ゲームのお仕事

九里方 兼人

ゲームのお仕事

イントロダクション(まえがき)

 ゲーム会社に就職して数年目、主にプログラムをやっていたが、ある時アイデア募集があったので企画書を書いてみた。

 それは通って製作が始まる。


 アニメ原作の人型の決戦兵器がシミュレーターで射撃をするミニゲーム。


 ちっぽけだが登場人物の台詞が必要になるので、そこは原作者である監督に作ってもらわねばならない。

 制作担当の指導に従い、監督にどんな台詞が必要なのか資料を作り、

「これでお願いします」

 と提出。


 数週間後、制作担当を介して連絡。

「監督今最終話で忙しいから、もうお前書け。書いておかしい所を直してもらえ」

「分かりました!」

 と元気よく返事。

 現在放送済みの話を全て見て台詞をリストアップ。登場人物のクセを分析してアフレコ台本を作成。

「これでお願いします」

 と提出。

 数日後いかがなもんでしょうか、と聞いてみると。

「見てるヒマなかったから、もうアフレコ現場で直接直すわ」

「分かりました!」

 と元気よく返事。


 そして数日後、アフレコ当日の朝。監督から直接電話がかかってくる。

「ごめん、行けない」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ! それはムリ! そこまではムリです! 右も左も分かりませんて! 僕一人でどうすりゃいいんですか!」

 アフレコ現場には音響監督が別にいるから、彼の指示に従っていればよい、と本部長についてきてもらい。アフレコ現場へ。


 そしていきなり監督席に座らされる二十歳そこそこの若造。

 ガラスの向こうでは、監督ノーチェックの自分の書いた台本を、

 元セーラー戦士や、今や麦わらの一味となる声優さんが読んでるわけで、

 いいのか? いいのか? こんなんで、と挙動不審になるも収録は容赦なく進む。

「じゃ一回流します。………………どうですか? 今の」

「いや、あの。戦闘シーンなんで、もっとせわしいと言うか、忙しいというか、もっと急いでる感じでお願いしたいんですが」

 ダメ出しなんてしていいのか!? と思うも尺が合わなければ実際使い物にならないのでこっちも必死。

「もっと巻いていいそうですー」

 一言!?

 僕の長い説明が……。

 でもああ言えばいいのか、と勉強になりながら無事収録は終わる。


 後に麦わらの一味になる人は当時まだ駆け出しだったので、僕なんぞにもわざわざ挨拶に来てくれる。

 小規模だけど、こちらも一応ゲーム版の監督。

 元セーラー戦士の方はツンとしたもので、やっぱ売れっ子は違うんだなーと思っていたが、後で聞いたら「あれはただの人見知りだから」と言われる。


 そして数日後、デモテープが届き。

 自分の書いた物が台詞として上がってきた物を聞きながら、

 緊張や焦燥よりも、ドキドキや嬉しさが込み上がってくるのを感じて、

「ああ、自分はこの世界で大丈夫なんだろうな」

 と自覚したのを今でも覚えている。


 おかしなものは作らなかったし、初めてでやりきった実績も認められ、その後もいくつかはシナリオ込みでやる事が多くなった。

 気が付いたら作家になっていた、そんな事が未だに起こったりするゲーム業界。


 そんな業界も、どちらかと言うと大変な事の方が多いもので、

 内情なんかはあんまり面白くない話だったりもするんですが、

 エピソードをいくつかしたため、それらの楽しい部分をいかに伝えられるかを試みたら、

 はたしてそれはどんな話になるんだろう……。


                              九里方 兼人

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