り、部屋の前で立ち、ノックをしながら声をかける。


「越郁。起きてるか、越郁」


…………。


しかし反応はない。

やぱっりかと思いつつ、ドアをゆっくり開け部屋の中のを覗くと……。


「くー、くー……。むがっ……。くー、くー……」


気持ちよさそうに寝ている幼女がいた。

残念ながら、本当の幼女であればまだかわいげがあったのだが、こいつは俺の幼馴染で同じ年で、同じ高校にかよく学友である。

その名を、海川越郁うみかわ こいく

まだ、かわいいパジャマでも着ていれば可愛げがあるものなのだが、ジャージを着ているから微妙。

そして、越郁のベッドに散乱しているのは、本、本、本。

床に本屋の袋が転がっているから、これを夜遅くまで読んでいたのだろう。

とは言え、それは自己管理ができていないので情状酌量の余地なく、起こすことにする。


「おい。越郁、起きろ!! もう朝だぞ!!」


僕はそういいながら、越郁の体を揺らす。


「んー……。ゆー……や?」

「そうだよ。朝だから起きろ」

「……ぐぅ」

「寝るなー!!」


バシンッ!!


いつものように、ベッドに転がっている本で頭をたたく。


「あいたーーー!? なにするんだよ!!」


その衝撃で覚醒したのか、声高々に頭を押さえながら飛び起きる。


「なにするんだよじゃない。もう7時5分だ。早く準備しないと間に合わないぞ」

「えー。あと25分も寝られるじゃん」

「それだと、着替えてランニングコースだろ」

「……朝からドギツイ運動か、それとも早く起きるか……難題だ」

「難題じゃない。起きて準備しろ」


くだらないことを言い出すので、またペンと本で頭をたたく。


「いたっ。はぁ、わかったよ、ゆーや」


ようやくのそのそとベッドから出てきて、ジャージをスパッと脱ぎはじめる。

ジャージの中は無論、女性であるから下着をつけているのだが、残念ながら、幼馴染の下着姿を見ても今更思うところはない。

そういう漫画やドラマみたいな関係など通り過ぎている。

越郁は気にしないし、僕もなれた。

これが僕と越郁の当たり前のやり取りだ。

しかし、なぜかジャージを脱いだ後止まっている。


「どうした?」

「……えーと、ゆーや。制服どこ? いつもの場所にないんだけど?」


そういわれて、いつも越郁の制服がかかっているハンガーラックには制服はなかった。


「おばさんが洗ったんじゃないか?」

「あー……そういえば、昨日そんなこと言ってた気がする。じゃ、下かなー」


そういって下着姿のまま下に降りようとするので止める。


「まて、先にカバンと中身そろえていけ。あと靴下とかTシャツとか着ろ、まだ寒いから制服取って部屋にまた戻るとかつらいぞ」

「あー、そうだね」


現在4月上旬。

まだまだ朝夜はしっかり冷える。

それを越郁も理解して、ようやく覚醒してきたのか、動きがちょっと早くなり準備をする。


「よし。これで完璧」


そこには、上半身にはTシャツを着て、下半身は下着と靴下、そしてカバンを持っている幼女が立っていた。

完璧には程遠いと思う。


「痴女だな」

「なにをー。って、流石に下半身が寒いね。スパッツをはこう」


いそいそとスパッツをはいて、またポーズをとるがどう見ても完璧ではない。


「バカやってないで、下に行くぞ」

「へーい」


下に降りると、越郁と一緒にリビングへと入る。


「ねえ、母さん。制服どこ?」

「ああ、洗濯室にあるわよ」


振り返ることなく、キッチンにいる凪咲おばさんは返事をして、越郁はリビングを出て行く。

その直後振り返り、焼きたてのパンとサラダをテーブルに持ってくる。


「時間ぴったりですね」

「ゆうくんが越郁を起こして降りてくる時間なんて把握済みよ」

「流石は母さん」

「バカ。いつまでゆうくんに迷惑かけてんのよ。着替えたなら、さっさと食べなさい」

「あてっ。はいはい、いただきまーす」


いつもの海川家の日常。

僕がいるのも含めて。

さて、僕も越郁が朝ごはんを食べている間に、朝のニュースでも見るためにテーブルの上にあるリモコンをとってテレビをつける。


『天気予報の時間です』


大体この時間にテレビをつけると、天気予報の時間になる。

この間に傘が必要性の有無を確認したりしている。


「んぐっ。今日も晴れかー」

「そうだな。洗濯物がよく乾きそうだよ」

