偉い蝶②

その日も、大きなピンクの蝶は花の蜜を吸っていた水色の蝶を花の上から地面に突き飛ばして言いました。


「どけよ、汚い羽。これは俺の花だ」


突き飛ばされた水色の蝶は怒って大声を出しましたが、大きなピンクの蝶は「え? 何言ってるかわかんなーい」とおどけるだけで聞こうともしませんでした。


水色の蝶はしばらく悲しそうな顔をしていましたが、やがて何も言わずにひらひらとどこかに飛んでいきました。


大きなピンクの蝶はそれを見て笑い、蜜を吸い始めました。


水色の蝶をいじめた後の花の蜜は一段と美味しく、夢中で吸い続けました。




だから気が付きませんでした。


背後から、虫取り網が近づいて来ていたことに。

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