第11話 運送は鬱憤も運ぶ2

 そんな最中、武久は恐ろしいものを見た。


 某、大手の運送業者のトラックと交差点ですれ違った時だった。

「え!?」

 二度見できるのなら、していただろう。

 件のドライバーは食事をしていた。それだけなら、武久とて見慣れた。弁当をハンドルに置いて食べなければ無理なのだ。武久とて、運転しながら、ギアを変えながらおにぎりだったりパンを食べている。


 ……のだが。

 彼が食べていたのはなんと、カップラーメンだったのだ。

「……マジかよ」

 さすがの武久も、それを聞いた同僚も驚いていた。

「ハンドル切る時大変っすよね」

「それ以前に、汁こぼれたら大変だぞ」

 仕事終わり、少しの時間を見つけてスマホゲームをしながら話していた。

「今日、『配達遅い!!』って怒鳴られた」

「うわぁ。どんくらいよ」

「一応、時間内配達ではあった。時間ギリギリ」

「いつもんとこか」

「うっす」

「あそこはギリギリでも電話しないと、煩いのがいるからなぁ」

 そこに配達に行くのは、出来ればしたくない。

「あと○○で、また倉庫に入りきらない量を」

「またか!」

「しかも搬送口に従業員の車があって、入れるの大変で」

「いい加減にして欲しいよなぁ。何のための搬送口だと」

「ですよね~」

 倉庫に入りきらない量など、可愛いものだ。時として、変な妨害があって搬入するのが遅れたりもする。

「お疲れ~」

 また一人帰って来る。そろそろここを動かないと、余計な仕事を押し付けられそうで怖い。そう全員が思ったらしく、ゲームを一時中断し、場所を移動した。

「あれ、旭さんは引っ越しでしたっけ?」

「うん。時間に行ったら人が来てなかった」

「うっわぁ」

「しばらく待たせていただきました。おかげで休憩が長くなった」

「お疲れさんっす」

「滝さん遅いな」

「あ~~。さっき電話着てましたよ。なんでも今すぐ配達来いって」

「は!?」

「時間指定配達。その時間に中の人が居留守使ったせいで、配達できなかったらしいっす」

 武久がタイムカードを押すときに見た光景もまた、ここで話題に上がった。


 出来れば指定した時間にいて欲しい。というか、居留守厳禁。皆が同じことを思った。

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