第76話 Precognition 4
嬉しそうに萌を見つめながらアレクシは続けた。
「一昨日、リョウマの中を
(そんなことができるなんて……)
自在に人の心が見れるというのはどんな感じなんだろうか。
世の中の人は
けれど、彼の前では丸裸も同然だ。
今、恵一が抱えている悩みも、アレクシには視えてしまうんだろうか。
萌との距離が上手くとれないという悩みもバレてしまう?
そんなことを考えながらアレクシを盗み見ると、目があってしまった。
その顔が意味深に微笑んだように見えて、酷く焦る。
「ア、アレクシさんは」
何か話題を逸らして別のことを考えなくてはと思い、恵一が発した言葉は見事にひっくり返った。
「ふふ…。アレクシでいいよ」
「アレクシは僕が視えるんですか?」
「いいや」
「え?」
「ただ声が聞こえるだけ」
「…じゃあ、誰もいない場所から声だけ聞こえるってこと?」
何だかそれは、ある意味姿が視えるより怖いかもしれない。
「うん。モエはケイイチの姿も見えるんだろう?素晴らしいね」
しかし、萌は、そんなことどうでもいいと言った風に賞賛を受け流した。
焦った顔で言う。
「説明はいい。力は行動で示してくれるんだろ? 早くわかることを教えて」
「わかった」
アレクシからヘラヘラした態度が消えた。ただのふざけたお兄さんでは無いようで少しだけ安心だ。
「誰もいないとこから声が聞こえるなんて変なことはあんまりないんだ。でも、そういうときはかなりの確率でおかしなことが起こる。例えば、自分の力の調子が狂ったり、周辺の電子機器の調子がおかしくなるとかね。後者は心当たりあるよね?」
恵一は深く頷いた。
今見た監視カメラ映像が正にそれだった。
そういえば、夏のホラー特番でも「回していたはずのカメラが何も映していなかった」という現象をよく目にする気がする。
あれもその類だろうか。
一人ピンと来ていない瀬口には、めぐみが今までの出来事を説明した。
「じゃあアレクシはこれがその…幽霊? の仕業だと思うってこと?」
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