第16話
高遠 皇花
学校では押しも押されぬ人気者で男女ともに人望が篤いカリスマの怪物だ。
そんな皇花ちゃんだが、ブラコンでもある。
だからこそ他の男子には目もくれない、その御蔭で告白されても軽やかに断れるしフォローも欠かさない。
だからこそ女子からの妬みも無い。そして女子たちに適度に男子を紹介したりもしている。
俺には到底マネ出来ないな。
やったら速攻で刺される自信がある。
…うん、現実逃避はやめよう。
「なあ皇花ちゃん。なんでここに入り浸るんだ?」
こことは即ち俺の部屋である。
しかも俺のベッドに寝そべってマンガなんぞを読みふけって居たりする。
あろうことかスカートが捲れるのも気にせず、足をパタパタと…。
おいバカやめろ、俺の視界で下着を露出するんじゃない!
「んー?良いじゃん翔お兄ちゃん。私がリラックス出来るのは翔お兄ちゃんの傍だけなんだし」
「お前それどんな意味合いか分かってんのかオウ」
「あははー」
これである。
ハッキリさせておくが、俺も皇花ちゃんもお互いを異性として認識していない。
いやまあそれでも女としては見ているんだけど、恋愛的な意味では見ていない。
だと言うのにこのコはこういった発言を平気でする。
昔からの知り合いじゃなければ勘違いしてもおかしくない。
「プレゼントは渡せたのか?」
「完璧!お兄様凄く喜んでくれたよ~!」
「そうか。良かったな」
「うん!ありがとね翔お兄ちゃん!」
太陽のような輝かしい笑顔でそうお礼を言ってくれるからお願いされると断れないんだよなあ。
「カケル、ご飯出来るけど…皇花も食べてく?」
「あ、若菜お姉ちゃん。私は帰ってお兄様と食べますので」
お、今日は若菜の食事当番だったか。
しかし見事なキャラの切り替えだな…。
そう、皇花ちゃんはさっきまでのダメっ子モードは俺にしか見せない。
巡にはもちろん、友人や家族にすら見せない。
ならばどうして俺には見せるのか?
それは彼女の致命的な秘密が関係してくるのだが…。
ある日、ふとしたきっかけで俺はその秘密を知ってしまった。
当然、彼女は俺に口止めを頼み込んでくるのだが、何を思ったのか服を脱ぎだしたのだ。
『お願いします翔さん!処女以外なら何でも好きにしても良いですからさっきのは…!』
今でも鮮明に思い出せる、この世の終わりが来たような表情と必死に俺を懐柔しようとする姿。
俺は最初からソレを他言しようとは思わなかったが、やはり俺をよく知らない皇花ちゃんは信用出来ないと思っていたんだろう。
それからはしょっちゅう顔を合わせるようになった。
半年ほどは俺を監視していたらしいんだが、いきなり俺の自宅に訪ねてきて泣きながらお礼を言ってきて驚かされた。
後で聞いた話では、巡以外の異性を信用できなくて不安に苛まれていたようだ。
俺が秘密をネタにして凌辱されるとか、そんなことを思って怯えていたのに俺から何もアクションがない。
秘密がバレたような感じもないし、もしかして俺が約束を守った上で自分にヒドイことをしない、そんな信じるに値する人物なのでは?
そう思ってからはもう我慢が出来なくなって押し掛けてきたらしかった。
その日から何やら呼び名が翔さんから翔お兄ちゃんに変わり、しばらくしたら俺の家に入り浸るようになって更にしばらくしたら、アレコレと愚痴まで聞かされるように…。
懐かれたのは良いんだけどな…下着姿でリラックスしたりするのはなぁ。
一度それとなく注意したら恐ろしいこと言ってたな。
「ん?お兄ちゃんにならヴァージン以外なら良いよ?」
それ以降俺はこのコに注意するのは止めた。
危険すぎるわ。
まあアレだな。妹キャラは危ない。
そういう事だな。
なお、その後しばらくは俺を見る皇花ちゃんの目が獲物を見つけた猛獣のようだったと付け足しておく。
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