世界観
「世界観はどうするんだ? やっぱファンタジーか?」
「特にファンタジーに拘るつもりはないんですけどね。でもこの女性ばっかり出る設定に理由つけられないですかね」
「欲望から入るのかよ。まあちゃんと理由があればいいんだ」
「じゃあ、魔法で性別を自由に変えられるってのはどうですか。それなら女性ばっかりでも説明つきますよ」
「絵的に女ばっかりにする事は出来るけどな。ストーリー作れるか?」
「パラダイス路線で」
「魔法で女になってるだけだから、実際には男か女か分からないんだろ。そんな相手とくっついて楽しいのか?」
「うーん、そうですね」
「それに自分だって女になれるんだ。その世界に女性に対する興味が存在すると思えないな」
「うむむ、そうかー」
「そういう絵にしたいだけで男女間の掛け合いを捨てるんなら別にいいけどな」
「それは嫌ですねぇ。やっぱ本物の女の子出します」
「よし、じゃあまずキャラクターからだ。『キャラが立つ』とか言うだろう」
「言いますね」
「そこにホントにそんな人間がいるくらいの個性を持ったキャラクターを登場させる。それが出来てないと登場する人間みんな作者の性格のコピーみたいになっちまう」
「うう、そうですね。僕のを改めて見るとよく分かります」
「分かりやすく言えば多重人格になるんだ。自分の脳の一部に別の人間を作り出すんだよ」
「そんな事できるんですか?」
「言っとくが作家ならそれが出来て当然だぞ。それが出来て初めてスタートラインに立てると言っていい。そして個性あるキャラの中で一際目立つキャラなんかが出来ると、誰が見てもキャラが立ってるとか言われるようになる」
「ぼ、僕には無理ですよ」
「そんなことあるか。人間の脳はそれが出来るようになってる。まあ最初は難しい。だからまんまパクってくるんだ」
「パ、パクる?」
「どこぞの漫画のキャラクターの性格をまんま当てはめるんだよ。外見と性格をそれぞれ別のキャラから持ってくれば新しいキャラの出来上がりだ」
「そ、そんなんでいいんですか?」
「心配しなくてもキャラを動かしているうちに勝手に個性が出てくる。想像の中でキャラが勝手に動き始めたら一人前だ。キャラさえ立っていれば掛け合いなんて何も苦労しないぞ。キャラが勝手に喋ってんのをメモするだけの作業だからな」
「す、すごいですね。楽そうです」
「俺の場合は、外見より声のイメージを先に決めるな」
「ああ、声ですか。確かに掛け合いを想像するなら声イメージあった方がやりやすいですね」
「俺は声さえ決めればキャラは勝手に動きだす。キャラ達が自分でアドリブ入れてくれるんだ。たまに暴走するのが難点だけどな」
「本当かな……」
「そして個性を作る事が出来たら立ち位置を確立する。要は『ヒロイン』とかだ。だが俺は役割から考えるのは嫌いでな」
「そうなんですか?」
「正しくは役割を作らないんじゃない。役割なんてものはキャラがちゃんと作り込まれていれば自然と確立するものだと思ってる。キャラがヒロインの役に不足しているのに外堀から埋めていってヒロインに祭り上げると、どうしても無理やご都合主義感が出るんだな」
「でも、ヒロインになりきらなかったらどうなるんです?」
「それはそれで本人の実力だから仕方ない。そこでキャラの立ち位置がはっきりしないからと言ってはっきりと『ヒロインの誰々』と説明したり、なんでいきなりくっついたのかよく分からない展開にする事は解決にならないだろ」
「でも、ハッピーエンドじゃないとウケないんじゃないですか?」
「無理矢理ハッピーエンドにするために『実はずっと好きだった』とか都合よすぎだろ。ストーリーでも奇跡が起きたり、突然隠された力が目覚めたり、一体いつの間に用意したんだよ? という仕掛けを『こんな事もあろうかと』と出したりな」
「うーん、そうですね」
「繰り返し使ってそれを定番ネタみたいにするのはアリだけどな。今までなかったのがなんで急に? みたいな展開は白ける」
「そのストーリーの作り方とかってどうです? 本とかも読んでみたんですけど、起承転結とか要るんですよね」
「そんなもん参考にするな。お前さんくらいの頃は好きなように書きゃいいんだ」
「そうなんですか?」
「もちろん参考にしたっていい。でもよく分からないのに参考にしたっていいものにならないぞ。結局面白くなきゃ意味ないだろ。面白くもないのに『ちゃんとセオリー通りに書いてます』なんてのは言い訳にもならないぞ」
「確かにそうですね」
「元々ライトノベルは型を破る所から始まってるんだ。でも指標がないとやりにくいって言うならそうだな。ラストシーンを決めろ。結末だ」
「最後から決めるんですか?」
「そうだ。次は最初のシーン。最初と最後を決めれば後は間を繋ぐだけだ。それを前半後半に分け、更に第一幕、二幕と細分化していけば、各々の章でやるべき事も見えてくる。どこにクライマックスを持ってくればいいのかもな」
「なるほど」
「だがこれだとパターンにはまった物しかできないから、お前さんはもっと好きに書いていい。自分のスタイルに挑戦してみろ」
「はい」
「あとは冒頭だな。最初が面白くないと全体を読んでもらえない。これだけはどんな作品にも共通してる。どこの世界に冒頭だけ拙い文章になってる小説がある」
「確かにそうですね。そんな物あり得ない」
「そうだ。冒頭のクオリティは、全体のクオリティと言っていい。守るのはそのくらいだ。お前さんは若いんだから、王道なキャラ構成やセオリーに真っ向から立ち向かってほしいもんだ。そういう見えないパンチは当たるとデカい」
「いやあ、そこまでは」
「そうだな、多分失敗する」
「そんな……」
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