第15話

「待ちなさいカケルうううううううう!!!!!!」

「絶対待たねえええええええええええ!!!!!!」


俺は今、絶賛逃走中である。

誰から?

ああ、分からないよな、うん。


若菜から逃げている最中だ。


何故か?

よく分からないが逃げている。

だって鬼のような形相で追いかけてくるんだぞ。怖いだろ!


場所は校内だ。切実に助けて欲しい。

これを見てる誰か救助に来てくれないか?

安心してくれ。若菜は今さっき撒いて俺はクラブ棟でこれを書いている。


…ムリですかそうですか。

あ、ヤバイ誰かきt




-数時間後-



ひどい目に遭った。

事情は分かったんだが納得いかない…。


あんな恐ろしい思いをした理由は巡のヤツが何気なく若菜に言った言葉だったらしい。



「そういや翔、昨日は若菜ちゃんとデートだったの?駅で待ち合わせしてたっぽいけど」



悪いことに昨日は若菜と一ノ瀬には用事があるからと別行動をしていた。

にも関わらずこの発言である。

この事態に、二人は「すわ、浮気かっ」と色めき立ったらしい。

そして校内での鬼ごっこに至ったというわけだ。


まさか巡に見つかるとは思っても見なかった。

まあ結局二人には事情を話して理解を得たが、二人と順次デートすることになってしまった。

イヤではないんだけど、日常的にデートしてるようなものだろうとの抗議がアッサリと潰されてしまった。


曰く

「カケルは女心を理解してない!デートの何たるかも分かってない!」

との事である。


因みに、事情とは何かを説明しておこう。

うるさい聞け。


簡単だから聞いて下さい俺は浮気者じゃないんだ!


巡の誕生日なのであるよ。

七夕が誕生日なのだ。

だから内密にあれこれしようと単独行動したのが運の尽きだった。

まさか、よりにもよって巡に見られているとはな…待ち合わせの相手ってのも。


そこまでは巡には見つかってはいなかったらしいが二人には話しておいた。

…ゴメン嘘ついた。

正確には白状させられたんだ。


相手は巡の妹の皇花キミカちゃんだ。

一つ年下ながら非常にしっかりした女の子で校内での人気は相当に高い。

噂では毎日数名の勇者が討ち死にしているらしいが…もしそうだとしたら既に全男子が撃破されている計算になるから、さすがにこれは眉唾だろうな。


最も、そう言った話が出て来る位には撃破数が多いと…そういう事なんだろう。

更に恐るべきは、彼女が女子からの人望も篤いということか。


普通、男子からの人気がここまであると嫉妬の対象になったりしそうではあるが、皇花ちゃんはその持ち前のコミュ力を遺憾なく発揮してそう言った状態を回避しているのだ。



…ところで俺が割りとボッチ気質なのは以前にも述べたと思う。

ならば何故そんな俺がこんな情報に明るいのか?

それは本人が教えてくれるからだ。


高遠 皇花


この少女は皆が思っているような女の子では決してない。

その正体は気に入った相手には優しかったりするし、全力を以て厚遇する一方。

一旦敵対を決めたら容赦なく叩き潰してトドメとばかりに踏みにじる毒舌腹黒少女なのだ。


更にその上の状態があるのだが、現在その対象は俺しか居ない。

ズバリ、気に入った上である一定水準の好意を抱いた相手には素を見せてくれるのだ。


よそ行きではない素の彼女は極めて残念なコであると言えよう。


確かに一旦懐いてしまえば素直だし見た目も可愛いし、スタイルだってグラビアアイドルを鼻で笑ってブサイク呼ばわりしても許されるレベルだし、料理スキルは一流レストラン程度なら余裕で創れるだろうくらいに高い。


過剰すぎるスキンシップというデメリット(大抵の男にとってはメリット)を差し引いても魅力的だ。


だが考えてみて欲しい。

あの二人が皇花ちゃんと対立していないという事実を。

即ち、皇花ちゃんが自分たちのライバルにはならないと考えているという事であろう。


高遠 皇花はブラコンである

そんなラノベのタイトルみたいな事実が…何で本当にこんな残念なコなんだ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る