第2話

農場の中はやけに奇妙なほど蒸し暑くとにかく雑草を抜いたり畑を耕すので一日が終わる。

午後の休憩が終わって最後の仕事に取り掛かる時ケイの体力はもう限界に近い。

足が痛み、手には豆がたくさんあるがもう硬くなっている。

ふと隣を見ると同じ小屋に住むカイトがいた。

カイトは細身でよく農場の経営者から注意を受けている。

彼の華奢な体躯にはこの農場の仕事は厳しい。

オレンジ色の夕日がその日の仕事の終わりの合図だ。

朝太陽が昇る頃に目覚め太陽が沈むころに仕事が終わる。

夜の前に夕食の準備を行う。

「なぁカイト」とケイは話しかけた。

「なんだよ?」ぶっきらぼうにカイトは返事をする。

農場でとれた野菜や鶏を使ってスープを作っていた。

年上の従業員は彼らの仕事ぶりを見ながら酒を飲んでいる。

スープを煮込みながら二人はやけに話に夢中になる。

「俺には夢があるんだ。いつか農場を出て俺は街で会社を経営したい」

「いったい何を売るんだ?」

「本を売るんだよ。海外の作家の本を訳すんだ」

「それで?」

「必要なだけ外国語ができる従業員を雇ってそれで会社を経営する」

カイトはそんな風に話すケイをさも不思議そうに見ていた。

「結局仕事の量でしか従業員はいらないんじゃないか? もし簡便に本が作れるならそれだけで十分に働いた以上の金が手に入る。俺は別に立派な建物を借りるつもりはない。ただ普通の大きさの建物で従業員に働いてもらうんだ」

「それで?」とケイは言った。

「つまりこの世界の価値観が自分の価値観とぴったり合うんだよ。それって奇妙だろ」

二人はスープを作った後、従業員に配膳を行った。

今日の夕食はパンと鶏肉のスープだった。

ワインを飲みながら二人は食事にありついた。

いつもそうだが働いた後の酒と食事は格別だ。こんなにも食事がおいしいのは厳しい環境で生きているからかもしれない。

空が青く暗く染まる。夕暮れの太陽は見る影もない。

二人でもくもくと小屋に帰る時の景色がこんなにも美しいのも奇妙だ。

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