クライマックスは最大の試練

「うーん、だいぶ形になってきましたねー。後はクライマックスだけだ」

「お前が小説の主人公なら、ここいらで挫折や試練に遭遇するな」

「なんですか、突然」

「普通はここで試練があって、それを乗り越える話にするのが基本だな」

「いや。でも、僕の人生なんて試練ばっかりですよ」

「それはまだお前さんが本物の試練に遭遇してないからだ。そうだな、例えば俺がここで裏切って、この作品を先に完成、公開してしまうってのはどうだ? 面白いだろう」

「そ、壮絶ですね。止めてください」

「まあ、そんな事はしない。そんな事しなくても、試練は嫌でもやってくる」

「不吉な事、言わないでくださいよ」

「俺が手伝えるのはここまでなんだ。マスター前、つまり完成前の追い込みでな。別室に缶詰する。一ヶ月ほど戻れない」

「……そうなんですか。それは、仕方ないですね。確かに地味だけど、僕にとっては大きな試練だ……」

「ま、現実なんてそんなもんだ。がんばって完成させろよ。俺が戻るまで待ったりするな。一度足を止めると、また歩き出すのは大変だぞ」

「あ、はい。九条さんも、頑張ってください」

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