第7話
暴走。
それは混血のヴァンパイアに特有の症状らしい。
「混血は我々のような純血とは違って、血液の全てを取り込む事ができない」
「私はカケルの血しか飲まなかったでしょ?それでほんの少し飲んだだけで、さっきみたいな感じで異常性欲に襲われるの。カケルを死なせちゃうかもしれないから・・・」
異常性欲?
そんな事があるのか?
って言うか死なせるかもってなんだ?
「えっちしすぎて死なせちゃうかもって事!」
あー、そういう・・・。
「そんでまさかその人と一緒になるとか・・・」
「「・・・」」
しばしの沈黙。
え・・・まさかマジなの?
「ははは・・・そんな訳があるまいよ少年。純血と混血は決して交わらない。なぜならそれは一族の掟に触れるからだ。純血は純血を守らなくてはならない」
「なんかこれ以上は血を薄められないんだって。だから私がこの人とどうにかなる事は有り得ないよ」
「じゃあどうすんだよ。俺の血を飲まないなら生きていけないんじゃなかったのかよ」
・・・いや、だからここで俺以外の血を吸ってるのか。
「分かった?私がここに居る理由。浮気とかじゃないから!それにカケル以外の男の血なんて飲みたくないし」
俺は情けないほど安堵した表情をしていると思う。
「帰れない日があったのも、中々カケルの血が薄まらないから暴走してただけだからね」
聞いても居ないことを言ってきたがこれでも俺は安心した。
自覚してしまった。
やっぱ俺若菜のこと好きだわ。好きのレベル超えてるくらいには。
「・・・そうか。ところでオッサン、リリスって若菜の事を言ってんのか?」
「オッサン・・・まあ良い。リリス=グランデュオは一族の中でも元は高貴な家系だったのだよ」
お姫様的なヤツなんだろうか。
若菜を見ると、顔を赤くしてそれでもドヤ顔している。
よし。
「まあそれは良いや。別に。それよりもう帰れるんだろ?」
「軽くない!?お姫様的なコが一途に想ってるのに!?」
ハイ、ツッコミ頂きました。
正直、オッサンと修羅場になるのを覚悟していただけに緊張が解けるとこんな軽口が出る。
これからも若菜が世話になるのかもしれないし、一応聞いておくか。
「オッサン、あんたの名前は?・・・俺は梶木 翔だ」
「バルバトス・グレアムだ。断じてオッサンではない」
気にしてんのかよ。
完全に俺から見たら爺さんレベルだろ・・・。
いや、それだと若菜も・・・。
チラッと考えたらとてつもない悪寒がしたので俺はその思考を放棄した。
オッサン改めバルバトスも冷や汗をかいている。
・・・バルバトスねえ。
アイテム使ったらキレるんだろうか。
「じゃあカケル、帰ろっか」
「お、おう」
バルバトスはビルの外まで見送ってくれた。
あるリングを俺たちに与えて帰っていったが、あそこの女の子達とヨロシクやるつもりなのか。
なんでもこの指輪は2つで1セットらしく、離れていても会話(念話?)が頭のなかで出来る様になるんだとか。
一族の老魔術師の最高傑作らしいのだが、魔術師とか本当に居るんだなあ・・・。
俺は指輪を若菜に渡そうとしたが、一向に受け取ろうとしない。
「ムード無さ過ぎ~。こういう時は男がつけてくれるモンでしょ~」
「何いってんだか・・・わーかったよ。ほれ、左手出しなさい」
俯いて左手を差し出して来る若菜を見ていたら、肝心な事を一度も言ってないことに気づいてしまった。
言うべきか・・・言わないとダメなんだろうな。普通。
「・・・なあ若菜。俺はお前のこと好きだぞ。どこにも行くなよ。俺以外の血は吸うなよ」
「はぇ・・・?」
言ってしまった。恐ろしく恥ずかしい。
「・・・」
若菜は呆然と俺を見つめながら、段々と目尻に大粒の涙を浮かべている。
不覚にもソレを綺麗だなんて思った。これは墓場まで持っていかなくてはならない秘密だろう。
「ふぁい!絶対どこにも行きません・・・絶対カケル以外の男の人からは吸いません。ずっと隣に居させてください・・・」
ボロボロと涙を流しながら嗚咽混じりにそう答えてくれた。
真っ赤だろうな、俺の顔。
だって若菜も真っ赤だもん。嬉しいから良いんだけどな・・・。
とりあえず暴走の問題はこれで片付いたと言えるだろう。
何かしらまた起こるんだろうけどな・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます