労働須藤戦記

前章

プロローグ

 ここはファンタジー世界。

 剣と魔法と、モンスターが横行する世界。そして世界は魔王に支配されていた。

 世界を暗黒に染めようとする魔王を倒すために、一人の勇者が立ち上がった。

 勇者は魔王が居を構えるという城のある山を見据え、その山の麓に位置する酒場のドアを開けた。


 余所者の突然の来訪に、ざわついていた酒場は一瞬静まり返り、すぐにひそひそという話し声に変わる。

 軽く中を見渡すと魔法使いの女の子と目が合った。金髪で青い目、小柄ながら出る所が出ている。俺を見て愛らしく笑う。

 カウンター席で酒を飲んでいる盗賊風の女は、俺を値踏みするように睨みつけているが、頬がほんのりと赤い。それが酒によるものなのか、俺に対しての興味からなのかは分からない。

 その他にも数多の女の視線が突き刺さる中、悠々と歩いてテーブルに着く。

 小さなウェイトレスが注文を取りに来たので、軽い魚料理とワインを注文した。


 ぎぎっと木製のテーブルが軋む。音のした方を見ると柔らかいヒップがテーブルに乗り、スリットからは白い肌が覗いていた。

 視線を上に移すと、そこにはたわわに実った果実が柔らかく揺れている。面積の少ない衣服から今にも零れ落ちそうだ。

 女は飲みかけのワインの入ったグラスをテーブルに置き、俺の前へスライドさせた。前傾姿勢になり、胸の谷間がより強調される。


「ねえ、冒険者さん。私をパーティに入れてくれない?」


 俺はワインを手に取ると、ふっと微かに笑って言った。

「好きにしろ」



 そこまで読んだ所で編集者は顔を上げる。

「……え、と。面白そうだね。後でじっくり読ませてもらうよ」

「はい! お願いします」


 元気よく返事をした少年は、持ち込んだ原稿を預けて「羅述出版」を後にする。

 出版社から出た少年は建物を見上げ、いずれこういう場で働ける事を期待しながら意気揚々と歩きだした。


 そして三日後。届いたメールの文面を見ながら嘆く。


『厳正なる審査の結果……』


 今朝までの気分とは正反対に意気消沈して、今日からアルバイトをする事になっている会社に向かった。

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