第1話
ん…む。いやー。今日は変な夢を見たなー。学校に拳銃もちのあっさんが現れてソイツに殺された挙句異世界に勇者として転生とか、夢以外の何物でもないよな!うん!きっと目を開けたら自分の部屋の天井が見えるはず!
開けるぞ!目を!開けるぞ!
目の前には森が広がっていた。
…………………。うん。まぁこれはいいよ。ある程度覚悟してたし。あれが夢じゃなかったってだけの話だもんね。でもさ、でもさぁ…
「なんで転生したら人気のない森にいるんだよ!仮にも勇者なんだったら親いるだろ!人間だもんな!」
今視界にあるものって言ったら岩と木と木と木と手のひらサイズの石石石!あと苔!あ、なんか白い石が大福に見えてきた。
「それはあなたが人間でも勇者でもないからですよ、マスター。」
「あ、そうなのかー。説明ありがと。」
ん?まていまどっから声がした?いや、内容もすごいけどとりま人がいるなら友達にならないと。作れたためしないけどな!はっはっは☆
「私はここですよ。マスター。」
またどこからか声がする。だがしかし、周りを見回してみても人はいない。
まるで直接脳に言葉が流れ込んでくるような―――
「こいつっ、直接脳内にっ!?」
「…私はあなたの頭の上にいますよ。」
「あ、ほんまや。」
声の言う通り頭の上に何か乗っている。手のひらほどの大きさで程よいもちっとした弾力をもつ白いソレはっ!
「饅頭?」
「失礼ですよ!私には名前こそありませんがそんな名前じゃないはずです!もっとちゃんとした名前を付けてください!」
え、名前?んー。んー…
「じゃあ大福で」
「それもいやですー!真面目に考えてますかあなた!?」
だって急にしゃべる大福に名前つけろとか言われたらおいしそうなものしか出てこないっしょ。
「えー、じゃあ…」
大福って言ったら…あー、じゃあ
「お前の名前アンな。異議は認めない。めんどくさい。」
「またあなたは…まぁいいです。その名前で満足してあげますよ。」
なんで俺のことマスターとか言ってたくせにこんな態度でけぇんだよコイツ。
「あ、そうですそうです。説明しなきゃいけないんでした。」
大福、もといアンはそういうと俺が今置かれている状況についてざっくり説明してくれた。
まとめると、俺は勇者ではなく魔王として転生した。故に親はいないので、ここで生まれたのち10年ほど大気中の微精霊を吸収してすくすくと育ち、先程ようやく目覚めた、と。
「ふむふむ。ん?じゃあ2人…あー、親友だった奴らもそんな感じなのか?」
「いえ、彼らは勇者としてですのできちんと両親がいますよ。今頃友達と遊んでるんじゃないですかね。」
え、ってことは…
「俺ボッチ?1人だけ魔王?親もいなけりゃ友達もいないの?」
「はい。その通りです。」
俺は転生してもボッチで負け組なのか…
「え、待ってください。なんで泣きそうになっているんですか!?いや!ほらあれですよ!その代わりに私がいるんですよ!最上位精霊の私がね☆」
…えー。友達のほうがいいー。何が悲しくて大福と友達にならなくちゃいけないんだよ。それこそボッチだよ。
「あー!今絶対失礼なこと考えてますよね!何が不満なんですか!それに神様もかわいそうだと思って普通1つしかもらえない祝福を2つくれたんですよ!」
「あ、それだよそれ。俺どんな能力もらったの?エクスカリバーとかドラゴンの使役能力とかそういうのがいいんだけど。」
こいよ!きてくれよぶっ壊れ性能のチート能力!唸れ俺のガチャ運!!!
「えっと、マスターに授けられた能力はですね調味料・食材を生み出す能力と、無機物を操作する力ですね。あとは私の能力である
………これはあれだね。
「あ、あんまり強い能力じゃないですがどうか気を落とさないで下さ―――」
「神引きキター――!!!!」
「…え?」
「大当たりだろ!この能力!だって…」
調味料、食材があって、無機物の操作で器具がそろうなら…
「この世界でも思う存分スイーツが食べれるってことじゃねぇか!」
「え、え、でも戦闘の役に立たないですよ?」
はぁ?何を言っているんだコイツは?
「お前戦闘とかそんなことより甘いもののほうが大切に決まってんだろ。」
「……。あえて何も言わないです…。」
早速やってみたいところ…だけど…
「なぁ、ぶっちゃけ俺の戦闘能力ってどれくらいなの?やっぱ弱いん?」
俺がそう聞くと、
「あ、いえ単純な能力値だと勇者が5人分くらいですね。腐っても魔王なので、勇者がPT組んでぎりぎり勝てるくらいです。覚えれば魔法も使えますしね。」
え、ってことは…
「勇者、もといもとクラスメイトと仲良くなっちゃえばこっちのもの?」
「一応敵なんですけど…まぁそうなりますね。」
これは…あれだな。あれを聞くしかないな。
「食材・調味料の合成ってどんなものでも出せんの?」
「美食家の
少し恥ずかしそうにアンが説明してくれる。てかその能力そんな名前だったんだな。そりゃ恥ずかしくもなるよな。
「よし、俺は決めたぞ。アン。」
「は、何をですか?」
ふっふっふ。俺がこの世界でやること…それは…
「俺はこの世界のおいしいものを求めて旅をする!」
「……………へ?」
おいおいアンさんよ。何を疑問に満ちた返答をしてるんだ?
