気になるあの子のカバンの中身

こうさかきょうこ

第1話

「トキー」

久しぶりにジャパリカフェを訪れたカバンちゃんとサーバルちゃんは、トキとアルパカに再会した。

「久しぶり、旅はどうだった?」

「楽しかったよ!」

「はい、お茶どうぞー、どうぞー」

「アルパカさん、ありがとうございます」

「あれぇ?トキ、なにそれー?小さい…カバン?」

うふふ

トキは、にっこり笑って自慢げにサーバルにポシェットを見せる。

「ハカセに教えてもらって、アルパカに作ってもらったの」

「あたしの毛は伸びるからねぇ。それから毛糸ってのができるから、ハカセに教えてもらって編んでみたのぉー」

「すごーい!」

あはっ

瞳を輝かせてアルパカが嬉しそうに笑う。

「細かい作業は好きなんだよねぇ」

「トキさんの綺麗な紅い色と白い色がグラデーションになってるんですね!」

「そうなの。アルパカとお揃いなの」

「カバンちゃんのより小さいんだね?」

「トキは空を飛ぶからねぇ。邪魔にならないように小さめにしたんだよぅ」

「お二人とも、何が入っているんですか?」

うふふ

あはっ

トキとアルパカは顔を見合わせて微笑む。

「なになにー。内緒にしないで、教えてよー。」

「わたしのポシェットには、鉛筆が入っているのよ。ファンに会った時に、いつでもサインを書けるように。」

「さいん?」

「この前、カフェにオオカミが来たんだよぉ。その時、ファン?にはサインを書くんだってぇ…自分の名前を書くって教えてもらったんだよぉ。」

「あー!」

カバンちゃんとサーバルちゃんは、ロッジでの最終日の一コマを思い出していた。

「あなたもサインほしい?」

トキに顔を近づけられたカバンちゃんは、頷かざるを得なかった。

「あ、じゃぁ、この地図にサインしてください。」

むふふ

トキは、慣れない手つきでサインをかく。

『と・・・き・・・』

「すごーい!トキ、文字?が書けるんだ!!」

「ハカセに教えてもらってぇ、トキは一生懸命練習したんだよぉ。」

「アルパカがお茶を入れてくれたから、頑張れたのよ。」

「お二人とも、なんだか嬉しそうですね。」

(留守の間に、トキとアルパカはすごく仲良くなったみたいだ。ぼくとサーバルちゃんみたいに)

