第7話スキルのご使用は計画的に

『絶望的な状況、どうのりきるか、だ』


 誰かに拾ってもらえるかも知れないが、雪原のなか、誰も通る気配もない。待っていたら、凍えて死ぬか、最悪獣のエサだ。時間がたつほど状況は悪化するだろう。なにより、


『人任せにするのは、『クレアシオン』の名に恥じるし、なにもしないで獣のエサになるのは捕食者の矜持に反する……』


 【暴食】の【捕食者の矜持】的にも、エサにされるのだけは、避けないといけなかった。クレアシオンは自分に自分に出来ることを考え出す。まずは、新しいユニークスキルから使えそうな物を探す事にした。


『新しいのは、創造、魔素支配、眷属創造✖5、神器召喚✖7、神器召喚《???》だな、魔素支配は、エクストラスキルの魔力操作の上位交換か?まぁ、今は使えないからいいや。一番怖いのが《???》って何?そんな神器作った覚えないぞ?ヴェーグ一筋数千年だぞ!!』


 彼はヴェーグ以外の神器を作った覚えがない。神器創造は、まあ、あるものはあるんだし、ありがたく使わせて貰おう、と考えていた。邪神殺しには神器か【神殺し】系の称号が必用だった。彼が【神殺し(邪神・悪神)】を取得してなかったとき、とどめを刺せる武器がヴェーグだけ、と言うのは選択肢が狭まり、対策が取られやすい、と彼は常々思っていた。彼は多くの武神にそれぞれの得意な武器の扱い方を学んでいたので、【鬼神化】、【九尾化】と様々な武器で変幻自在な戦いかたで敵を追い詰めていたが、邪神の場合、ヴェーグによるとどめしか刺せないでいたからだ。


 しかし、自分の知らない神器、それも、《???》は流石に不気味な物がある。


 結局、消去法で、ひとつのスキルしか残らなかった。


『この状況を打開するのに役立つスキルは、【眷属創造】だな、眷属に村や町まで運んで貰おう。そろそろ体力的にも厳しいしな』


 段々と眠くなっていた。これは寒さによる眠気か、それとも、赤ん坊だからか?……まぁ、後者だろう。


『五回もあるんだな……。よし、まずは、スライムだ。スライムの従魔とか憧れていたんだよな。でも、【テイム】のスキルもないし、スライムは弱いから諦めていたんだよな……。』


 思い出されるは、神界での記憶――


 あれは、クレアシオンが【地球】の【日本】に食べ歩き無断入世界したとき、スライムが矢鱈と流行っていた。興味を持った彼は早速魔物ハントに出掛けた無断入世界管理者の目を盗してんで捕まえて、家で飼っていたが、アリアに踏まれて死んでしまった。


 またある時は、管理者の依頼で神域の魔物に成るまで成長したスライムを討伐してくれ、と言われ、【鬼狐】にスカウトしに行ったが、知能が低くて話しに成らなかった。


【鬼狐】は諦めて飼おうとしたが、大きすぎて場所がなく、【暴食】持ちだったらしく暴れて、大陸を食べ出したので、仕方なく【暴食】の【暴食のアギト】で食べることにした。


 直接食べたく無いもの――【暴食】の効果で、食べた生物のステータスの一部を自分の物にできるが、クレアシオンは人形の魔物や、魔族、邪神を食べたくなかったので取得した――を食べれるので【暴食のアギト】は重宝している。【暴食のアギト】を使うとクレアシオンの魔力が龍の顎の形を作り、対象を貪り喰い、そのエネルギーがクレアシオンに流れ、ステータスが上昇する。


 ――そう、スライムを飼いたくても飼えなかったのだ。だが、今は違う。


『眷属創造、ある程度どんな眷属にしたいか、決めることが出来るはずだ。最初の眷属はスライムにして、移動は次の眷属に任せよう。よし、【鬼狐】とは言わないけど、魔王より強く成長出来るスライムを創ろう』


 クレアシオンはどの様なスライムを創るか少し考えた。前例が酷すぎるので……。


『【眷属創造】』

『眷属を創造します』


 考えをまとめて、眷属創造を使うと無機質な女性の声が聞こえてきた。ヴェーグを作った時に始めて聞き、スキルや称号を取得した時に聞こえる声、始めて聴いた時から、何故か彼には懐かしく思えていた。


『あなたの望む形は?』


 彼は望を簡単に伝える。ヴェーグを作る時に言われたからだ。あまり深く考えても意味がないと――


『了解しました。創造します』


 その声と同時に、黒い魔法陣が現れた。黒と言っても禍々しく濁っている魔族や邪神、悪神の魔力とは違う。澄んだ透明感のある黒だ。黒い魔法陣が紅いスパークを迸らせながら輝く。


 クレアシオンは魔力が奪われる感覚に襲われるが、それどころじゃなかった。クレアシオンの魔力は紅い光だったからだ。それが黒に変わり、名残の様に紅いスパークが見えるだけ。そのことに驚いていた。


 そして、遂に魔法陣から黒いスライムが現れた。しかし、眷属創造に魔力を全て持っていかれてしまった。途中で止めようとしたが、魔力を吸い付くされてしまった。それだけじゃなく、魔法陣に集まっていた黒い霧、恐らく魔素だろう。目視出来るほど高密度になった魔素を吸収していた。それだけ燃費が悪いのか、それとも、それだけ強力な魔物なのか――


 クレアシオンは魔力切れで、意識を失うのを感じた。そして、『俺を守れ』と、スライムに命令して、意識を手放した。


 「おい、赤ん坊がいるぞ!!」と言う声を耳にしながら――

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