アトランテスの楽師姫とドラゴンベイン・ベオルフ

 第二次侵略攻防戦において、最大の難関となったのが、楽師姫イーヒとドラゴンベイン・ベオルフである。重要な存在で「人間兵器」と言っていい存在であった。都市の発掘から分かる資料、つまり片寄った知識での説明になることを事前に記しておく。


 通称、楽師姫イーヒ

 アトランテス王国第3王子ディオスの側妃。尊称として、Bastetバステ ( 歌の女神の意味)、王子の片目(常に王子に寄り添っていたため)とも呼ばれた。

 アトランテス王国の属国である楽師の都ルツォーネ市出身。

 琥珀山銅オリキャリクの輪を何枚も渡した棒に同素材のシンバルを通した「シストラム」という楽器の儀仗を持ち、獣を惑わす歌声を持つ。揺り動かすと高い音を立てた。

 その高音と歌声はドラゴンにも影響を及ぼし、歌声を聞くとドラゴンたちは立ちすくみ不安に駆られたり、不安から体を壁に叩きつけるなどの自傷行為にまで及んだ。

 ヒールキャップ(*1 CDT)を装着して騎竜を行ってもふるい落とされたり、制御ができなくなった。アトランテス王国第3王子ディオスの秘蔵の人間兵器として城壁都市を悩ませた。

 大きな課題として城壁都市を悩ませるが、人型をとることで行動制限を受けないフールスキャップによって、14Marsに撃破され氷柱の中で凍死、戦死する。

 亡骸は父親であるアトランテス大貴族ルツォーネが引き受け、故郷へ帰った。引き渡しには、ドラゴンマスターが全員で見送った記述が残されている。

 戦後聴取において、楽師姫イーヒと会話があったかと問われると「下手な歌はやめろ」と言ったあとに「お前に聞かせているわけではない」と返答を得たと証言している。

人質として捕虜にすることはできなかったのかと問われた際に(その後貴婦人クラウンミルが戦線介入して失われたため、その抑止になったのではという意図を含め) 氷結王は「あいつを都市の中に入れて会わせたいやつなんかいないぞ」と答えたと言う。


ドラゴンベイン・ベオルフ

 大陸中に名を馳せた、怪獣・ドラゴン殺しの傭兵、ベオルフ。

 巨大な体躯からが振り下ろす剣ルンテングは、血を啜る度に強靱な一振りとなったと言われる。大自然の精霊と人の間に生まれた半神人とも言われるが、金で戦場を駆ける、仁義なき悪魔とも言われた。

 第二次侵略攻防戦では数多くのドラゴンを屠り、城壁都市最古のドラゴン、クラウンミルを撃破したが、一夜で姿を消した。

 その後、赤靴下のピッピが暁の谷への冒険中に邂逅。

 アトランテス王国からもらった金と成功報酬は「クラウンミルを撃破する」分しか受け取っておらず、仕事ビジネスが終われば危険な戦場にいる必要もなかった為、戦場を離れたと発言した記録が残されてる。

 『ドラゴンベインと海の王』では、彼が報酬としてクラウンミルからはぎ取ったウロコがピッピに返却される一面が展開される。

 人情を理解しない暴力の権化と囁かれていたベオルフの本来の一面を垣間見ることができる。彼はのちに戦後処理を終え日常を繰り返す城壁都市へ、ピッピの招きを得て訪れたことが側衛官記録に残されている。

 この時の記録を見ると、側衛官司書が3人付けられるなど城壁都市としては最大の警戒をもって監視された事がわかる。武具の類はすべて取り上げられたが、ベオルフは苦情を訴えなかったとされる。

 彼は滞在中に第二次侵略攻防戦で破壊された水車塔の修復を手伝い、自らが手を下した貴婦人クラウンミルの墓の前に立った。役目に従って行ったことで自らの行為に後悔はないが、誰かの大切なものをひどく傷つけ失わせたことは自覚していると述べた。

 その後都市を離れるが、赤靴下のピッピとの交流は続き、戦争があったら今度は味方についてやるから金を貯めておけ、と言ったとされる。


(*1)CDT= couvercle du talon ドラゴンに指令を伝え、また騎竜時に安定した飛行を叶える道具。

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