「まぁこれはもう決定事項だから。揺るがないから。」
「魔王城は?建てないのですか?」
「お城で腹が膨れるか?」
「で、では勇者の撃退は?」
「食べれないものわざわざ殺さねぇよ。」
「じゃ、じゃあ元の世界に戻りたいとか…!」
「ないない。どっちの世界でもいいわ。甘いもの食えんなら。」
はっはっは!もはや何も言い返せないようだな!
「さて、じゃあまずはご飯にしようか。」
「はぁ…もういいですよそれで。」
じゃあまずは道具が必要だな。ん、でも無機物の操作ってどうやんだろ。
「無機物の操作ってどーやるのー?教えて!グー〇ルせんせーい!」
「私はアンです!そんな名前じゃないのです!」
コイツ…偉大な大先生の名前をコイツ呼ばわりしやがった!あのお方の偉大さを分かっていないよだな…。
「まぁいいです。正式な名前は無機物操作ですね。これは…動かしたいものに間接的にでいいので触れ、指の神経を伸ばしていくイメージでできるみたいですね。」
こっちはそのまんまなんだな。名前。で?なんかすごい難易度高くない?やってみるけどさ…
んー…とりあえず地面に手つけて…あ、あー。うん。説明しづらいわこれは。なんかね、地面全体、神経を伸ばしているところが全部手のひらみたいな感じ。石とかあればなんかあるなーって感じるし。あー、じゃあ…頑張ってみますか。
えとね、15分くらいやってみて段々感覚がつかめてきたよ。なんとなくではあるけどね。なんて言ったらいいんだろうか。素材の違いが鮮明になってきた…的な。
っと。お目当てのものがありましたよ~♪じゃあこれを集めて…不純物を取り除いて…
「よし、できた!」
「?何ができたんです?」
ふっふっふ。聞いて驚くな…これは!なんとだな!
「これはな…鉄の塊だ!」
そう、俺は無機物操作を使用して地中から鉱脈を探して、純度の高い鉄を集めていたのだー!
「で?その鉄で何をするんです?」
おうおう、ずいぶんと冷めた感想じゃぁないか。これがあればだな…
「網を作って肉を焼く!」
「…。木の枝なりなんなりで刺して焼いたらよかったのでは?」
……。その手があったかァァァァ!い、いや網で焼くからおいしいんだし。あの、ほら。網じゃないと出ない味があるんだよきっとぉぉ!
「と、とにかく火をおこ…し…。なぁ。火魔法とかないの?」
「私は水の精霊です。火魔法は分野外です。」
この後どうしたのかって?もちろん木の枝と木の板っぽいの拾ってきて必死にこすって火を起こしたよこんちくしょう!
「はぁ…はぁ…ようやくついた…」
「お疲れ様です。さ、早くお肉を焼いて食べましょう。」
アンが嬉しそうにそう言う。ちょいまち、いやそもそもさ。
「お前って食べ物食べるん?」
「ッ!失礼な!私だって食べますよ!今はスライムを模しているので味もわかりますしね!口はありませんから直接取り込みますけど!」
文字通り全身で味わうってか。じゃあ二人分焼くか。
…。やべぇ美食家の夢ってどうやって使うんだろ。イメージすればいいのか?
むむむむむ…お肉お肉…松阪牛のサーロインステーキ用の肉…出てこーい…
お、おお?おお!目の前になんか四次元につながってそうな黒い穴が出てきた!…で?どうしろと?
「マスター。そ穴に手を入れれば思い描いた食材が出てきますよ。」
おー!そうなのか!え、ってことは手でつかむのか…ま、まぁ料理するときとか触るしダイジョブか。
「おー!これはまさしく牛肉!ステーキ肉!超おいしそう!」
穴に手を入れると中に冷たい感触があり、それをつかんで引き抜くと無事肉が現れた。
あ、ついでに塩コショウも出しとこ。
はい、まずはお肉を焚火の上に固定してある網の上に置きまーす。塩コショウを振って、いい感じに焼けるまで待ちまーす。
~5分後~
もういいっしょ!いい匂いしてるし!
「……。(じー)」
アンもすごい見てるしな。
ではでは、さっき採った鉄でお皿を作って~、お肉をさらに移して~…
「いっただっきま――」
――う゛おォォォォォォォォ!
雄たけびを上げて額に角の生えた巨大熊が現れた!
…食事はまだ先になりそうです(泣)
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