キタキツネ「ギンギツネ、ゲーム作って」ギンギツネ「えっ!?」

こんぶ煮たらこ

キタキツネ「ギンギツネ、ゲーム作って」ギンギツネ「えっ!?」

それはまだかばん達と別れて日も浅い時の事。

いつものようにゲームに夢中になってるキタキツネはいつものように突拍子もない事を言った。



「だってギンギツネは発明が得意だって、この前見たこうりゃくぼんに書いてあったから…」

「あなたまた訳の分からない事を言って…」

「だってもうこれ飽きたんだよー」

「飽きたならやらなければいいでしょ」



全く四六時中ゲームばっかり…。そんなにゲームばっかりやってると運動不足になって目も悪くなっちゃうんだから…と、とびっきりの長いお説教をしてやろうと思ったがそう言えばこれ昨日も言ったわね…。



「うぅ…そんな事言ってギンギツネだってよく僕がゲームやってるの横から見てるじゃん」

「まぁ私はやるより見てる方が楽しいしね」

「本当はギンギツネだってそろそろ飽きてきて本当は新しいゲームが見たいんじゃないの?」

「う、それは…」



画面を見るとゲームクリア!の文字。確かにこのゲームもう何回クリアしたのかしら…。流石にこのえんどろーる?とかいうのも見飽きてきたわね。



「ねぇ… お願い…ゲーム作って」



やめて。お願いだからそのうるうるした瞳をこっちに向けないで。

こうなったらもうあの子のターン。私には逆らう術などない。



「はぁ…分かったわよ。今度博士達に聞いてみるわ」

「…ほんと!?うわーい!ギンギツネだーいすき!!」

「ちょっ…こら抱きつかないの」













翌日


「じゃあこれから博士達の所に行ってくるからお留守番お願いね」

「はーい(よし…これで今日からゲームやり放題だ…!)」

「あっ、言い忘れてたんだけど」

「!?どうしたの…?」

「私がいないからってゲームは一日一時間よ…?」

「うっ…はぁ~い…」



やはり釘を刺しておいて正解だったわね。

しかし聞いてくるとは言ってみたものの本当にあんなもの作れるのかしら…。

あそこにあるゲームだって元から置いてあったものだし操作方法すら私にはちんぷんかんぷんだわ。

いやでも可愛いキタキツネの為…ってそんなんじゃないんだから!



