第10話 失敗は成功の元…本当だね。

『ただいま〜、あれ?姉ちゃん帰ってる?』


『久しぶり〜、拓真〜』


この人は一条 瑠璃、俺の姉。二つ上の大学一年生。一人暮らししているが、たまにこっちに帰ってくる。さすがに大学生ともなると身体は大人になるんだなぁ…身体は。←ここ重要!


『あー。また楓ちゃん怒らせたんでしょー?ほんっと昔からあんたは〜…』


『帰ってきて何いうかと思えば!姉ちゃんエスパーかなんかなのっ!?確かにそうだけど、怖いよっ!てかもう仲直りしたから。大丈夫です。』


『なら何が気になるの?あんた気になることがあった時いつもそわそわして、分かりやすいったらありゃしないんだから…まったく。』


そ、そんなに分かりやすいのか、俺って…ていうかそれならいっそのこと…


『瑠璃姉っ!』


『きゃっ!?な、何よ?びっくりするじゃないっ。』


『俺に……俺に女の子を教えて下さいっ!(土下座付き)』


『…はいっ?』



3日前のあの日ーー。


そう。俺が楓姉の気持ちを考えてなかったから起きたあの時のこと。


あの後、俺が振り向いた時の楓姉は拗ねるとか、軽く怒るとか、そんな次元の反応じゃなかったんだ…


もちろん怒ってはいたと思う、胡桃先輩と俺が暑さを感じたのは楓姉のオーラみたいなものだと思うから…でも、俺は見逃さなかった。


涙を流してた…。俺が、俺が隣にいるって…そう決めたのに役目を果たさなければならないのに俺が泣かせた。それを見たときの俺は言葉をかけられなかった、というかかける言葉なんて見つからなかった。思考を巡らせるうちに楓姉はこう言った…


『じゃあね…』


いつものテンションも口調も失われたその一言はシンプルですごく重く感じた…逃げた幼馴染を追いかけることも出来ずに、俺はその場で立ち尽くしてしまった。


追い討ちをかけるように雨が降る、おまけに雷も鳴り出した。降水確率0%と言われてたはずなのに…なんて考えなかった。むしろ…


『俺への…戒めみたいなものなのかな…ははっ。女の子を、幼馴染好きな人を泣かせたんだから当然か…』



その後は場面場面しか覚えていない。気がつけば家に着いていて、気がつけばお風呂に入って、ご飯食べて、ベッドに入って寝る体制でいた。帰る途中に送ったLaINのメッセージには既読すらついておらず、直接じゃないとダメだってあらためて分かった。俺はどうしたらいか分からないまま2日も学校を休んだ。完全なズル休み。誰に情けないと言われても何も言い返せない…俺が悪かったんだから。



2日休んでその次の日ーー。


流石に親に文句の1つも言われてしまい、嫌々ながらも学校に行くことにした俺は決心した。『謝ろう。謝るしか今の俺には思いつかない。だから何度でも、納得するまで…』


朝、間の休み時間、共に避けられてしまった。ならばと思い、昼休みに無理矢理楓姉の手を引いて連れ出した。


『な、何?どうしたの?』


『話があるんだ。聞いてほしい。聞くだけでもいいから、お願い。』


『うん…』



屋上でーー。


『ごめんっ!ごめんなさいっ!俺が、俺が悪かったからっ!だから!だから許して下さいっ!』


『えっ、別に怒ってないよ…ただ、まだ私がたっくんを独り占めできる立場じゃないって分かったから不意に涙が出てきちゃっただけだったの。謝るのは私の方だよ。』


『違うっ!!!』


『ひゃっ!?』


怯えさせてどうするんだよ…こんなに…こんなにも俺を見てくれてるのに俺が他の事で気をとられるからいけないんだろうがっ!


『ご、ごめんっ!でもっ、かえちゃんは悪くないっ!俺が周りの女の子にばっか視線を向けて、デレデレして…近くに幼馴染がいることを当たり前だなんて思ってた、そんな考え方は捨てなくちゃいけないんだ!』


『第1回、関係修復リペアー計画失敗かな〜。あははっ。』


『えっ、第1回?』


『うんっ♪だから今日からまた第2回を始めましょうっ!拓真くんっ。それがダメなら第3回、またダメだったら第4回。何度だってやり直せばいいと思うんだよっ♪』


『……っ。』


涙が頬を伝う感覚。こんなに素直に泣いたのはいつぶりだろうか。こんなに胸が熱くなったのはいつぶりだろうか。そう思っていると楓姉は俺の手を握ってこう言ってくれた。


『だって私達はちょっと前まで恋愛の『れ』の文字も知らなかったんだよ?だからこそお互いが慎重にお互いのことを想うから、こうやってやり直せるんだよっ♪拓真くん…ううんっ、たっくんっ♪』


『……っ、そうだね楓姉、いや…かえちゃんっ。』


普通の人から見ればちっぽけなこと。でも俺の失敗は消えない、消せない。ノーカンになんてしなくていい、これは俺が犯した罪。でも、俺たちの関係はこれでいいんだ…何回阻まれようと、何回踏みとどまろうと、二人で超えていけばいい。一歩、また一歩、そうやって少しずつ進むのが俺たち二人の目指す、俺たち二人の望む『恋人』ってものだと思うから。


『ありがとうっ!俺、頑張る。君を、本当の意味で恋人と呼べるようになるまで何度でも、何度でも。だから…これから何回やり直すかわかんないけど、その度に俺を、しょうがない俺を。幼馴染を好きになってくれますか…。』


すると彼女はいつもの優しい笑みを浮かべてこう言った。


『そんなの…当たり前だよっ。』


 

ーー。


『あんた…恥ずかしくないの?』


『恥ずかしいわっ!でもどうしても分からないことは聞くしかないだろっ!』


『はぁ〜っ…楓ちゃんもどうしてこんな奴を好きになっちゃうかなぁ〜…』


『う、うるさいなぁ!本人の前で言わなくたっていいだろ!確かに俺も思ってたけどさぁ!』


『…それで?』


『それでとは?』


『あんた姉に喧嘩売ってんの…?』


『いや!?そんな命知らずなことしませんって!』


『殺されたいの?』


『いやです。もう黙りますから話を聞かせてください。お願いしますお姉様。』


『んで、女の子の何を教えて欲しいのって聞いてるの。』


ああ、さっき怒ったのはそれでか…


『何って、女の子についてだけど。』


Myお姉様が引いている…


『あんたそれ…冗談でも笑えないわよ…』


『いや一応って意味でだから!引かないでっ!少しくらいは知ってるってばっ!』


『はぁ〜っ…焦るからそういうことは先に言いなさいよねっ。』


『す、すんません…』


『じゃあまあ、とりあえず…』


こうして俺は女の子を一から学び直すことにしたのだった。




続くーー。



作者より…

『感想をお待ちしておりますm(_ _)m』

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