第77話 Precognition 5

「ああ。でも、断定はしないよ。僕にできるのは、自分の経験に基づいた『予想』を話すことだ。元々、幽霊なんて非科学的なものだし、科学で証明できないものに、一貫した法則なんて無いからね。それは、モエもよく知ってることだよね」


予想でも何でも、無いよりはマシに違いない。恵一の隣で、萌は一つ静かに頷いて言った。


「アレクシ、力の調子が狂うっていうことだけど」


「心当たりがあるの?」


「ああ。先のことがわかるとき、いつも見え方はバラバラだけど、それでもやっぱり、共通してることも多いんだ」


「うん」


「命に関わるようなことが起きるとき、急いでも間に合わない時間に未来が視える事は無い。それに、自分が防ぐ以外で、視えた未来がハズレることも無い」


萌は眉を寄せ、考えながら話を続けた。


「昨日は両方おかしかった。視えたのは事故とほぼ同時刻だったし、兄さんには助手席に同乗者がいた」


「同乗者か……。モエは、その人も何か引っかかるんだね」


(え?)


恵一が急ぎ萌を振り返ると、萌は気まずそうに目をそらした。

それが何よりの答えになって、恵一としても黙っていられない。


「萌、長谷川は-」


「わかった僕が視てくるよ」


「え? でも」


「ケイイチ、僕らがこれからしなくちゃいけないのは、可能性を一つずつ潰すことだ。わかるよね?」


諭すように言われてしまい、何も返すことができない。

第一、二人とも恵一のために動こうとしてくれているのだ。


「……わかった。お願いします」


そう言う他無かった。


「うん。どうせ事故の聴取をしにセグチが向かう予定だったみたいだし、パッと行って確かめてくるよ。その前に」


すっと立ち上がったアレクシが恵一に向かって歩いてくる。


(何?)


綺麗な顔が間近に迫る。

背が高くて、無理に見上げるかたちになった。

まつげまで白い。


「アレクシ?」

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