「ほぉ…これがツンデレというやつですか博士」

「ツンデレというやつなのです助手」

「うわっ!?びっくりした!あなた達いつの間に…」



後ろを振り向くとそこにはアフリカオオコノハズクの博士とワシミミズクの助手がいた。

どうやらあれやこれやと思案しているうちに気が付いたら図書館の前まで来ていたようね。


「我々音を立てずに飛ぶなど朝飯前なのです」

「それで今日はどうしたのですか」

「えーと、今日はゲームの作り方を聞きにきたのだけれど」

「ゲーム、ですか」




博士の表情が心なしか曇った気がした。




「えぇ。何か知らないかしら」

「博士…これは流石に…」

「そうですね…。いいでしょう教えてあげるのです」

「!?」

「本当に!?ありがとう!!」



良かった!これでキタキツネも喜んでくれそうね。いやまだ作れると決まった訳じゃないけれど。

それに博士達はさっきから何かコソコソ話しているし…大丈夫かしら。



「(待つのです博士…ゲームの作り方なんて知っているのですか?)」

「(勿論知らないのです。)」

「(えぇ~…)」

「(でもここで頑張ってギンギツネを説得すればもしかするとまたあの料理を食べられる事が出来るかもしれないのです)」

「(ギンギツネは確かに我々フレンズの中では賢い方ですが…大丈夫でしょうか…)」

「(心配しなくても大丈夫なのです。ゲームの作り方など適当に誤魔化せばよいのです)」

「(不安しかない)」



「じゃあ早速作り方を…」

「ただし!!教えてほしくば料理を作るのです!!」

「えっ!?料理!?」



それって前にかばん達から聞いたかれー?とかいうものの事かしら?でも私料理なんて作り方知らないし…。



「料理も出来ないようじゃゲームを作るなど到底不可能なのです!いわばこれはゲームを作れるかどうか見極める為の試練。分かったらさっさと料理を作るのです」



くっ…何か物凄く良いように言い包められてる気がするけど仕方ないわね…。



「分かったわ!」

「よしきたです。では早速始めなのです」

「材料や道具はそこに揃っているものを使うと良いのです」



う~ん…とは言ったものの何をどうすればいいのかしら…。

机の上には野菜や果物、それと料理に使うであろう道具が所狭しと並んでいる。

前かばん達は本を読んで料理を作ったと言っていたけれどちょっとこれは難しいわね…。



「しかし本当に大丈夫でしょうか。恐らくギンギツネは火を扱えないのでは…?」

「な~に火を使わなくても美味しい料理は作れるのです。じゅるり…」

「(…博士は完全に目先の欲に目が眩んでいるのです…)」



引き受けたはいいもののいざ現物を目の前にすると何も出来ない。

早くも安請け合いした自分を恨みそうになるわね。

…あら?これは何かしら。少し大きめのコップとその下にはボタンが二つ…どうやらこれ上のコップを取り外せる構造らしいわね。このボタンは…



ポチッ  キュイーン!


「うわっ!?回った!?」




「どうやらミキサーを使うようですね…。あれではあまり大した料理は期待出来ないのでは…?」

「いいのです。自分の手を煩わせずに食べる料理こそ至高の味なのです。じゅるり…」

「(あぁ…博士がどんどん駄目フクロウに…)」



危ないわねこれ完全に凶器じゃないの…。全く博士達は何考えて…ん?

その時私はある事を閃いた。

「これってもしかしてこの中に食材を入れたら…」







数分後


「…よし、出来たわ!!」

「随分と早かったですね」

「じゃーん!これよ!名付けてベジタベールZZ!!」

「うっ…!?これは…」



「(博士。これは明らかに危険です。やばいのです。)」

「(おおお落ち着くのです助手。食材からして流石に命の危険までは…じゅるり)」

「(博士!?何故そこでよだれを垂らすのです!これは明らかに料理と呼べる色ではないのです!何ですかこのサンドスターのような色は…!!)」



ふふ…どうやらあまりの会心の出来に博士達も驚いているようね。

それもそうよ、なんてったってこれはありとあらゆる新鮮な野菜と果物だけを惜しみなく(というか全部だけど)使った栄養満点のドリンクなんだから!

ただちょっとうちの温泉みたいな匂いがするけど…まぁ温泉だって飲んでも平気だし大丈夫よね。



「どうしたの?鮮度の落ちないうちに召し上がって」


「(博士…ここは素直に白状した方が…)」

「助手…博士はいくのです。」

「えっ…?」

「そこに料理がある限り、博士の知的探究心は揺るがないのです…!!」



ゴクッ















バターン


「博士ー!?」


えっ!?大変、博士が倒れちゃった!



「…よくも博士を…」



あれ…?これってもしかして…。


「…ロです」

「えっ…?」

「…テロです!これは飯テロなのです!お前なんか出て行くのです!!」

「きゃー!!ごめんなさーい!!」

















追い出されるように図書館を後にした私。

結局ゲームの作り方も聞けず徒労に終わってしまった。

あとに残ったのは罪悪感とさっき作ったこのベジタベールZZ…。



「あれ?逃げるのに夢中で気が付かなかったけどこれ持ってきちゃった…」



ボトルになみなみと注がれた虹色の液体。

何かさっきよりも刺激臭が強くなってる気がするけど確かにこれは見ているとどんな味なのか知的好奇心をくすぐられるわね…。


「…」



「ちょっとだけ味見を…………○☓■◎△★~~!?!?」

























「…ギンギツネ遅いなぁ…。よし、もう一回ゲームしよ」

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キタキツネ「ギンギツネ、ゲーム作って」ギンギツネ「えっ!?」 こんぶ煮たらこ @konbu_ni_tarako

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