第129話 後悔 6

突然の休学の理由として、考えられるものとは一体何だろうか。


兄の命日が巡って来て、星弐は急に感傷的な気分にでもなったのだろうか。


少し考えて瀬口は首を振った。


それならば、去年の命日にだって同じようなことがあったはずだ。第一星弐は兄の死後、無事名門大学に現役合格しているのだ。その辺りはまあ、元々の頭の良さでどうにでもなるのかもしれないが、サークル活動にも力を入れていたし、授業の成績も良かった。


完全に否定するには根拠が薄いが瀬口には何か別の理由があるのだろうと思えた。

恐らく何かが起きたのだ。桂壱少年の2回目の命日に。


-だとしたらそれは何か……


そのときふと、瀬口のiPhoneが震えた。小刻みに木製の机を叩いてビリビリと言わせる。

静かすぎた部屋に、その音は不気味なほど大きく響く。

画面を返して見れば、ここより少し離れた町で医者をしている友人からだった。

つい最近、息子の親友の叔父にあたる青年が行方不明になった件で連絡を取り合ったばかりだ。


あのときの彼の状態からして、外に出たとしても医療抜きで健康に快復する見込みはない。だからこその判断だった。


「もしもし?」

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