第136話 二人 2
一瞬、息が止まった気がした。
自分でも自分の目が見開かれて行くのがわかる。
萌のひたむき過ぎるほどにひたむきな目が、教えてくれる。
-ああ、「本気」なんだ……
正直、驚いた。
けれど、落ち着いたその瞳と視線を絡ませている内に引き込まれるように恵一の心も徐々に凪いで行った。
「……今、言うんだな」
苦笑が漏れる。
萌は少しだけ、悲しそうだった。
きっと、あの二人のことを考えているんだろう。
「うん。今だから言った」
そして少しだけ笑った。
「ずるいな、お前は。……はぁ。ああ。姉さんに何て言おう」
嬉しいけれど、悲しい。そしてやっぱり、後ろめたい。
「うう……」
呻きながら頭を抱えて丸まった恵一を、萌は優しく抱きしめた。
「それはOKって言う意味だよな」
長い沈黙のあと、絞り出す様に恵一は答える。
「……多分な」
「はっきりして欲しいんだけど」
「察しろよ。僕も精一杯なんだから」
「『俺』」
「は? 」
萌は肩を抱いていた腕を緩め、恵一の両肩を掴んで自分と対面させた。
「約束しただろ? 無事に身体に戻れたら『僕』じゃなくて『俺』って言うって」
「したっけ?」
「したよ」
萌はムキになった様に言った。
「そんなことどうでも良くないか?」
「良くない。もう『優しい叔父さん』なんて目指して欲しくねえし。兄さんときどき俺にまで変に人見知りするだろ。そう言うの本当、要らないから。もっとこう、これからは自然体でお願いしたいんだけど」
「俺がちぃっさい甥っ子の萌君の為に今までどれだけ色んなことに思い悩んで来たのか、お前にはわからないよ」
恵一は何だか投げやりな気分になった。組んだ
「……ったく。小2からだぞ? 毎日育児本読んだし、オムツも替えたのに」
横目でチラリと見上げた萌はすっかりデカく、男前に育っていた。
「はぁ。恵一さん、少しは雰囲気大事にしてよ。『オムツ』とか今は聞きたくない」
「……恵一さん?」
「付き合うのに『兄さん』じゃ変だろ」
「まあ……確かにな」
何だか如何わしい設定のAVみたいではある。
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