勇者になれなかったボッチ魔王の異世界スイーツ紀行
@kuroko7523
第0話 -転生-
……。……!。お…!。おい!……。おき…って!
「…お昼ご飯のぽっきー分けてやるぞ(ぼそっ)」
「マジで!ポッキー!ポッキーどこ!」
「甘いものに反応して音速で起きるなや!」
「あははw、アマっちは昔っから甘いものに目がないもんねー。」
「…ちっ、わかったよー今度から気を付けるよー(棒)。はよ、ぽっきーはよ。」
いやー、よく寝たよく寝た。
今日は2時間目の古典の授業までの記憶はあるけどそれ以降の記憶が全くないんだよなー。12時半までの2時間の記憶はどこへ行ったんだろーなー(棒)。
「ほんと気持ちよさそうに寝るよな、お前。そしてなぜか先生には気づかれないっていうな。マジもうポッキーあげないわ。」
「それは、ほら。高校から影薄い系男子目指してる身としては当然のことなのだよ、下田クン。」
俺の前の席に座ってるこいつは下田 優斗(しもだ ゆうと)。まぁ、うん。なんだ、小さいころからの腐れ縁で、女子にモテる奴だ。…いいよ。俺には甘いものさえあれば…。
「…ぐすん。」
「おあぁっ!?なんで泣きそうになってんのお前!そんなにポッキーが食べたいのか!?ほ、ほらやるよ。」
ぱくっ。ぽりぽりぽり。じー。
すっ…。ぱくっ。ぽりぽりぽり。じー。
…。…。…すっ。ぱくっ。ぽりぽりぽり。
「いやお前はリスか何かか!?食いすぎだゴラァ!」
「うるさいぞモテ男。お前みたいなイケメンは爆死するかポッキー貢げ。」
「アマっちアマっち。はい。」
ぱくっ。ぽりぽりぽり。
「いやなに勝手にあげてんだ美甘!この動物には餌をあげないでください!って標識たてるぞ!」
「だってなんか小動物みたいでかわいいじゃん~♪机に突っ伏して顔だけあげてポッキーぽりぽりとか見ててほっこりするよ?」
この頭のねじが2,3本吹き飛んでるようなふわふわした女子は佐藤 美甘(さとう みかん)。優斗と3人で昔からつるんでる仲だ。こいつも美形で、モテる。ファンクラブまであるらしいしな。
「やめとけってみかん。俺みたいな暗ーい好かれない系男子がお前みたいな美人からぽっきー食べさせてもらうとかファンクラブにシバかれる。」
「そーかなー。鮴宗(ごりむね)君たちいい人だよー?おかしくれるし、荷物もってくれるし。」
…ファンクラブの会長そんな名前だったんだ。すごいな。ごりむね君。
「さて、糖分も吸収できたことだしもう一回寝よーっと。」
「おい、まだ寝るつもりか?昼休みあと10分しかねぇぞ?」
と優斗が時計を見ていう。あれだよね。普通だったら、ありがとー。で済むけど相手がイケメンだとイラっと来るよね。
「イケメンが目の毒なのでやっぱり寝るわ。」
「あはは~、ゆー君イケメンだって~。」
「からかうなよ!俺はイケメンじゃねぇ!」
うわ、こともあろうか否定しやがったよ。これは俺に対する侮辱だよな?侮辱だな。うん。侮辱以外の何物でもないな。
「じゃぁそういうことだから一発デコピンさせろゆーと。」
「はぁ!?何がどういうわけだよ!てかお前のデコピンとか冗談抜きに痛いんだって!やめ――」
「慈悲はないッ!」
バァンッ!
優斗のにっくきイケメン面に渾身のデコピンを放とうとした時、教室前方のドアからそんな音が聞こえた。
「てめぇら!死にたくなかったら動くんじゃねぇぞ!」
大きな音を立てて開かれたドアの前には、拳銃を持った男が立っていた。
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「(…なぁゆーと、どうするよこの状況。)」
「(どうもこうもねぇだろ!拳銃持ったキチガイが教室入ってきて警察に金とヘリを要求してんだぞ?俺らができんのは特殊部隊待つことだけだろ。)」
デコピンをし損ねた場面から、時は流れ、今は1時になろうかという時間だ。教室にいきなり入ってきて脅しに一発天井に撃つんだもんなー…。そりゃ逃げる気も起きないよね。
うん。でもこの状況どうにかしないとなー。だめなんだろーなー。眠いし。
「ねぇ!もう許して!おうちにかえしてよぉぉぉ!私が何したっていうの!?」
あ、時すでにお寿司。一人限界を迎えちゃったか。あれは…同じクラスで付き合ってるパリピなカップルの片割れだな。美形は死すべし、慈悲はない。
「騒ぐんじゃねぇ!言ったろ!騒いだら殺すってなァ!ここでオマエに見せしめになってもらおうかァ!?」
ま、きっとパリピな彼氏が〝俺がかわりに死ぬ!″とか言い出して解決するだろーさ。
………。あれ?パリ彼さーん?うわぁ…縮こまって震えてるよ。あー、じゃぁここはきっと我らのイケメン優斗君が颯爽と現れて、ね!
あれ?どした?優斗ちょっと様子へんじゃね?
