第85話 探せ 3

考えてみたら単純な話だった。これまで散々助けられてきたけれど、今、改めて思う。


(本当にすごい…)



この子には一体何ができるんだろう。年を重ねるごとに不思議な力が強まっている気がして落ち着かない。

どんどん萌がわからなくなる。

遠くへ行って欲しくない。

変わらず、俺の小さな萌でいて欲しい。


「兄さん?」


知らず、自分の世界に入ってしまっていたようで、ふと呼ばれて顔を上げると心配そうな萌の顔が目の前にあった。


「どうしたの? 顔色が良くない」


「え?! 恵一さん大丈夫?」


「……大丈夫。顔色悪いのは元からだよ。リョウマくんにもそう伝えてくれる? あと、ありがとねって」


(ボーッとしてる場合じゃないよな…)


色々な人に協力してもらっているのだ。しっかりしないといけない。

恵一が気を引き締め直していると、静かな部屋にLINEの着信音が響いた。

さっそく携帯に返信が来たらしい。

リョウマが「来た!」と叫んだ。


ピリッと空気が張り詰める。

けれど……。



「……三年にはいないって」



リョウマは少し落胆した様子で続けた。


「母さん三年の担任なんだけどさ、他の学年で受け持ってるクラスにも『けいいち』はいないって。念のため他の学年の教師にも聞いて見るけど、『こんな綺麗な顔の子、学校でみたことないかも』って」


「そっか。毎日通ってれば何となく同じ学校かどうか顔見ればわかるもんな…」


萌の意見には恵一も賛成だった。

リョウマの母にそう言われてしまうのは痛い。


「うーん。そうサクサク見つかるもんじゃ無いってことか。まだ南高生の可能性はあるけどさ、もしかしてそいつ中学生かもしれないし、逆に大学生かもしれないだろ? その場合って、なんだっけか。萌、岡崎だったっけ? 例の教師」


「「岡山」」


「ああ、それ。岡山の私的な交友関係もみてく必要あるよな。あ、まだ親父に萌が心あたりあったみたいって報告してないや」


「一応LINEしとけ。多分、アレクシが伝えてるだろうけど」


「りょーかい」

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