第48話 声 4
「萌!けーちゃんは?!」
息を切らしながら、めぐみが駆け寄ってくる。途中で萌の隣に立つ長谷川に気付き、会釈をした。
「先程はご連絡ありがとうございました。木芽です。京平くんも、萌についててくれてありがとうね」
長谷川と京平はそれぞれ、めぐみに会釈を返す。
「石橋さんですが……」
先程、萌と京平が聞いた内容を再び長谷川がめぐみに話しだす。
仕方のない事だが、二度、事故の経緯を聞くだけでも萌には辛いことだった。
頭の中で何度も恵一が事故に遭う様に感じられたから。
ただ辛いのは、それを話す長谷川も同じだろう。
心の内は顔に出すまいと思って聞いていたが、さりげなく萌の背を支える様に差し出された京平の手に「多分、失敗してるんだな」と思った。
「心肺停止…」
全てを聞いた後蒼白な顔で呟く母に萌は何と声をかけて良いか分からなかった。
ただ長椅子に座る様に促すことぐらいしかできない。
誰も何も言わない。
医学の知識など萌には殆ど無く、それは母も京平も同じだろう。
一度心肺停止になって、また回復するなんてことは、よくあることなのだろうか。
そして、回復した後はどうなるのだろうか?
後遺症は残らないか?
ちゃんと…元通りになる?
今、ここに居る全員の頭を占めるのはそういった不安だろう。
皆、死んだ様な顔をしていた。
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