「……はぁ、ゆーやはなんでこう家庭的なんだか。ここは、私とデートに行こうっていうべきじゃないかな?」

「越郁がそんなことより、ラノベを読んで、ゲームしたいって言ってここ一か月はいけないって言ってただろう。お金もないだろうし」

「そ、そこは、こう、女を引っ張る男の甲斐性をだね」


そういっている越郁の前に牛乳の入ったコップがコンッとおかれて……。


「越郁、ゆうくんにたかるんじゃないわよ。あと、デートに行くから臨時にお金が欲しいって言ったのはうそだったのね」

「……お母さま。これには深い事情が」

「帰ってきてからゆっくり話しましょう。もう、出る時間よね? ゆうくん」


にっこりと迫力のある笑顔に僕は意義を唱えることはない。

どうしてこうも凪咲おばさんを怒らせるかね。



今日は天気予報通りに、快晴。

こりゃ、暑くなるかな?

4月はどちらかというと、まだ肌寒いけど、ここまで晴れだと上着を着ていると暑くなる時がある。

微妙な時期だよな。

そんなことを考えていると、横で両手で頭をわしゃわしゃやっている越郁が叫ぶ。

あー、ぼさぼさの頭がさらにぼさぼさに。


「あーー!! ねえ、どうしよう!! ゆーや、母さん完全に怒ってたよ!?」

「そりゃーな。僕とのデートと偽って、趣味にお金つぎ込んだんだから、一種の詐欺だよな」

「仕方がなかったんだよ!! っていうか、ゆーやがばらしたのが原因じゃないか!!」

「えー。でも、お金がないってのに、反応しなかった越郁が悪いだろう。お金があるなら、普通に答えればよかったのに」

「うぐっ」

「で、ごまかせそうなぐらいお金はあるのか?」

「……ないです。というか、今更お金を見せても、……無駄だよね」

「だろうな。大人しく怒られるのが賢い選択だとおもうぞ」

「はぁ、万策尽きたか……」


がっくりと肩を落とす越郁。

あきらめたように見えたのだが、すぐに何か思いついたように、顔を上げる。


「そうだ!! あれは、部活動のための出費として認められないかな!! お金の補てんはあれを使えばできるしさ!!」

「……流石に無理だろう」

「ぬぐぐ、試験の為に買ったんだし……」

「それはわかるけどさ、表向きは違うんだし、僕に話してくれればよかったんだけどな。越郁にとって僕はそんなもんかー」

「あっ!? ちょ、ちょっと、ゆーや!? 怒んないで、ごめん!! ごめんなさい!! 私にはゆーやしかいないんだよー!?」


そういって越郁がしがみついてくる。

本来であれば、修羅場といっていいような場面であるが……。


「なにあれ?」

「小さい子いじめてるの? でも、あれうちの制服じゃない?」

「どっちにしても、いじめてるのは変わらないわよ。先生を呼びに行こう」


そんな声が周りから聞こえる。

そう、越郁は身長135cm、体は真っ平、まごうことなき幼女に見える。

そんな越郁が身長160cmはあろうかという、僕に泣きながらしがみついている姿は、傍目に俺が悪者にしか見えない。

つまり、僕は小さい女の子をいじめているという風にみられているのだ。

それはまずい。

非情にまずい。

越郁をどうにかしようと動こうとした瞬間、後ろから声をかけられる。


「やあ、朝から仲のいいことだね。まったく、うらやましい限りだ」


その声は明らかに周りの人に聞こえるのよな、隣の人に軽く声をかけるようなものではなく、大きな声でありなら、透き通った声で心地の良いものだった。

振り返ると、そこには同じ制服を着た、女学生が立っている。


「しかしだ、周りの目もあることだ。そういうことはあまり人目のつかないところでやるべきじゃないかな? それとも、わざとかな。越郁君?」

「……人聞きの悪いことを言わないでください。宇野空先輩。これは、先輩のいう通り、仲のいい一幕ですから」


そういって越郁が泣くのをやめて、俺に抱き着いたまま、宇野空響うのそら ひびき先輩を睨み付ける。


「おや。その割には、越郁君の大事な彼の評判がダダ下がりだがいいのかな?」

「仕方のないことです。ゆーやが私を捨てるっていうから……」

「いや、言ってないし」

「おや、ついに破局かい? いや、越郁君。残念だね。しかし、それも仕方がないね。君は勇也君に甘えすぎだ。これを機に一人立ちというわけだ。勇也君のことは心配いらないよ。僕が大事にしてあげるからさ」

