短編集3

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第1話

暖炉の薪が燃える

きてぃーは暖炉のすぐそばで暖を取っていた。

みけは少年だ。きてぃーは少女だ。

二人で仕事のことについて話す。

「ところで今度会社をつくろうと思うんだ」とみけは言う。

「会社?」

「ああ。どこかの建物の一室を借りて従業員を雇う」

「何を売るの?」

「暖炉を売るんだよ。自動で薪を燃やす機械だ。つまり火をつけるというより鉄の箱の中に木をいれて外側から燃やすんだな」

 暖炉の火がばちばちと燃えている。オレンジ色の火がゆらゆら煌めく。

「で?」ときてぃーはもう聞き飽きたように僕の夢物語に耳を傾ける。

「鉄の箱を作るんだよ。それで従業員をその建物の一室で働かせる」

「資本主義的ね」といかにも少女らしい感じできてぃーは言った。

「それが?」とみけは問いただす。

「結局世の中何かを作って売るしかないなら雇い主は有用な人間しか雇わないでしょう。そうすればお金を稼ぐのに全ての人間を雇うことはないわ」

「だからなんだよ? 一生懸命人が働くんだ」

「別にそれを生産するだけの人材さえいればいいじゃない?」

「そういうわけにもいかないよ。販売店に営業にもいかなきゃならないしたくさん人が必要なんだ」

「どうでもいいわ。コーヒーが飲みたい」

 ミケときてぃーは農場で働いていた。

 二人とも雑草をむしり、毎日果実を収穫し、そしてこの家に住んでいる。

「なぁ。いつか俺たちは独立してそして結婚出来たらいいね」とミケは言う。

「そうねー」

 コーヒーを飲みながらきてぃーは退屈そうにつぶやく。

「夢がたくさんあるんだよ。嘘かもしれないと思うが、俺の頭の中は決して夢物語じゃなくて本当にやりたいっていう思いがあるんだ」

 コーヒーが香る。僕の馬鹿みたいな夢想にも内省にも生きていることにも意味があればいいのに。

 揺らめく暖炉の火に忘れ去った昔の郷愁を思い出す。

「やっぱり手作りね」

 きてぃーはそんなことをつぶやきながらコーヒーをすすっていた。

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