第86話 探せ 4

打ち終わって携帯を置くと、すぐにまた、あの着信音がした。

リョウマが素早く動いて携帯を見る。

けれど、今度は無言で伏せて机に戻した。


「え、何だよ?」


京平が訝しげに聞く。


「いや、あんま関係ないかも」


「んだよ、はっきりしろよ」


京平がひょいっと携帯を取り上げて、そのまま操作をはじめた。


「はぁ⁈ ちょっと!京平なんで俺のパスコード知ってんの⁈」


「いや、パスコードでは開けてねえよ。指紋で」


「指紋で!?」


驚くリョウマをよそに、京平が多分、今届いただろうLINEを無感情に読み上げる。


「『居るよーん俺のクラスにけいいち君。顔は似てもにつかねぇけど wwwww』。……いや、誰だよ」


こちらへ向けて差し出されたスマホを覗き見ると、ピースサインを鼻の穴に突き刺した頭の悪そうな少年の写真がのっていた。

どうやら似顔絵の少年について友達にも聞いてくれたようだ。


「だからあんま関係ねぇっつったじゃん今こう言うの見る気分じゃねぇしさー、俺隠したのに!」


項垂うなだれるリョウマをよそに、再びLineの着信音が鳴る。


「またかよ……。なんかごめんな。あいつらこっちの事情詳しく知らないからさ。恵一さん、許してやって」


申し訳なさそうに謝るリョウマとは対照的に、萌とも恵一ともなかなかに付き合いの長い京平はこちらがそれくらいのことを気にするたちで無いことを知っている。

たった今新たに届いたメッセージも引き続き棒読みで読み上げはじめる。



「『そういやその名前で思い出したわー。うちの兄貴が言ってたんだけど2年前-』……ん?」



「京平?」


「『2年前、うちの高校の屋上から飛び降り自殺した生徒も「けいいち」だったわー』……」



(え?)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る