第2話 自分というフィルター
人は、あらゆるものをありのまま見る事は出来ない。
青い空がある。しかし色彩能力を持たない生物にとってそれは「青」くもないし、「空」でもない。
石がある。ある人間はその造形に価値を見出す。ある人間は石に含まれる成分に価値を見出す。ある人間は遊びの道具として石を使う。しかし多くのその他生命にとって、それは何でもない。
これは「人間」という文化のフィルターであり、ファインダーである。石に「石」と名付ける文化。石を構成する姿形や成分、成り立ちを奥深く読み解くファインダー。
また、私と君とは同じ物を見ても違う物を見ている。君はある作品を面白いと感じる。私は何も感じない。
この差異は「文化」というよりは「人生」と言い換えた方が良いかもしれない。
私は随分偏屈な人生を送った。そうして生まれた歪んだフィルターが、恐らくだが、ある。君も君の人生で得たり失ったりして得た 感じ方 がある。
故に真実の共感はまずなし得ない。絶対とは言い切りはしないが。
この膜の作用を齎すものは数え上げれば枚挙に暇がない。
敷いて大別するなら、流れだ。
時節の流れ、あるいは経済状況、あるいは流行り廃り。
その時吹いている風によって、あるいは人の着目を集めるモノもあるだろう。廃れてしまった流れ故に、日の目を見ないモノもあろう。
ただ、だ。
その物語に出会う感動も一生モノだ。というのはどこかで見たセリフなのだが、この点に関して私は物語に当たる際の予備知識を入れたくない派である。
これは前情報によって齎された情報によって感情に差異が生まれるからだ。
「これは感動する」と聞かされて、感動を待つ、この構えが問題なのだ。喩え話となるが、腹に一撃を食らった際、腹に力が入っているか否かで衝撃には大きな違いが出る。これと同じで、心で構えていると、大凡の罵詈雑言は耐えられる、決して即座に崩れ落ちる事はないだろう。
同じように、感動という衝撃を殺す作用であると考えるのだ。
感動しよう、感動しようと構える心が、いざ齎された衝撃に備え、勢いを殺してしまう事が何よりも恐ろしい。
また同様に前情報として悪評があるが、これも構えてしまうと案外なんて事の無いように感じてしまう事がままある。まぁしかし現代では悪ノリの悪習があるので、そのまま乗っかる者は少なくないのだが。
但し例外もある。カウンター、あるいはズラし。これは作者の力量とでも言えば良いのか、あるいは受け取る側によって弱点に差異が有るために生まれるのかは定かではない。が構えている部分、例えば恋愛の部分、主人公の愛の告白に対して構えていたとして、相手の反応の妙に衝撃を受ける、などもある訳だ。男女の違い、あるいは萌えポイントの違いと考えれば解りやすいだろうか。
まぁそれは置いておいて。
私は上記点に置いて、前評判をカットし、あるがままの自分というフィルターで物語を受け止めたいのだ。
自分と言うフィルターまでは如何ともし難い。悟りを開いても難しいんじゃないかな。
さてしかし、この前評判のカットが非常に難しい。ネットに生きる現代人が抱える難題である。情報が幾万と消えては現れ錯綜し、流行り廃りは目まぐるしく、言葉ですら生み、殺す現代である。
どこまで純粋な自分というフィルターの透明度をあげられるか。
とりあえず、流行りには手を出さないのがまず一点。流行りものには多くの者が考えなしに群がるからだ。その数が多ければ多い程、あるいは声も大きくなり、多くの情報が届いてしまう。廃れたくらいが丁度良いだろう。
この点における問題は、話題の共有が出来ない点であるが、ライトノベルの祖先は文学であり、芸術の一つ。
独りで愉しむ側面がある事は否定出来ない。
いや、そうだな。皆で集まってノベル読むっておかしいわ。
うん、オッケオッケ。
無論高尚な文学に対する考察や読み解きの論争も有りではある事は追記しておく。
私は一人で読みたい。
その結論に辿り着く為の大回りである。
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