第13.5話 Girl's side,楓
私はあの後、拓真の言葉に甘えて寝てしまいました。そしてその間に夢を見ていました。懐かしい思い出。拓真との思い出を…
私達の出会いは拓真が私の家の隣に引っ越してきたことでした。もちろんその時点では全くの他人に過ぎません(一応、小さい頃から一緒なので幼馴染っていえますよね?)。親が知り合いだったとかそんな運命的な出会いではなかったです。
隣の家ということもあって回覧板が回ってきます、それを私の家に持ってくるのは昔から拓真のお役目(小さい頃ならおつかいの部類に入るもの)で、私の親は仲良くなるいい機会だとそれを受け取る役目もまた私でした。
最初はお互いに気まずい雰囲気が続いていましたが、そんなこんなでそれを繰り返すうちに少しずつ会話ができるくらいの仲に発展していきました。
あの頃の拓真はいわば不良に憧れている少年のような感じでした。今の私にすればすごく可愛くてかっこいいって印象を持つに違いないと思います。←写真とか見たらキスしてあげたくなる…///
異性を好きになるということも知らなかったこの頃から私は拓真と結ばれるのをどこかで望んでいたのかもしれません。←言っててものすごく恥ずかしい…///
拓真は小学校高学年くらいから女の子を私を少し拒み気味になりました、もちろん子供のお遊びみたいなことでしたが。
私は拓真と1歳違い。そんなこともあり急に遊ばなくもなりました。今思えばそれは当たり前でした。あの頃の拓真は孤立を求めていると自分でも言い続けていましたし、私はそれは寂しいよと言い続けて止めていたのですが、いつしか…
『楓姉には……分かんないよ。俺の考えとか生き方が、何を求めてそうしてるのかなんて。第一、分かって欲しくない。』
それは初めての告白。初めての本音。確かに、言われてから気づきました。私は世間的には当たり前といえるような、レールに乗って生きて…友達も少なくなくて、それなりに遊びも経験して、苦心なんて皆無といえるほどありませんでした。
『でも、ほっとくことなんて私には出来ないっ。』
その発言をした時は自分でもよく分からなかった。だから、今だからこそ言えます。
拓真が、ほっとけないのは…
拓真が、どうしようもなく気になるのは…
私のお人好しは止まることなく続きました。拓真が拒んで、私がそれを聞かずにおせっかいを焼いて。
そこまでして1人に孤独になりたいのは何故?
私は
あれ…?でもならなんで今はこんなに私を好きでいてくれるのかな?私に1番笑顔を見せてくれるのかな?その疑問が出てきてすぐ、私の目の前に昔の拓真が現れて…
『何言ってんだよっ。そんなの俺もずっと好きだったからに決まってるだろ。』
『ふえっ?で、でも拓真は私から離れようと…遠いとこに行こうとしてたよ…?』
『それは……好きだからこそだよ。』
『…どうゆう意味っ?』
『俺には、手に余るくらい…とにかくもったいないってこと…なんて図々しいよね。告白してもいないし、それが成功するって確証もないのにさ…。でも楓姉は可愛いんだよ。俺が言うまでもなく、周りが、世間が、そう認識してるほどに。だから俺より優れた相手が、俺より幸せに出来る相手が、世の中にはいるんだ。実際問題、楓姉さ。もう何回か告白されたことあるでしょ?俺知ってるんだよ。現場を目撃したことだってあるし。』
『…。』
無言のまま、コクリ…と頷く私。
『だから、俺は
『…そんなこと…ない。』
『でも、友達の関係が続くのは余計に辛い。それに…』
『それに…なに?』
『一人の方が…さ。気楽なんだ。だって俺、女の子となんか楓姉と以外に話したことほとんどないし、男子とは少しわだかまりがあるだけで仲間から外される、まぁそれは同じ性別なら仕方のないことなのかもしれないけど。それに学校だって楽しくないんだ、正直。』
『でもたまに遊ぶ予定があるって家を出てたときもあるよねっ?』
『あー…あれはウソ。だってこの歳で遊ぶことがなかったら父さんと母さんに怪しまれるじゃん?だからウソついて外に出てただけ。どっちかっていうとインドア派なんだよ、俺。』
『なんで…?』
『なんでかって言われたら…俺が生きる意味を見失ってるから…かな。』
それじゃあ私の芝居に付き合ってくれてた頃から今までの拓真は私っていう生きる意味を見つけたからあんなに笑ったり友達も作れてたってこと…?
