いちばんのフレンズ

底辺さんかく

第1話 ミミちゃん助手の大好きな……

コノハ博士「ミミちゃん助手よ」


ミミ助手「なんでしょう、博士」


ほぼ定型化した語り口

ミミ助手はいつも通りに尊敬するコノハ博士の言葉に耳を傾ける


コノハ博士「パークで1番賢いのは誰ですか?」


ミミ助手「もちろん博士です。そして、博士の助手である私が、2番目に賢いです」


コノハ博士は「うむうむ」と頷く

ミミ助手も、幾度となく行われてきたこの一連のやり取りが好きだった


コノハ博士「では、この『かみひこうき』を作ったのは誰ですか?」


ミミ助手「……?かばんですね」


ミミ助手は少し驚いた。いつもであれば、このやり取りはさっきの所で終わるのに

今日のコノハ博士はかばんについて聞いてきた


コノハ博士「では、ジャパリバスを動けるようにしたのは誰ですか?」


ミミ助手「……それも、かばんですね」


今日のコノハ博士はどうしたのだろうか

ミミ助手は少し心配にさえなってくる


コノハ博士「ライオンたちのやっている遊び……あのボールを蹴るヤツを考えたのは誰ですか?」


ミミ助手「……かばんです」


なぜ、コノハ博士はこのような質問を繰り返すのだろうか

ミミ助手は不思議でならなかった


コノハ博士「火を使えるのは誰ですか?巨大セルリアンを撃退したのは誰ですか?PPPを一致団結させてライブを成功させたのは誰ですか??」


ミミ助手「すべて、かばんです」


ミミ助手には、なんとなくコノハ博士の言いたいことがわかって来た


コノハ博士「……では、もう一度問うです」


コノハ博士「このパークで、1番賢いのは、誰ですか?」


ミミ助手「……」


コノハ博士「……答えられない、ですか?」


ミミ助手は、コノハ博士が幸せになれる答えを思いつくことはできなかった

それを思いつけるほど、自分は賢くないのだと悟った


ミミ助手「……博士。私には答えがわからないです」


コノハ博士「……やはりですか」


ミミ助手「だから、教えてもらいに行きましょう」


コノハ博士「教えてもらいに?我々にものを教えられるフレンズなど――」


ミミ助手「つべこべ言わずに、行くですよ。博士」


コノハ博士「あ、ちょっと、ミミちゃん助手……」


ミミ助手はコノハ博士を少し強引にひっぱり

図書館から連れ出した


サーバル「あー!博士たちだ!お~~い!!」


かばん「え?あ、ほんとだ。サーバルちゃん、よく気がついたね」


サーバルがぴょんぴょん跳ねながら、飛んでくるコノハ博士とミミ助手に手を振る

かばんも、遠慮がちに手を振った


ミミ助手「どうもです。かばん、サーバル」


コノハ博士「助手、なんのつもりなのです?」


コノハ博士は、他のフレンズが近くにいるときはミミ助手のことを「ミミちゃん助手」ではなく「助手」と呼ぶ


ミミ助手「かばん、今日はお前に聞きたいことがあって来たです」


かばん「え?ボクにですか……?」


かばんはその臆病な性格からか少し身構えてしまう

それを見たサーバルが無意識にだろうか、かばんに少し身を寄せた


ミミ助手「かばん、お前は『かみひこうき』をどうして作ったのですか?」


かばん「えぇっとぉ、最初に作ったのはサーバルちゃんの手助けがしたくて、ですね」


サーバル「私がセルリアンと戦ってた時だよね!あの時はかばんちゃんがいなかったら危なかったよ!やっぱりかばんちゃんってすっごいよねっ!」


かばん「そ、そんなことないよ!あの時、サーバルちゃんがセルリアンの石を攻撃してくれたから、勝てたんだよ!」


かばんとサーバルは互いを褒め合う

ミミ助手は、次の質問へと移行する


ミミ助手「では、ジャパリバスを動けるようにしたのは誰ですか?」


サーバル「あ!それもかばんちゃ――」


かばん「ううん。それはサーバルちゃんだよ」


かばんがサーバルの言葉を遮った

そして、かばんはさらに付け加える


かばん「それと、ジャガーさんやトキさん……他にも、助けてくれたみなさんのおかげだよ」


サーバル「……かばんちゃんっ!」


サーバルが目を煌めかせてかばんに抱き着く

かばんは少しくすぐったそうに目を細めるが、笑みが零れている


ミミ助手「では、ライオンたちのやっている球を蹴る遊び、あれを考えたのは――」


コノハ博士「……助手、もうじゅうぶんです」


ミミ助手はできるだけ自然を装い、コノハ博士の顔を見る

……笑顔


コノハ博士「助手の伝えたいこと、しっかりと理解したです。なにせ、私は賢いので」


コノハ博士「かばん、今日はありがとう。それと……いつまでも、サーバルと仲良くするのですよ」


かばん「はいっ。もちろんです」


サーバル「例えダメって言われても、ずーっとかばんちゃんと一緒にいるもんね!」


仲睦まじい彼女らの様子を見て、コノハ博士は「うむうむ」と頷いた


コノハ博士「……さて、助手。帰りますか」


ミミ助手「はい。博士」


2人は、音も立てずに宙に舞い

いつもの図書館へと戻った

その帰り道、夕日に照らされながらコノハ博士は言った


コノハ博士「ミミちゃん助手よ」


ミミ助手「なんでしょう、博士」


コノハ博士「ミミちゃん助手がパークで1番好きなフレンズは、誰ですか?」


ミミ助手「それはもちろん――」


ミミ助手は躊躇なく答えた

1番大好きな、1番尊敬する、そのフレンズの名を



おわり

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