「はぁ!? リアル僕っ子なんて痛いやつに、ゆーやを渡すわけないよ!! ばっかじゃないの!?」

「それを決めるのは勇也君さ。さて、どうだろう? 僕はそこのちびっこよりはスタイルがいいと自負しているし、生活態度だっていい。それに僕は尽くすタイプだよ」

「えーと……」


確かに、宇野空先輩のスタイルはいい。

モデルさんにでもなれんじゃないだろうかって感じの人だ。

髪型は越郁と違ってポニーテールできるような長さではなく、ショートカットという感じなのだが、しっかり女性として見える立ち振る舞いがある。

僕って一人称は、越郁とかを見ているし個性でいいだろう。

が、そこはどうでもいい。

結局のところ、僕の状態は悪化の一途をたどっている。


「ねえ。もう一人きたけど、あれって修羅場?」

「そうじゃないかな、最初はきっとあの男に二股かけているのかを聞いてたんだよ」

「ああ、そして、ご本人登場ってことね。とりあえず、あの男サイテー」


幼女いじめから二股野郎にアップグレード?ダウングレード?かわからないけど、僕の評判は地の底に落ちたといっていいだろう。

せめて、校門前じゃなくて、他の場所だったらまだましだったのかなーと、現実逃避を始めていると、校門から先生らしき人がこちらに向けて走ってきていた。


「先ほど、校門で児童虐待があっていると聞いてきたのですが……。あなたたちが原因でしょうか?」


その先生は俺たちを鋭く観察していう。

まあ、いじめから二股サイテーな展開になっていますけどね。


「いえ、主にこの越郁君の責任ですよ。僕や勇也君は関係ありません。里中先生」

「ち、ちがっ、違うんです。この性悪僕っ子が、私とゆーやの関係に口を出すから……」

「……とりあえず、騒ぎの原因があなたたちだというのはわかりました。ここで騒ぐだけではいらぬ誤解を受けるだけです。話は指導室で聞きましょう。いいですね?」

「「「はい」」」


流石に里中先生に逆らう気はないのか、大人しく二人とも里中先生についていく。

無論、僕も同じだ。

里中先生は僕もお世話になっている。

本当にいろいろな意味で。


「さて、指導室に連れては来ましたが、もうすぐ授業開始です。今回の問題は放課後の部活動で話してもらいましょう。幸い、全員同じ部活動です。それまでは、騒ぎは禁止です。いいですね?」

「「「はい」」」

「よろしい。では、勉学にいそしんでください」


そんか感じで解散した僕たちは教室に向かう。


「じゃ、僕はこっちだから。また放課後にね」

「はい。宇野空先輩」

「おや? まだそれかい? 僕は響と呼んでくれ」

「は、はあ。響先輩」

「ふむ。まあ、いまはそれでいいかな。越郁君もまた放課後に」

「この女狐めー」

「あはは、僕はどちらかというと、忠犬だと思うんだけどね」


そういいながら宇野空……じゃなかった響先輩は自分の教室へ向かっていく。


「ゆーや。もっとはっきり言っていいんだよ。僕は好きなのは越郁だって」

「……いや、そもそもの原因は越郁だろ」

「うぐっ。そこは改善するから、ね?」

「いや、今回の件はさすがに駄目だろう。おばさん騙すとか」


そう、今回はちょっとやりすぎ。


「ううっ」

「ちゃんと反省したか?」

「……反省しました」

「はぁ、いえばお金ぐらい貸してやるのに」

「……流石に私の不出来の為にゆーやに迷惑をかけるのはどかと」

「今更だろう。そして、おばさんに迷惑かけたら、なおダメだろう」

「……ごめん」

「一緒に謝ってやるから」

「ありがと……」


うん。

やっぱり、越郁はかわいい。自慢の彼女だ。

見た目や生活態度はあれだけど。

……あれ? やっぱり僕って騙されてるのか?