カバンちゃんはなんだか嬉しくなった。

「久しぶりに.、トキさんの歌が聞きたいです」

むふふ・えー

喜ぶトキと、困惑するサーバルちゃんを一度に見ながらカバンちゃんは笑った。


トキが新曲「カバンのうた」を歌った後、サーバルちゃんがアルパカに質問する。

「それで、アルパカのカバンには何が入っているの?」

「レシピブックよ」

アルパカに入れてもらったお茶を美味しそうに飲んでいたトキが答える。

「れしぴ?」

「お茶のぉ、入れ方っていうのが色々あってねぇ。それをレシピって言うんだってぇ。ハカセに教えてもらったのぉ」

「どんなレシピがあるんですか?」

「えっとねぇ。トキに淹れてあげる喉にいいお茶。ハカセに淹れてあげる目にいいお茶と。ペパプのみんなには、お肌にいいお茶を差し入れしてるよぅ」

「へー」

「アルパカさん、すごいですね!」

「そんなことないんだけどぉ。みんなに、カフェに来てほしいからねぇ」

「アルパカはすごい努力家なのよ。」

トキが自分のことのように自慢する。

「今日のお茶も美味しかったです。」

「今日のはぁ、疲れを取るお茶だよぉ。」

「えー、たくさん飲まなきゃ!」

「たくさん飲んでも一緒だよぉ」

あははははは

みんなで大笑いしていると、ドアが開く音がした。

「いらっしゃいませぇ。ようこそぉ、ジャパリカフェへぇ」

ジャパリカフェはとても居心地のいいカフェになっており、お客さんがひっきりなしに来るようであった。


ジャパリカフェを後にした、サーバルちゃんとカバンちゃんは、今夜の宿、ビーバーとプレーリードッグの家に向かった。

「あー!カバン殿!サーバル殿!」

「プレーリー、ビーバー今日はよろしくね」

「泊めていただいてありがとうございます」

「そんな、ここはお二人のお陰で建った家っすから」

あれから時間を経て、二人の家はより過ごしやすい家になっていた。

「ジャパリマンでも食べますか?」

「うん!」

「すみません、ビーバーさん」

ジャパリマンを食べながらふと目を壁にやると、そこにはお揃いのカバンが掛けてあった。

「あれ…その壁の…」

「ああ、あれはおれっちとプレーリーさんのカバンっす。トートバックって言うらしいっす」

「ハカセ達が教えてくれたのであります!」

「プレーリーさんが木の蔓を捜してきてくれて、二人で柔らかくして、おれっちが編んだんっすよ」

「す―ごーい」

「お揃いなんですね」

「そうなんっすよ。プレーリーさんのは、尻尾の色に合わせて、暗い色の蔓で作ってたっす」

「なかには何が入ってるの?」

「木っすね。」

「き?」・「木?」

サーバルちゃんとカバンちゃんの言葉が重なる。

「そうなんっすよ。小枝を入れておいて、頭にイメージが浮かんだらすぐに模型を作れるようにしているっす。」

「へぇー!」

「ビーバーさん、すごいですね!」

「おれっち、なんかそういうのが好きみたいっす。」

「ビーバー殿はすごいのであります!最近は、いろんなフレンズ殿の家を作ってあげてるのであります!」

「すごーい!」

「すごいですね」

「や、おれっち、そういうの得意みたいで…」

ビーバーは照れながら頭をかいている。

「じゃ、プレーリーのカバンには何がはいってるの?」

「木であります!」

「えー、じゃ、ビーバーと同じじゃない。」

「そうなのであります!散歩を中にいい枝を見つけたら、ビーバー殿のためにカバンにいれて持ち帰るのであります!」

「なるほど、お二人は仲良しなんですねぇ」

「プレーリーさんがいい小枝を集めてきてくれるから助かるっすよ」

ビーバーは今度は嬉しそうに頭をかいている。

(こっちの二人も仲良しだなぁ・・・)

カバンちゃんは、ほっこりしながらジャパリマンを頬張った。


「なんだか、みんなカバンちゃんみたいだね。」

翌日、プレーリーとビーバーの家を後にして、サバンナちほーを目指しながらサーバルちゃんが言う。

「わたしもカバンほしいなぁ」

「えー、そしたら、カバンちゃんが二人になるじゃない」

「あはは、そうだね」

「ところで、カバンちゃんのカバンには何がはいってるの?」

「えっと…」

カバンちゃんは開きかけた口を、きゅっと閉じて笑顔でいう。

「内緒!」

「えええ」

驚いたサーバルちゃんは、大きな声で言う。

「ひどいよ!おしえてよー!」

「えへへ。内緒だよっ!」

「このぉ!教えてくれないと食べちゃうぞー!」

「わーー、食べないでくださーい!」


『サーバル、食べちゃ駄目だよ』


「ボス!」

「あはは!」

カバンちゃんは面白そうに笑っている。初めて会ったときはなんだか、オドオドビクビクしていたけど、今ではこんなに冗談を言って笑える仲になった。


(まぁ、それだけでいいか)


「もー。今度、教えてね。」

「うん!」


本当は、カバンの中には、サーバルちゃんと行った、いろんなちほーの、いろんなものが少しずつ入ってる。二人の旅の思い出でいっぱいだ。ひとつずつ見せて、二人で思い出話をしよう。そう思って、カバンちゃんはにっこり微笑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

気になるあの子のカバンの中身 こうさかきょうこ @kyoko3333

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