第109話 市東 桂壱 4

*性描写が入ってきます。苦手な方は申し訳無いのですが読み飛ばして下さい





それから僕は一人、夕日の差す渡り廊下を通って、HR教室のある新しい校舎から古ぼけた木造校舎に移動した。

三階の端っこに美術室があったから。


「はっ、……あ、先生っ。グラグラ、する」


部員は僕一人だった。

最初はアニメ好きな女子が数人居たけど直ぐに全員まとめて漫研の方へ移ってしまった。


うつむいているので額から吹き出た汗が床に落ちて行くのが見える。

僕は身体を支える様に教室の壁へすがり付いた。

顧問の多部先生はわざとエアコンを切ってするのが好きだ。窓を閉め切ってカーテンを引いて、ドアに鍵をかけて。

そのせいでいつも、放課後の美術室は蒸し蒸しとして身体にべたつき、まとわりつく空気でいっぱいだ。


「ん、激しいよ。声出ちゃうから……あっ。それに暑いってば」


「でも、窓開けない方が安心だろ?」


僕と同じくらい汗だくになりながら僕の腰を後ろから抱えた先生がわらった。


「まあ、ね」


こんなことはもう何回目かわからない。

けれど、そう言えば、最初は無理やりだった気がする。

-「好きでごめんな」

そう言われたはずだった。

そして何故か写真を撮られた。


中一の夏の、土曜日のことだった。

人の良さそうな顔をして、ぐしゃぐしゃ頭の美大生みたいな多部先生はあの日僕を犯した。

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