そんなことを考えているうちに、授業が始まりあわただしく、当たり前の日々が始まっていく。



キーンコーンカーンコーン


そんなチャイムが響いて、学校はあわただしくなっていく。

授業の時間が終わり、家に帰る人や、遊びに行く人、部活動にいそしむ人、委員会の活動やらで騒がしくなっていく。


「うーん。ようやく終わったねー」

「じゃ、部活動に行って今朝の説明だね」

「あー……、そんなことあったね」

「現実逃避しない。里中先生に話してみて、なんかいい案を言ってくれるかもしれない。越郁は試験の為に散財したんだから」

「そ、そうだよね。どうにかなるよね」

「まあ、そもそも勉強をちゃんとしてればよかっただけなんだけど、趣味も入ってるだろう?」

「……その通りでございます。でも、参考になるって言ってたし」

「まあねー」

「私は真剣なんだ!! だって、異世……」


慌てて僕は越郁の口を手でふさぐ。


「こら、そんなこと言ったら、守秘義務違反で終わりだぞ」

「ご、ごめん。でも、信じてよ。私は楽しみで仕方ないんだ」

「それはわかるよ。だから、遠慮なく僕を頼って欲しい。今更遠慮する関係でもないだろう」

「あー、うん。そうなんだけど、これは私の矜持というか、この分野は私の専門だし」

「そういうことか。まあ、わからないでもないけど、やっぱり、おばさんの件はまずいだろう」

「うん。反省してます」

「とりあえず、部室に行こう」


僕と越郁は一緒に部活動棟に移動して、ある一室にたどり着く。


『自然散策部』


あの日の出来事から、僕たちの為に作られた部活動。

表向きは文字通り自然の中を散策する部活動。

詳しく言うと、自然公園などのところを散歩、楽しむ部活動で、公園などや神社仏閣、果ては山や海などの観光名所を歩いて、その中で学習していこうという、それらしい部活動となっている。


しかし、その実態は、3月に僕たちが遭遇した、神隠し、異世界への門の先の調査をするための隠れ蓑で、本当のことを言うのであれば……。


『異世界調査部』


というのが正しいだろう。

ここは、あの公園にできた異世界への先を調査するための部活動。

里中先生曰く、非公開政府活動らしい。


昨今、越郁が読んでいるような、異世界へ人が召喚、誘拐、神隠しになるという出来事が確認されている。

いや、昔からよくあったらしい、と里中先生は言っていた。

神隠しというのが日本における異世界転移だろうと。

さて、なぜこんな僕たちのような一般人がこんなことをしているのかというと……。


「来ましたね。これから異世界調査員、筆記試験を行いたいと思います。あなたたちが無事合格できるよう祈ります。まあ、毎日私の話を聞いていれば、落ちるようなことはありませんから落ち着いて問題を解いてください。異世界調査員はこちらとしても一人でも欲しいのですから」


そう、異世界調査員は常に人不足なのだ。

どれぐらい足りないかというと、日本ですら確認されている異世界の門が283、そのうち、封鎖したのが132、残りの51が現在残っていて、調査員を派遣したり、しようとしているらしいのだ。

まあ、別の世界が日本国内だけで、51もあり、そんな世界に数多の国々が存在していた、そんなの全部と日本は外交ができるわけがない。

そもそも、人が足りない。

なので、その異世界に迷い込んだ人々をそのまま、迷い込んだ異世界の調査員として派遣し、状況を把握して、あわよくば日本と友好的な関係を結べればという話らしい。

まあ、その実、簡単なことではない。

僕たちが体験したように、モンスターとかがいる世界もあるし、ちゃんとした事前準備や試験を通過してようやくなれるのだ。


その筆記試験が今日なのだが……。

里中先生はおそらくテストだろう紙を僕たちに配らず、そのままテーブルに置いて、こちらをにらんでくる。


「今朝の騒動の話を聞きましょうか。あくまでも私は表向き、あなたたちが所属する部活動顧問であり、この学校の教師でもありますから」


どうやら、試験の前に朝の痴態について話さなければいけないようだ。

僕や先輩はともかく、越郁は覚えたことが消えそうなので大丈夫かな?







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