『じゃあもし、もし今の…高校生になった貴方が私と付き合ってるとしたら…それを信じる?』
『もしそうでも、そうだとしても…俺には関係ないよ。だってきっとそれは今の俺がいっぱい努力して楓姉を得たんだよ。今の俺に聞かずともそれくらいわかる。腐っても自分自身のことだからね。でも、そうだな…本当にそうなら俺に「よくやった。」って言ってやりたい、かな…。』
そう言った彼が消えてまた時間は進む。
きっとまだ何か、何かあるんだ。拓真が私の芝居に付き合ってくれてた拓真に変わった大きな出来事が…。
時は進み、中学生の時に飛んだ。身体つきも、色々な物事の考え方も、全てが小学生の頃とは変わる、みんな変わるはず…でも拓真は変わらない。
それは、それはきっと、
父親が亡くなったから。
かつて、拓真は父親に憧れているって言ってた。だからそんな憧れの人をなくした彼はきっと、どんな意味になるであれ変わると、私は思った。だからこそ、変わらない拓真の態度を直視したからこそ、かける言葉が見つからなくて、探し出せなくて。結局は何も言ってあげられなかった。
私は拓真の母親に事情を聞いた。前々から具合が悪かったそうで、それを感じさせないくらい明るくて元気だったそうだ。実際、私も家族間の交流があったりしたけどそんなこと微塵も感じさせなかった。
『拓真の…憧れた…。』
『…誰よりもカッコイイ、俺の…俺だけの父さんだよ。』
『情けない、情けないんだ、俺。自分自身が。父さんは絶対「お前は俺のことなんて気にしないで、自分のことを…前だけを見てればいいんだ。」っていかにもなカッコいい台詞を吐くに決まってるのに…さ。』
『確かに。叔父さんってそんな感じの人だったもんね。』
『そうだね、だって俺も母さんも最後に倒れた時に初めて知ったんだからさ…ほんと、最期までかっこいい父さんだった…。』
『…でも拓真は叔父さんを失くしてつらいはずなのに、なんでそこから変われたの?』
『なんで、って言われてもわかんない。でもあの時、ひとつだけ。父さんの言葉から考えて決めたことがあったんだ。』
『決めたこと…。』
『「母さんにだけは迷惑かけないようにする。」多分、父さんが言いたかったことの中にそれも含まれてたと思うから。だからさ、今にも泣き出しそうでも少しずつ、少しずつでいいから変わろうって、思った。』
『そう…。』
拓真は自分で変わることを自分で決めた…。やっぱり私は、何も…
『でも、そう上手くもいかなかった…。当たり前だよな、今までろくにクラスメイトと交流もしてこなくて、習い事もやめてからだいぶ経つし、特技も、趣味も、いろいろ…足りない。遅すぎたんだ、やっぱり。』
『そんなことないっ!確かに孤立を望んだ拓真は悪いよ?でも誰にだって迷惑はかけてないもん!』
『…やっぱ、楓姉はいつまでも楓姉だね。俺は、というか男はそんなに優しくされたら勘違いしちゃうよ?てかしてる…自意識過剰、夢見過ぎ、なんつってつっこまれるのがオチなのにね、ははっ…。やっぱ、高校生の俺ってすごい変わったんだろうなぁ…俺だけど、俺じゃない…みたいなさ。』
『あなたが変わった理由、それは私もピンとこない。だけどすごく大事なことだったんだよ。だってあなたが言うように「私の幸せを願う拓真」とは違う、「私と一緒に幸せを掴む拓真」になったんだもの。』
そうだ、私はその為にあえて芝居をしようと決意した。でも、拓真が受け身になってたのは何故だろう?
それは、楓姉と悠人のおかげだよ。
悠人?神城くんのこと?でも私は彼と話したことなんて数えるくらいしか…。
なんで俺が楓姉の芝居に付き合ってたと思う?
それは…確かに気になってたけど…って、えっ?
『……んっ…?』
その疑問と同時に目を覚ました私は辺りを見回して…
『すー…』
『たっくん?』
寝てしまっている。起こしに来てくれたのだろうか。そうだとしたら本末転倒だよ、と思ったけど、きっとあえて起こしてくれなかったのだろうと考えを巡らせる。
『たっくん、起きてっ?』
『ん、んぅ…。かえちゃん…ごめん起こしに来たんだけど…』
『気持ちよく寝てたから起こさなかった。でしょ?』
『あー、やっぱ分かっちゃったか〜。ははっ。』
『当たり前、彼女だもんっ。たっくんが優しいこと、カッコいいこと、全部知ってるもんっ。』
『か、カッコいいことは余計だけど…ありがとうっ。かえちゃんっ。』
『さっきまでね…』
『うん。』
『さっきまで、夢見てたの。たっくんと出会ってから、今に至るまでの軌跡みたいなものだったけど…起きちゃった。最後の気になる部分だけ解決しなかったの。』
『それ、多分俺も同じ夢見てたよ。っていっても俺は途中からになるのかな。テレパシーとかみたいだね。』
『そうなの!?なんかすごいね、無意識に通じ合ってるよ、私たち。ふふっ♪』
テレパシー?かもしれない何かで通じ合ってたから、拓真も同じ夢を見ていたから、昔と今の両方の拓真の思惑を夢で見れたのかな…。
『ねえ、たっくん。たっくんが私の芝居に付き合ってくれるようになった理由ってなんなのかな?私と神城くんが絡んでるっていうのまでは分かったんだけど。』
『あー、それは悠人が「楓さんを信じろ。」って言ってくれたからだよ。』
『なんで神城くんがそんなことを?』
『それは、あの頃からあいつが俺とかえちゃんの関係性を理解してたから、だね。』
『それって…つまり。』
『かえちゃんほど俺のことを考えて、想って、泣いて、笑って、感情をあらわにしてくれる人なんていないって。そこまでしてくれる人なら信じてみればいいじゃないかって。そう教えてくれたんだよ。あいつは。』
『そんなことがあったんだ…。』
今度、あらためてお礼を言わなきゃ。ありがとう、神城くん。
『さ、下に行こっか。かえちゃん。みんなまってるよ。』
『もう夜になるんだよ?あの2人だってそろそろ帰らせないと…』
『あー…それなんだけど…実は…。』
その後しばらく、かえちゃんがツンツンしてしまったのは言うまでもありません…。
俺と幼馴染、関係修復物語! 亜都璃 烈火(あとり れっか) @rekka307
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