第137話 二人 3

「はぁ……電車来ないな」


田舎の自然は大好きだが、交通の便が悪いのは考えものだ。

意味も無くホームに視線をやると、逆光が意外に眩しくて恵一は顔をしかめた。


一度会話が途切れると自分も萌も無口なだけに再び会話の糸口を見つけるのに苦労する。

本当は今だってふざけた会話をしているようで、心の中はいっぱいいっぱいだった。


萌は無表情の下で何を思ってるんだろうか。

焦っているのが自分だけだったら嫌だなと思う。

きっとあの二人のことが無かったらこんなに自然に穏やかな気持ちで、萌の告白を受け入れられなかっただろう。


あの日、萌とアレクシと共にあの墓地へ向かったときのことを、恵一は思い出していた。

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