第7話安物ナイフは以外に強い


――武器屋


東メインストリートにあるあまり活気の無い武器屋に俺とマミちゃんは来ていた。


「なんか……なんとも言えないな」

「うん。良くも悪くもない感じ」


まだ、中にも入ってもいないのに早々と失礼なことを言う俺達は、店の屋根にある大剣と盾が描かれたエンブレムを横目に古臭い木で出来た扉を開けながら中に入った。



「あ、お客さん……てんちょーお客さん来ましたー」

「おうおうおうおうおうおうおう!」


なんだこのテンションの差は。

短剣やヤリが店の中に並べられている中、俺は苦笑いをしながら、


「あ、あのぉナイフってありますか?」

「おうおうおうおう! あるぜー! ナイフ! あるぜー!」


おーい、誰かコイツを引っぱたいてくれぇ。なんなら110番でもいいぞー。

いきなり店の奥から現れた白いハチマキを頭にまいたツルッぱげのオッチャンにイラッとしながら、俺は笑顔で、


「そのぉ、なるべく安いやつがいいんですが、ありますかね?」

「おうおうおう! あるぜー! じゃあミーナ、お客さんをナイフのある場所に連れてってあげてくれ!」


オッサンは最初に俺たちに気づいた女の子、ミーナに指示を出し店の奥へまた消えていった。

いやいや、店狭いだろ。連れてくもクソもないだろ。もっと言うなら今客俺たちしかいないから、大声出して教えてくれてもいいだろ。まぁ狭すぎて普通の声でも聞こえると思うけど!?

先ほどのオッサンのイライラで文句の止まらない俺は、律儀に場所を教えようと近づいてきた、緑の髪をストレートに伸ばしたミーナに小声で、


「あのぉ、店員ってあなたしかいないんですかね?」

「はい」

「この店人来るんですかね?」

「あなた達が今年初めてのお客さんですが?」

「お……おうそうか……」


なんだろう。もう文句すら言いたくない。同情しまくりだ。

俺は美しく顔の整ったミーナの顔を横目に武器を探そうとした時、ずっと黙っていたマミちゃんが、


「なんか、ここの武器全部錆びてない?」

「…………!?」


何故だ! マミちゃん! よりにもよってそんなに大声で言わなくていいだろーに!

ほらほら、ミーナさんを見てみて! 右下見ながら影になり始めてるでしょ!?


ガシャガシャガシャ!


おいおい、店の奥で誰か暴れてんのか!?

まぁ、オッチャンが錆びてるに反応して、テンパってるだけだろうがな!

俺は改めて近くにある短剣を見てみると、確かに茶色く錆び付いていた。

まぁこれじゃフォローも入れれねーな。

ミーナの顔色がどんどん悪くなる中、俺はアハハと顔をひきつらせながら笑っているとオッチャンが声を荒らげて飛び出してきた。


「すまねぇ! 俺がサボってたばっかりに、とりあえず今日は無料でなんでもいいから持ってってくれ! そのかわり次来た時には俺の最高の作品をあげるからよ!」


頭を輝かせながら頭を下げるオッチャン。

何だか知らんがえらい得してる気がする!

俺はゆっくりとオッチャンの前まで行き、優しい声で、


「いやいやそんなに頭を下げないでください、錆びててもあなたの作品は素晴らしいと思いますよ?」

「……! あぁ、なんていい人なんだ! 俺はお前さん達のために今度から武器を打つことにするぜ! くぅぅぅ!こんな冒険者がまだいたとはなぁ!」


何がそこまで心を動かしたのかは知らんが馬鹿みたいに泣き始めたオッチャンはさておき、ナイフを探そうか。

俺はミーナにナイフがある場所を聞き、そこに向かう。

そこには錆びたナイフが5丁ほど、ギリギリ錆びてないナイフが……0。


――全滅


「ねーねー、リオン君。全部錆びちゃってるね。どうするの? 一応物は切れそうだけど……」


刀身が真っ黒のナイフを手に取りながらマミちゃんがそんなことを言ってくる。

まぁ、後で凄そうなのが手に入りそうだし、今は切れればいいか。

俺はマミちゃんからそのナイフを受け取り、オッチャンの元へ向かう。


「これにします。その……お金は本当にいいんですよね?」

「あー! 持ってってくれ! 1週間後には凄いナイフ作っとかっからな!」


そんな事を自信ありげに歯を見せながら言い放ったオッチャンは、最初店に来た時のテンションに戻っていた。





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