第4話マミちゃんと話したい


「はぁはぁ……やっとここまで来たぞ……ったく最初からなんてふざけてんのかよ!」


俺は息を切らしながらギルドの外へ出た。

まだ街灯の明かりがつかない街の景色は前回来た時とは全く違う姿だった。


「計算通り、時間を短縮したからまだマミちゃんはいねーな」


俺はここまで前回とは違う最短のルートで来たのだ。

最初の女の子との会話をすぐに終わらせ、ゴリオさんとの試験は、フリーズに気をつけながらキューリをズッサズサに切ってきた。

外はまだ明るい。せいぜい夕暮れまで後30分と言ったところだろう。俺は太陽が沈みかけそうな空を見ながら果物屋へ直進した。


「いらっしゃーい! 今日のミカーンは新鮮だよぉ!」

「おばちゃん! ミカーン2個下さい!」

「あいよー!」


ちょっと小太りのおばちゃんは緑のエプロンをつけながら元気な声でミカーンを紙袋に詰め始めた。

うむ。どうやら隣の魚屋にはあの女の子はいないようだ。

顎に手を当てながら周りをキョロキョロと見ていると、おばちゃんが笑顔で、


「そういえばアンタ今日冒険者試験受けたんだって? 受かったのかい?」

「あぁはい! お陰様で受かることが出来ました!」


あんな試験で落ちる人いんのかよとツッコンでやりたい。


「去年うちの孫、あの試験落ちたからねー、今度剣の使い方とか教えてやってちょうだいな!」


俺は苦笑いをしながら分かりましたと答えつつ心の中で、もういっそのことその子は冒険者をやめるべきだと思った。


そんなたわいもない話をする事40分。

街灯がちらほら付き始め、街の喧騒も先程より断然静まりかえった頃、彼女は現れた!


「お兄様ぁぁ!」

「お前かーーい!」


もう何度こいつのせいでフリーズしたのだろうか。

今度こそフリーズしないように気をつけながら今回はサンーマが食べたいとしっかり答え、先にしっかり帰らせた。

これで邪魔は入らないはずだぜ!

俺は鼻息を荒くしながら果物屋の前で3時間以上待ち続けた。




「おーい、もう店閉めるよー。さっきからなんでそこにいるんだい」

「…………」


辺りはもう真っ暗で、果物屋のおばちゃんも店の片付けをし始めてしまった。

おかしい。

俺は腕を組み、果物屋を見ていると、あることに気づく。


「これもうマミちゃんに会えないやつじゃね」


今も手に持っているミカーンを除きながら、果物屋のおばちゃんに聞いてみることにした。


「あのぉ、ここに水色のツインテールの子とかきませんかね? 名前はマミって言うんですけど……」


俺のそんな質問に店の奥から、がっハッハと笑いながらこちらへ顔を覗かせ、


「来るもなんも、それがアタイの孫だよぉ! まさかマミを待ってたのかい? がっハッハ! それならそうと言えばよかったのに、どうしても会いたいならウチくるかい?」


右目でウインクをしながらそう言ってくるおばちゃん。

うわ、ブッサイクや。

この人の孫がマミちゃん……あ、俗に言う覚醒遺伝的なやつかな。

本人に言ったらキレられそうなことを思いながら、お願いします! とおばちゃんについて行くことにした。


あ、さっき冒険者やめろとか言ったのは前言撤回で!





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