うっわ、冷や汗びっしょりかいて固まっていらっしゃる。あ…まぁ「あんなこと」があったんだ、拳銃怖いのも仕方ないか。
「おいピーピーうるせぇガキ!さっさと壁際に立ちな!眉間に風穴開けて、俺に逆らったらどうなるか叩き込んでやるよ!」
はぁ…誰もいかんのか?死んじゃうぞー。あの男目がイってるから多分何の躊躇もなく殺るぞ?
「(アマっち、ゆーくん。私あの女の子助けてくるわ。)」
…ん?今なんて?
「(今まで長い間ありがとね。二人とも大好きだよ。じゃ、また来世で会おう。)」
いやいやいやいや!ちょい待て!は?みかんがかわりに死ぬ?…はぁ?
「おっさん。俺が身代わりになろう。」
あーあ。言っちゃったよ。柄にもないことして…ほんと馬鹿だな。俺。
「ま、まぁ見せしめになればだれでもいいなァ!じゃあお前こっちにこい。」
「あ、最後に遺言言っていいっすか?」
「あぁ?…まぁ俺も人間だ。それくらい許してやらァ。」
おっ、意外といい人かもこのおっさん。
「ねぇちょっと!なに言ってんのアマっち!やだよ!アマッちがいなくなるなんてヤダ!」
「そ、そうだてめぇ!なに抜かしてやがる!俺はもう誰も失いたくないん――」
はぁ…
「最後ぐらいかっこつけさせろや天然美人にイケメン野郎。いいんだよ、俺は。お前らみたいに顔もよくないしな。あ、そだお前らお墓には甘いものを供えてくれると嬉しいな。じゃあ…仲よくしろよ、最高の親友たち。また来世で会おうぜ。」
「もういいか?じゃあそこに立て。そうそう、そこらへんでいい。」
あー、俺死ぬのか。やばいな。銃口向けられるのってこんな怖いんだ。FPSとか来世で絶対できないなこりゃ。あー。死ぬのか。まぁ、いい人生だった…とはいいがたいけどいい友達と甘いものに恵まれた人生だったな…。
「じゃあ…サヨナラだ!」
―――――――――。
あれ?撃たないのかな。ジャムった?いや、怖くて目つむってて今なにも見えないとかそういうわけじゃないんだよ?断じてないんだよ?若干ちびりそうだけど、断じてそんなわけじゃないんだよ?
意を決して、そっと目開けるとそこは…白く何もない空間だった。
え?馬鹿にしてんのかって?いやマジなんだよ。なんもねぇの。真っっっっしろ!床はあるけど天井も壁もねぇの。ちょっと怖いわ。なんで俺死んだと思ったらこんななんもないとこにいるの?
「いやー、なんもねぇな。」
「あ、神がいますけどそれ以外は何にもないですよ?」
「あ、そうなんですかー。ご親切にどうもー。」
ん?んん?んんん?
「おっちゃん、誰?」
「ん?儂?神じゃよ。」
これはもしや…
「異世界転生というものか!」
「うん、大当たり。超強い能力あげるから選んでね。」
…。ふざけて答えた回答が大当たりすると恥ずかしいよね。
「ふむふむ。つまり、とある世界で圧倒的な力を持った存在が複数同時に消えてたと。で世界のパワーバランスが危うくなって、ほかの世界にまで影響が及びそうだから、手っ取り早く手ごろな世界で丁度良く死んだ人を、強くしてその世界に放り込んじまおう。って話?」
「うむ、その通り。」
「なるほどねー…あ、そだ。あいつらはどうなった?美甘と優斗。」
気になってたんだよ。あんだけかっこつけてきたんだから死んでたらぶっ殺す。
「あの二人はのぉ、クラスの皆と協力してなんとかイカレ野郎を倒したのじゃよ。」
「おぉ!やるじゃねぇかあいつら!」
俺の屍を越えてゆけ!的な!いやー、無駄死にになってなくて一安心だぜ。
「そこまでは良かったんじゃが、男が自爆用に手りゅう弾を隠し持っていての。巻き添えになってあの二人含め5人が死んでしまったんじゃよ。」
「あいつらぶっ殺す。」
「まぁ安心したまえ。その2人も異世界に転生してもらうことになっておる。勇者としての。」
おー、一安心。ん?いや死んでんじゃねーよ!まぁでもいいか…あいつら顔いいし勇者でもやっていけんだろ。
「他の3人も勇者としてすでに転生を終えておる。あとはお前さんだけなんじゃよ。早く能力選んでくれんかのー。晩酌する時間が無くなるでの。」
正直だなじーさん。でも能力かー…きっとチートなんだろーな!どんなのがあるかなー、勇者だもんなー。エクスカリバーとかほしいよね。
「まぁ選ぶといってもランダムだがの。ふぉっふぉっふぉ。」
「ランダムかよっ!まぁ俺の優柔不断なんでよかったっす。じゃあちゃちゃっと転生お願いしますね~。」
期待して損したわ!
と、神が俺の額へ手のひらを当てる。
「汝の魂が新たな世界にて祝福を受けんことを望む。さぁ天川 桃梨(あまかわ とうり)よ、当たらな世界へいざ羽ばたくのだ!」
あ、自己紹介遅れました。おれの名前は神様が言った通り天川っていいます。
「そなたに神の加護があらんことを~。」
その神の言葉を最後に、俺の意識は闇に沈んでいった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
優斗の圧倒的主人公オーラ。もう優斗が主人公で良い気がする。
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