都市に住むドラゴンの系譜
城壁都市に住むドラゴンについて図書館には詳細なドラゴンの記録が残されている。現時点で公的な文献に限っても一万冊が確認されている。
ドラゴン達はモンタンドローの地に古くから住んでいた訳ではなく、ドラゴンの故郷と言われる暁の谷から飛来して住み着いた。
彼らにとっては第二の故郷であった。最初にこの地へやってきたのは、都市を代表するドラゴン、クラウンミルと氷結王夫妻であったとされる。その後水竜王、サラマンダー種をはじめとする複数のドラゴンが、グランドマスター・アンゼルの活躍後に都市に住み着いた。
固有名を持ち、文献の登場回数の多いドラゴンを挙げる。
城壁都市の
都市最古のメスのドラゴン、クラウンミル (クロヌドレ)
都市で最初に人間と心を通じ合わせ、象徴となった存在。また冒険家マルタン・フィーニーを突き動かし、城壁都市発掘のきっかけを生み出したウロコの持ち主。
乳白色の鱗を背に持ち、鱗がレースのような形状をしていたことから、バックレースの愛称を持つ。都市最頂点である
頭上に、彼の騎士であるグランドマスター・アンゼルが編んだとされる枯れた花冠をつけていたため、枯冠竜とも呼ばれる。(*1)
ノートル・ダムとは「我らが貴婦人」の意味。穏やかで知識に富む
都市のドラゴンライダー最高位であるドラゴンマスターであっても彼女には最高の礼儀を持って接した。
B.D300年頃起きた第二次侵略攻防戦において、劣勢となった都市防衛を死守するために戦線に立ち、その振る舞いとドラゴンの強さを示し、多くの敵兵を驚かせ市民を奮い立たせた。奮闘するが老齢な貴婦人はドラゴン殺し(ドラゴンベイン)の英雄ベオルフと侵略者によって虐殺される。最後の姿を見たのは当時ドラゴンマスターであった赤靴下のピッピと銀梨王リスシオワン。亡骸はピッピが焼いている。
公式に残された最後の言葉は「人間のように器用にダンスは踊れません」
水竜王
クラウンミルより後にやってきた。諸説あるがクラウンミルが都市に住み着くようになってから呼んできた親戚筋のドラゴンであったと言われる。水陸両用の万能ドラゴンだが、羽を持たず空を飛ぶことはできない。温厚な性格の種族だが、住み処の水の変化に非常に敏感なドラゴンで神経質な面もある。
城壁都市裏のエムロード湖や大水楼閣を巣にしている。静かで広大であった湖は彼らにとって最高の巣であったという。
城壁都市の歴史においては、水竜王の名前を冠したドラゴンは三匹存在する。どのドラゴンも共通してりんごを愛し、都市の黄金リンゴのパイや
また水竜は城壁都市では一番数が多い。
火を吐くサラマンダー種のドラゴンの王、リスシオワン。
城壁都市に水竜王とほぼ同時期に住み着いた。ダルメシアンのようなブチ斑点の皮膚が特徴で、クラウンミルを追ってやってきたとされる。
気むずかしくプライドが高いが、一度心を許すと深い縁を築いたという。都市のサラマンダー系ドラゴンは彼を頂点とする大家族構成であった。都市のドラゴンでは最年長で、3000年生き、B.D100頃没した。
現在のリッシーオワル草原の名の由来であったとされる。石工や鍛治師から愛された。第二次侵略攻防戦においては、一息で五千の兵を薙ぎ払ったと記述が残されている。裏表ない性格で敵も多かったが、情に脆い面を知る市民は深く彼を愛した。都市の銘菓として彼の名前を冠したリスシオワンビスケットが存在する。
年末には限定缶リスシオワンビスケット・マーベラスなるものが出ており、コレクターが存在した。(*2)
ドラゴンマスターの手記を照らし合わせると、リスシオワンはクラウンミルを一途に思っていた様子が分かる。彼が城壁都市にやってきた理由も想像がつく。
氷結王
水竜の上位に位置する非常に神性の高いドラゴンで高度な知識を持っていた。
純血種は擬態能力を持ち、人型を取ることができた。飛行速度は都市最高の種であるが数は少なかった。
オスとメスの二匹が城壁都市に訪れ、一匹の子を授かったのちに、二匹とも都市で永眠した。初代氷結王の亡骸は結晶化して3区に鎮座している。(*3)
二代目氷結王は、赤靴下のピッピによりB.D300頃に目覚める。
高い知能を悪用されることを怖れて、愚か者のふりをして奇行が目立ったため、
第二次侵略攻防戦においてその仮面を払い、都市を守るために奔走。市民からはしたたかな
銀梨王とは仲が良くなかったようで度々諍いを起こした。B.D200以降のドラゴンマスターたちにとってはよき相棒であり相談相手であり、歴史の生証人でもあったため、青年期の氷結王の奇行を信じる者はいなかったという。
彼と契約を結ぶためには、まず「でーと」「だっこ」「それから」の3つの試練をこなさねばならないと言う。普段は真面目な素振りを見せないが、いざという時は誰よりも頼りになったことが苦笑混じりに語られている。
2代目のクラウンミルを便宜上こう呼ぶ。都市では初期「プリンセッサ」「マドモワゼル」「2代目」「お姫様」などと呼ばれていたが、100年ほど後の資料を見ると初代と統一された表記となっている。B.D300頃ドラゴンマスター赤靴下のピッピが、暁の谷より連れてきた。
初代と同じく美しいレース状の鱗を持つ。若いドラゴンであったため、新入りとして都市内での立ち回りに苦労したことが記されている。B.D280頃に氷結王と結ばれ、三子をもうける。騎竜を許したマスターは赤靴下のピッピのみである。
都市の少女たちと同様にタッセルを身に付けていた。装飾を好み飾られることを喜んだという。
(*1)頭上の冠については人の手を触れることを許さなかったため、長年謎であった。植物学者たちによって絶滅種の多肉植物であることが判明する。アンゼルが冠した花は貴婦人の頭上で根を下ろし枯れずに育っていた。現代でいうところのラベンダーの花の香りに似た、小さな薄紫色の花を咲かせる。クラウンミル没後に花冠から採取され葉挿しで増え市内に復活した。
(*2)熱心なコレクターが蒐集したコレクション全集のペン画本を出版していた。「図書館」7階に収蔵されている。
(*3)エカイーユ・クリスタリジオン。都市の天気予測施設となっていた。
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