第6話世の中の理不尽の一部は自業自得だが、本人は気づかない。
気がつくと、雪がしんしんと降り積もる雪原にクレアシオンはいた。
凍てつく風が彼の体温を容赦なく奪っていく。近くには森があり、そこからは狼の遠吠えや、獣のうめき声が聞こえてくる。
人の気配は全くない。
転生したので当然身体は赤ん坊だ。
◆◇◆◇◆
おいおいおい、まじか?転生したと思ったら雪原って?体は赤ん坊だから動かせない。動かせないから移動も出来ない。
しかも、周りは獣の気配……詰んでね?普通生まれたら親いるだろ?魔物の自然発生――魔物は魔素だまりから自然発生するものと親から産まれるものがいる――じゃ有るまいし……
どこいった?俺の親?捨てるなら教会の前か少なくとも町の中だろ?
落ち着け、落ち着くんだ俺、考えろ勝機は常に己の手の中にある……。自分に出来ることをしろ!
何が常に己の中にあるだ!何もねぇよ!こんなぷにぷにの小さな手じゃこぼれ落ちてるよ!勝機どっか行っちゃってるよ!
こんな雪原に赤ん坊捨てるとか正気の沙汰じゃないな……。……寒っ……。
◆◇◆◇◆
クレアシオンが転生用の魔法陣を書き換えたことにより、転生する時間と場所がずれてしまっていた。完全に自業自得だったが、彼は気がついていない。魔法陣を書き換えたときは、少しでも勝率を上げることしか、考えていなかったから。
彼は一通り文句を並べてから、行動――
『――勝機どっか行っちゃってるよ!!』
――出来ないでいた。だって赤ん坊だもの。彼は考え、
『あっ、もしかしたら、転生でスキルが取得できてるかもしれない!!元々のユニークスキルはこの体じゃ使えないしな。転移系のユニークスキルが有ればいいな』
クレアシオンはこのように考えているが、ユニークスキルには、先天的、後天的な物があり、先天的な物が数千人に一人であり、後天的な物は稀に取得することが出来るレベルである。また、称号や職業によって取得できることもある。
つまり、クレアシオンが新しくユニークスキルを取得出来ていても、それが今役に立つかは、別の問題だ。クレアシオンは僅かな希望をたくし、ユニークスキル【傲慢】の【自己支配】を発動する。
【大罪系スキル】は欲望のスキルと言われる所以は、【大罪】に当てはまる行為をしたとき、低確率もしくはその行為の度合いによって取得されるので、保有者によって効果が違う。【大罪】を犯す者は悪魔に多く、【大罪系スキル】を取得したら、即、魔王に昇格され、その魔王は、大体が厄介である。人間でも取得する事もあるが、取得条件により、かなり稀である。また、保有者の多くは似通った思考が多く、大体のスキル内容は同じだが、クレアシオンの【大罪系スキル】は大きく内容が違っていたりする。
クレアシオンの発動した【自己支配】により、自分のステータスを表示するが、転生の影響か、余り精度が良くない。
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名前 クレアシオン=ゼーレ=シュヴァーレン
種族 ヒューマン
職業 魔王
ユニークスキル 鬼神化 九尾化 魔王化 傲慢 強欲 暴食
神器召喚《ヴェーグ》《???》 創造
魔素支配 糖気闘乱 眷属創造✖5
神器創造✖7 臨戦態勢✖1
エクストラスキル なし
スキル なし
称号 女神の剣 甘党 遣糖使 武神の弟子 魔神の弟子
神殺し(悪神、邪神) 道化 偽りの魔王
傲慢の魔王 強欲の魔王 暴食の魔王 神殺し(悪神、邪神)の魔王 神域の魔物の支配者
創造神のお茶飲み友達 女神の婚約者 創造の魔王
勇者の保護者
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『……解決策を考えれば考えるほど、どうしようもなくなっていく不・思・議……』
クレアシオンはこの世の理不尽さを嘆いていた。何とかしようと努力しても、土坪に嵌まっていく……。どうしろと言うのだ!?と。
『職業、魔王って……。今まで称号魔王だったのに、いつの間に就職したんだよ!!魔法剣士が魔王にジョブチェンジしちゃったよ!!』
称号魔王から、本職魔王にレベルアップしたクレアシオン。称号になっている時点で大概だが、何故かわからずに混乱している。日頃の行いだろう。Gジェット事件なんか、彼の事を知っている者が聞くとそれほど驚かない。むしろ、邪神が生き残っている事――障壁により、クレアシオンは転生に力をもっていかれ、制限された攻撃しかできなかった。――に驚くだろう。
まあ、職業の魔王は、他にも原因が多々、多々あるのだが……。
それに、
『魔王に神が殺された世界に、魔王が、しかも、神殺しの魔王が……。絶対だめなやつだよ』
そう、神が殺された世界に神殺しの魔王を投入したらどうなるか、火を見るより明らかだろう。職業と称号が人様に見せられない物に仕上がっている。
おまけに、隠蔽スキルと鑑定スキルがなくなっていから、ステータスを隠蔽するとこも、新しいユニークスキルを確認する事もできない。隠蔽スキルも鑑定スキルもエクストラスキルなので、取得するのが難しい。今の状況を乗り切れても苦労することは目に見えている。
『……勇者と敵対しないか、これ?まあ、未来のことは未来の俺に任せよう。考えてもしかたがない。だって、赤ちゃんだもの、まだ先は長い』
『はぁ~、ユニークスキルの数もとんでもなくなっているな。……創造って、創造神しか使えないスキルだよな……?それに、眷属創造と神器創造って……』
創造神の【創造】は万物を創り出し、生物すら創り出す。世界を創造する力だ。一介の天使、特にクレアシオンみたいな奴が持ってはいけないスキルだ。彼は創造神のスキルのように無制限ではないだろう、そもそも、仕組みが違うはずだ。と考えた。
【眷属創造】は、【眷属製造】――邪神が一回だけ使うことのできるスキルで、眷属の魔王を製造し、眷属の魔王は殺しても3日で復活する――の類似だろうと、予測を建て、
【神器創造】は、【神器製造】――神の器であり、神の神格を作り出すスキルで神器は神一人につき、一つ――の類似だと考えて頭を痛めた。
『……神器創造。神器製造とどう違うのか?神器製造は鬼神化のせいだけど、神器創造はどっから来た?』
クレアシオンは【神器《ヴェーグ》】を作り出す時、鬼神化のお陰で取得した【神器製造】を使っていた。神器とは神の神格だ。そう簡単に、転生で取得したりできる訳がない。【眷属創造】も同じだ。
『【創造】……は、あの時、創造神様ああ言っていたけどまさかな……?』
クレアシオンは思い出していた。あれはある日、創造神とお茶を飲んでいた時、「はぁ~、仕事大変じゃの~、誰か後継者いないかの~」、とチラチラ見ていたのを……。
だが、直ぐに考え直す。そもそも、後継するタイミングが違う。下手をしたら、【創造】が邪神に奪われる。だから、違うだろう。
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