観察開始

 俺は昔から何かを観察することが好きだった。

 己は動かずに他人や環境の変化をゆっくりと目で見たり肌で感じたりと、

 理由はわからないが好きだ。


 最近ステータスの変動と共に己の性格も、歪んできている。

 だがこの歪みはなるべくしてなったのだと確信して止まない。


 俺は人生を楽しめればそれでいい。

 周りに何らかの損害があったとしても無視できるほどの肝もあるしな。

 いやステータスの変動のお陰で肝が座ったということか…


 子供を操り人形にしても大した動揺も罪悪感もないなんて本当に人間をやめてるな。

 まあ元から人間ではないのだが……


 なんかデジャヴが……

 まあ自虐なんて趣味でもないので

 この話はどうでもいいか。



 しかし、この力をもっと別なことに使っていたら俺の人生は何か変わっていたのかもしれないな。

 なんてもしもの話をするほど俺は落ちぶれちゃいないと思っていたんだがなぁ。







「とうさーん!ただいまー!」


「たでーまー」


「ああ、おかえり翔太、それに颯太も。デートか?」


「そ、そんなわけないだろ!///」


「違うって。翔太だぞ?男同士でそんなことあるわけないだろ、ボケたの?お父さん」


「ボケてないわ。

 それにしても翔太はまんざらでもなさそうなんだがなあ」


「えっ?」


 サッ


「ち、ちがうよ!颯太もお尻隠さなくても何もしないよ!」


「そ、そうか……」


 忘れた人もいるかもしれないから説明すると孤児の田中翔太と、丹野颯太だ。こいつらは孤児院に来て直ぐに友達になったから面白おかしくしてやろうと俺からの素晴らしいプレゼントだ


「んじゃ、さっさと手洗ってこい。

 お菓子があるぞ」


「え!まじかよ!やったー」


「早く行こうぜ!」


 ダダダッ!


「おーい走るなよー!怪我するぞー」


「大丈夫だよー!」



 そう言って駆けていく2人の後ろ姿を見送った後、


「ホモの卵は見ててそんなに面白くないな。当人のことは知らんが」


 そういえば最近疑問に感じたんだが、

 レズは百合というが

 ホモは……薔薇かな?

 どうなんだろうな


 ガシャーン!


 そんなくだらないことを考えていると

 慌ただしい物音が聞こえて来た。


「どうした!大丈夫かー!」


「あ、おとーさーん。

 そーたがねぇ、ロイにぶつかってロイの持ってたお皿がわれちゃったの」


「ロイ、怪我はないか?」


「うん、僕は大丈夫だけどお菓子が…」


 まだ幼顔だが凛々しさがあり冷静そうな、将来イケメンと持て囃されそうな顔立ちをしている。


 だが、女だ


「お菓子なんて気にしなくていい。

 怪我がなくてよかった」


「おとーさん……ごめんなさい」


「はぁ、颯太それは俺じゃなくてロイにいうことだろう?」


「う、うん。ロイごめんね」


「気にしなくていいよ。

 颯太の泣きそうな顔を見たら元気出たから」


「それは可笑しくないか!?

 翔太もなんか言ってくれよー」


「仕方ないよ、自業自得だからね」


「漫才はそれくらいにして割れた皿を片付けるから他のお菓子をたべてなさい」


「わかったー!ロイ行こうぜ!」


「あ、俺もー」


「おとーさん、手伝うよぉ〜」


「クリスは危ないから颯太たちと一緒にお菓子をたべてなさい」


「えー、あんな子供と一緒にいるよりお父さんと一緒にいた方が数百倍は有意義だよー。

 なんならー、一生一緒でも全然大丈夫だよー?

 おとーさんはどー思う?」


「急に饒舌になったな……。

 大人になるまでは一緒だが、

 いつまでも一緒というわけにもいかないだろう。

 自律しなさい」


「ええ〜、わかったよぉ〜」


「絶対わかってないだろう…。

 まあ、いい。片付いたからお菓子食べに戻ろうか」


「はーい」


 クリスは恋愛感情を促進させすぎてヤンデレの域に達しているな。

 あんなアニメやラノベのような典型的なヤンデレは初めて見た。


 いやヤンデレ自体初めてみるんだが。


 まあ、著しい変化をじっくりと観察することは結構楽しいからな。


 戦争が始まるまでは

 精々愉しませてもらおうかな






 仕込みは終わったし

 あとは、待つだけだからな





 だがそれよりもやはり、観察は愉しいなぁ

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