分からない世界
シナリオ作業を割り当てられたとは言え、須藤少年の所属は企画班である。
初めてのシナリオ担当という事もあり、分量も他のライターよりは少なく設定されている。
従って日々の企画業務も並行してこなさなくてはならない。今日はデザイナーの描いた絵を回収にデザイン班を訪ねていた。
デザイナーは他の職種よりも女性比率が高い。座席表から場所を調べて訪れた席に座っているのも女性だ。
「じゃ、出来た絵は完了フォルダーにアップしといたんで、後はよろしくお願いします。次は『夜の公園』の画像、予定は一六日ですよね」
「はい、そうですね。では次のスケジュールに割り当てておきます。……あの、ところで」
「はい?」
「藤河さんって幾つなんですか?」
「何? あんた、死にたいの?」
「あ、いや。実は今度ヒロインのシナリオ書く事になったんで、えー今時の女の子の普段の行動とか、どんなのか取材できないかなーなんて」
「私はあんまり参考にならないと思うけど」
確かに机に並べられているのは、ゲームかアニメのフィギュア。黒い翼を広げた若い男性だとか、巨大な十字架を担いだスーツの男。少年には全く理解できない世界だ。
それにこのデザイナーは見た目は若いが二十代後半か、下手をすると三十歳だろう。参考になるとは思えない。
会社にいる女性はどんなに若くても二十代半ば。十代の子はさすがにいない。
「うーん、仕方ないか」
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