偉い蝶③

あっと思ったときにはもう手遅れでした。


大きなピンクの蝶は網に捕らえられました。


人間は網から蝶を掴んで取り出すと、透明な虫かごに入れました。


「おい何すんだ! 俺を誰だと思ってやがる! ここから出せ! 痛い目にあわせてやるぞ!」


大きなピンクの蝶は怒鳴って暴れましたが、人間は蝶の言葉が分かりません。


怒鳴り声に気付くことなく、まっすぐ家に帰りました。


そして、蝶を虫かごから飼育箱に移すと、そのままどこかに行ってしまいました。


「おい! 出せって言ってるだろ! 俺は怒らすと怖いんだぞ!」


大きなピンクの蝶は飼育箱の中でなおも怒鳴り続けました。


すると、後ろから声が聞こえてきました。


「無理だよ。みんなでずっと逃げようとしてるんだけど、どうやっても上手くいかないんだ」


「何諦めてんだ! 何か方法があるかもしれないだろ!」


大きなピンクの蝶はそう答えて振り向きました。


そこには数匹の蝶がいました。


そして、どの蝶の羽も水色でした。

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